スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
86 / 603

第86話『甘いチーズ蒸しパン』②

しおりを挟む
 これはもしや……久しぶりの、悪どい冒険者達の襲撃手前?

 だって、ギルアさん達とは全然違う雰囲気の……めちゃくちゃ、柄の悪い冒険者って感じの男の人達だもん。

 貴族さんとかは見当たらないけど、遠巻きに見ている他の冒険者さんとかはハラハラしている様子で見ている。


「え……エディ?」

「あ? ケントか。悪い、すぐ片付けるから」

「「「んだと、ガキぃ!?」」」

「ひっ!?」


 僕はその声に恐怖を感じたけど、エディには全然効かないのか口笛を吹くだけだった。

 だって、背中に背負ってた獲物らしいちょっとボロい大きな斧を振り下ろしたのに……エディは全然余裕なのか、腰にある剣とかは抜かなかった。


「んな鈍ら振りかざして勝てると思うか?」


 と、エディが言い終わると。

 ヒュッ、と風が吹いたかと思えば……ガッ、と言う大きな音がして、男の人達が次々に倒れていった!?

 起き上がることもなく、また風が吹いたかと横を見ると、エディが肩をゴキゴキと鳴らしていた。


「あ~……久しぶりだから、俺も鈍ってんな?」

「い、今の……エディ、が?」

「軽くのしただけだ。殺してねぇよ」

「う、うん」


 エディ……出会ったばっかりだけど、レイザーさん達みたいに強いんだ。

 同い年って言ってたけども……エリーちゃんのように、ランクの高い冒険者なのかな?

 ちなみに、のびた柄の悪い人達は……すぐに騒ぎを聞きつけた、衛兵さん達に連れて行かれた。事情については、エディが。


「ケントのパンを勝手に強奪しようとしてたのを、止めただけだ」


 と言う説明に、周りのお客さん達も頷いてたので……エディには感謝してもしきれません!!


「エディ! 好きなパン持ってって!!」


 御礼も兼ねて、僕は他のお客さんの許可をもらってから……少しだけお店をエディの貸切状態にしたんだ!!


「へ? いいのか?」

「うん! あ、お金がいいなら生産ギルド経由でなんとかするけど」

「いや、いい。金には困ってねぇから」


 ぐるっと店内を見渡したエディは……どれがいいのか、表情からは『興味津々』なのがすぐわかる。

 いくらでもいいのに、しっかり観察してくれる様子は好感を持てるね!

 とここで、新作のチーズ蒸しパンを思い出したので、棚からひとつ持って彼の手に載せてあげた。


「はい、これさっき作ってたパンだよ!」

「……これ、パンなのか?」

「二種類のチーズを使った、お菓子みたいなパンなんだ! 試食してみて!!」

「いいのか!?」


 おお……イケメンさんの満面の笑みはまぶひぃ!?

 エディは僕が頷くと、遠慮せずにチーズ蒸しパンにかぶりついた。


「……どう?」


 味見は一応したけど、こっちの世界の人に合うかな? とちょっとだけ心配にはなったが。

 エディは、飲み込むとすぐに両手を振った。


「超うめぇ!! めちゃくちゃ柔らかいのに、甘いしくどくねぇし……ちょっと塩気あるけど、むしろそれが美味い!!」


 体が光ったのもあり、ポーションの効果もきちんと効いているようで何よりだ。

 エディは持っていた蒸しパンを全部食べ終えると……僕の肩を軽く叩いた。


「?」

「こりゃ、あんな冒険者とかが狙う理由もわからなくねぇな? なんか精霊の護りもあるようだが……ケント、気をつけろよ?」

「う、うん」


 ラティストの素性は簡単に言えないから、首を縦に振ることにした。

 それと、エディにはまだパンを選んでもらいたいので『どれにする?』と聞こうとしたら。

 扉が、勝手に開いたのだ。


「おい、ケント!? 大丈夫……だ」

「「ケントさん!!」」

「でーじょうぶか!?」


 何故か、『シリウスの風』が全員来たんだけど……レイザーさんは、エディを見るなり隻眼を丸くして。

 エディは……明後日の方向を向きながら、口笛を吹いていた。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

元勇者の俺と元魔王のカノジョがダンジョンでカップル配信をしてみた結果。

九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
ファンタジー
異世界から帰還した元勇者・冴木蒼真(さえきそうま)は、刺激欲しさにダンジョン配信を始める。 異世界での無敵スキル〈破壊不可(アンブレイカブル)〉を元の世界に引き継いでいた蒼真だったが、ただノーダメなだけで見栄えが悪く、配信者としての知名度はゼロ。 人気のある配信者達は実力ではなく派手な技や外見だけでファンを獲得しており、蒼真はそんな〝偽者〟ばかりが評価される世界に虚しさを募らせていた。 もうダンジョン配信なんて辞めてしまおう──そう思っていた矢先、蒼真のクラスにひとりの美少女転校生が現れる。 「わたくし、魔王ですのよ」 そう自己紹介したこの玲瓏妖艶な美少女こそ、まさしく蒼真が異世界で倒した元魔王。 元魔王の彼女は風祭果凛(かざまつりかりん)と名乗り、どういうわけか蒼真の家に居候し始める。そして、とあるカップルのダンジョン配信を見て、こう言った。 「蒼真様とカップル配信がしてみたいですわ!」 果凛のこの一言で生まれた元勇者と元魔王によるダンジョン配信チャンネル『そまりんカップル』。 無敵×最強カップルによる〝本物〟の配信はネット内でたちまち大バズりし、徐々にその存在を世界へと知らしめていく。 これは、元勇者と元魔王がカップル配信者となってダンジョンを攻略していく成り上がりラブコメ配信譚──二人の未来を知るのは、視聴者(読者)のみ。 ※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...