スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

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第40話 依頼は受理出来ない

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「は? 俺??」


 レイザーさんは、自分の事を提案されたので……意味がわからないと自分に指を向けていた。


「……うん。不便はないだろうけど……お兄さんは、いずれ家督を継ぐんだし。僕とは違って、すっごくかっこいいんだもん」

「後半はともかく……前半は、親父らも理解してくれてるぜ?」

「けど! 望みがないわけじゃないなら……治して貰えば」

「あ、あの~……」


 話し合いがヒートアップする前に、僕はおふたりに大事なことを伝えなくてはと割って入ることにした。


「どした?」

「……大変申し訳ないんですが。まだ望み通りの効能を自由にパンに付与させるのは、あいにく出来なくて」

「……そう、なんですか?」

「はい。出来上がったら、ステータスに出てくるだけで。同じパンなら固定に出来る以外は、ランダムなんですよ」


 そんなチート特典は……流石に、あのイケメン神様とは決めていないからね? そもそも、パンでポーション作ること自体、叶うとは思ってはみなかったもの。

 僕が言える範囲での情報をお伝えすると……トラディスさんは思いっきり、がっくしと首を折った。


「……そう、ですか」

「気持ちだけ受け取るぜ? にいちゃんとしては嬉しいぞ」

「……うん」


 どうにかしてあげたい気持ちにはなったけど……こればかりはなあ?

 そう思っても解決の方向にはならず。『シリウスの風』御一行はとりあえず、残っていたパンを全部購入していただき、一部はその場で食べてくれて……皆さん美味しい美味しいと絶賛してくれた。


「……う~~ん」


 夕方前の第二陣のパンを作っていながら……僕は、ついついトラディスさんに一度は断った依頼を出来ないかどうか考えてしまっていた。


『どうしたでやんす?』

「……あの客についてか?」


 カウルは、生地の保管も兼ねてドウコンのままでいてくれている。店によっては、半日以上冷蔵庫枠の中で翌日焼く分を保存しておくが……僕の方法では、朝と午後しか仕込まないので夜はカウルには休んでもらっている。カウルだって生きている存在だし、四六時中ドウコンでいさせたら疲れるだけですまないだろうから。

 けど、第二陣を焼くまでは生地の保管をお願いしたいので……店がオープンしてからは半日近く、このドウコンとかのままでいるのだ。


『あの客?』

「つい先程……残っていたパンを全て購入した冒険者がいてな? 腐った貴族とかを追い払ったのもあるが……ケントに依頼しようとしていた」

『それは断ったんでやんすか?』

「そう。僕らが作ったパンじゃ、自由に効能をコントロール出来ないからね?」


 あんなにもいい人に……あれだけ頼みこまれたんだもの。なんとかしてあげたいが……それが出来ないのが現実。

 僕って、なんて不甲斐ない存在なのだろう。


「……可能かはわからないが」


 すると、ラティストが僕に提案しようとしてくれた。


「! 何か出来るの!?」

「……あの魔眼の呪詛を取り除くのは。俺なら出来そうではある……だけだ」

「!? で、出来るの!?」


 なんであの場で言ってくれなかったの!? とシャツを掴みそうになったが……まあ、待てとラティストが僕の肩を掴んだ。


「懸念していることがある」

「けねん?」

「呪詛をかけた相手に……呪詛は帰るものだ。つまりは……誰かが死ぬことを、ケントはよく思わないだろう?」

「……そう、だね」


 そういうのは、ダメだ。ラティストもだけど、誰も犯罪者にしたくない。

 気落ちしそうになったけど……仕事は仕事だと、パンを無心で作り……午後のセッティングが完了してから看板を変えようと表に出ると。


「あ、あの!」


 店の前には、エリーちゃんではなく……もう少し若い感じのふわふわした格好の女の子が立っていた。
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