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第56話 ギルマスはギルマスらしく?
しおりを挟む「んふふ~~」
リオーネもだけど……世界の流通事情が、少しずつ変わり始めたばかり。
それもこれも全て……あの坊ちゃんのお陰よん!
ケントちゃんって、見た目は女の子みたいに可愛い男の子。
家名はないようだけど……凄腕のパン製造技術に、なんと創始の大精霊である『ラティスト=ルーア=ガージェン』様の契約者。
おまけに、しゃべるスライムって言う『カウル』ちゃんもテイマーしているのよねぇ?
彼らの作るパンは……単純に珍しい見た目と美味しさだけでなく……『ポーション』となる存在の不思議なパン。
もちろん、普通に食べることも出来るけれど……ほとんどが効能のすんばらしい、『ポーション』ばかり!!
しかも、ひとつの効能じゃなく、大抵は二つも三つも。
そのうちのひとつが……昨夜、とんでもない事態を引き起こしたのよねん?
「……以上だ。ギルマス」
見た目も性格も、エルフだったらよかったのに……人間であるレイザーちゃんから、あたしは報告を受けたわ。
それはもちろん、ケントちゃんが彼を『治して』しまったことについて。
「魔眼はこれまで通りねぇ~?」
あたしは自分が持っている、鑑定のスキルでレイザーちゃんを診たけれど……たしかに、『真偽の魔眼』って見たことがない称号が付与されていたわ。おまけに、魔眼自体のスキルなどはそのまま……。
「ああ。実際、ゴブリン相手に軽く使ってみたが……むしろ、前より使いやすい」
「そのようねぇ? ケントちゃんのお陰で、解決出来てよかったわぁ~」
「ああ。んで、ギルマスに相談なんだが」
と、レイザーちゃんは自分の手にはめている指輪……金に紅い石が埋まっているものを外して、あたしの机の上に置いたわ。
「んー、これって」
「『守護の指輪』だ」
「わぁぉ、超絶レア物じゃなぁい?」
さすがは、本来はグレイヴ国の王位継承者。
弟ちゃんとか、他のパーティーメンバーは彼の後ろにいるけどぉ。ジェフちゃん以外はよくわかっていないのか、首を傾げていたわぁ。
「この魔眼にしてくれたんだ。金よりこっちのがいいだろ?」
「それだけ……の出来事だものねぇ?」
「ああ。つーわけで、冒険者ギルド経由の依頼にして欲しい」
「それくらいお安いご用よん」
たしかに……それ相応の報酬だわぁ。
ラティストちゃん達が居るとは言え……いつ何時、ケントちゃんが阿呆な貴族連中に拐われるとか……警護を固めても、すり抜ける可能性があるもの。
この指輪は……数回程度だが、持ち主を護り、望む元の場所へ転移してくれる最上級の魔導具。
お金はケントちゃんとこのパン屋以外にも、ロイズの生産ギルドでオークションにもかけているから……問題ないのよね?
とりあえず、あたしは書類をささっと用意してからその指輪を自分の亜空間収納に大事に仕舞ったわん。
「お兄さん、あの指輪……そんなにも凄いの?」
「ああ。ケントには必要だろう代物だ」
「まあ、そんなけ世話なったしな?」
「そうだね!」
メンバーからも、異論の声がないくらい……ケントちゃんってば、信頼されているのねぇ?
あたしも、あのポーションのパンは……単純に食べるだけでも大好物になったし!
指輪渡すついでに、買いに行くわぁ!!
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