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第60話 神の怯え

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「​───────……怖い」


 久しぶりに思念を飛ばしてきたとは言え!!?

 あの大精霊は怖かった!!


(何あれ、何あれ!!?)


 我が……転生させた、『諏方スワ賢斗ケント』と言う一人の人間。

 彼に……まさか、あの大精霊を救うだけでなく。契約した精霊にまでなると思うか?

 たしかに……最初わざと、あのはぐれスライムの上に転送させて、あれこれ自分が出来る事を手配はしたが。

『創始の大精霊』……その一角である『ラティスト=ルーア=ガージェン』を絆すほどとは。

 ならば、回復薬として創造出来る『ポーションパン』を更なるものへと……我は手助けしただけなのに!!

 我の気遣いが……あの人間を困らせているからと、大精霊自ら思念を飛ばしてくるか!?


「……美形の、憤怒……マジで怖い!!?」


 我も神の威厳も何もかも投げ打って……思わず、空間でプルプルしてしまう!!?


『……仕方ありませんよ、神』


 しばらくプルプルしていると、一つの存在が我に声をかけてきた。

 見た目は美しい白猫。だが、話せるので普通ではない。

 あの人間が手を差し伸べた、我の御使だ。


「……そうは言うが」

『貴方様も、多少は抑えましょう。……エリクサーレベルはまずいです』

「……しかし。あの王族の擁護を得させるには、あれくらいせねば」

『だからとは言え……流通がそれではこれまでと同じになるでしょう? 手助けを希望する、貴族の異端令嬢が動き出してもです』

「……そうか」


 考え直せば、あの大精霊が憤怒を見せてまで我に自重を願うのも無理はない。

 我自身が、回復薬の流通を使命にさせたのだから……賢斗には悪いことをしたな?


『まだ店を開設してひと月も経っていません。少しずつ……確実に、彼の店を中心に次の担い手を育成しませんと』

「……そうだな」


 であれば……ギルドマスター達の周囲に、ひとり引きこもりがちの錬金術師がいる。

 彼に、興味を持たせるように動かせるか?

 それを御使に提案すると……『おまかせください』と言って、我の前から転移を使ったのだった。
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