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第38話 無礼な豚貴族

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「騒がしいな!? 無礼者らよ、さっさと退け!!」


 もう少し、込み入った話をしようとした時に……外から、誰かの声が聞こえてきた。

 おじさんくらいの年齢ぽいけど、叫び声だけで感じの悪い人なのがすぐにわかった。


「あ? なんだ、テメェ」


 レイザーさんかと思いきや、外にもうひとり誰かいたのか……思いっきり不機嫌になった男の人がその人に声をかけていた。

 僕は、トラディスさんに断って外を見ると……金髪のお兄さんが、物凄いぶちゃいくなおじさんにガンを飛ばしているのが見えた。


「ぶ、無礼者!! わ、私を誰だと思っている!?」

「知らねぇなあ? いきなり押しかけてくるような、お前みてぇな失礼野郎は」

「し、失礼!? わ、私は貴族だぞ!?」

「貴族だろうがなんだろうが……礼節弁えずに押しかける奴がいるか? 俺らは紹介があってここにいるんだぜ?」

「ふ、ふん! それを譲れ、たわけが!!」

「「あ゛??」」


 ぶちゃいくおじさんの発言に、金髪のお兄さんもだけど……レイザーさんのカンにも障ったのか。レイザーさんは、ずずいっと外に出るなり……おじさんの胸ぐらをいきなり掴んで持ち上げた!?


「おっさん……身のほど知らず、ってやつだなあ?」

「ぶ、ぶ、無礼者!? わ、私は……ここに、用が!?」

「用があるにしろなんにしろ……他人を貶すのは、最近の貴族だなあ? 俺らを知らねぇ連中には、キツい仕置きをしなくちゃだよな? 『シリウスの風』と言えばわかんだろ??」

「お、おま……い、いや!? あ、あなた……様は!?」

「んじゃ、さっさとどっかいけ」

「は、はいぃいいい!!?」


 どさっと、レイザーさんが雑におじさんを落とすと……おじさんはさらにぶちゃいくな泣き顔をしながら、退散していったのだった。


「おーおー? レイザーがやると一発だなあ?」

「お兄さん、ですもんね?」

「お兄さん?」


 トラディスさんが苦笑いする様子に、僕は首を傾げるのだった。


「おー。こいつら、わざとファミリーネームいじってるんだが、実の兄弟なんだ。髪色も変えて」

「へー?」


 金髪のお兄さんが言うので、ふたりをよく見てみると……たしかに、似ている箇所は……あった気がした。

 金髪のお兄さんは、ジェフ=リジェクターさんと言うらしく、トラディスさんと最初にコンビを組んだ有名な槍使いの冒険者さんだそうだ。外にいたのは、今のようなおじさん貴族を警戒していたんだって。


「開店してすぐに来ないから……少し警戒緩めていたけど。ダメね、ああいう貴族はこれからわんさか来ると思うわ」

「……俺がそのたびに追い返せば良いか?」

「それでも良いけど。レイザーのような方法もねぇ?」


 エリーちゃんとかも心配してくれるけど……たしかに、今来たおじさんはまだ可愛い方。

 どれだけ腐った貴族さんがいるかわかんないもの。僕もいつも以上に気を引き締めなくちゃ!!


「ところで、ケントさん」

「あ、はい?」


 トラディスさんが僕に声をかけてくると……軽く会釈された。


「僕らにも、あなたが作るポーションパンを買わせていただけませんか?」

『めっちゃ気になっとんねん!!』


 フランツ……さんからもお願いされたけど。それについては、僕も特に拒否する理由はないので。

 少ない在庫から、まずは説明することにした!
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