29 / 603
第29話 いきなりお客様②
しおりを挟む「お……前、は!?」
僕らがびっくりしていると、ラティストが男の子を知っているのか声を上げたんだ。
「ふふ。やあ、ラティスト」
ふわふわ金髪に、綺麗なエメラルドグリーンの瞳。
ぼろぼろだった服装から、360℃一変して美少年に大変身した男の子は、どうやらラティストとはお知り合いみたい?
「やあ、じゃない!! いきなりなんだ? ケントを試すような事をして!!」
「そりゃそうだよ? 君が一向に精霊界に戻らないから探しに来たのに」
「え? ってことは……」
この男の子も……精霊? もしくは大精霊?
ラティストとはお友達かお仲間なのかな?
「うん。試してごめんね、人の子。僕は、ジェイド=イシュト=ガージェン。ラティストの弟だよ」
『「そ、創始の大精霊!!?」』
「え? ラティストだけじゃないの??」
「あれ? 僕の名前聞いても全然驚かないね? 面白ーい」
この世界には転生したばかりだから……歴史とか知らないのはしようがない。けど……ラティストの弟さん、って大精霊さんに言っていいか悩むと、ラティストが僕の肩に手を置いてきた。
「残念だが……俺は精霊界には戻らん。このケントの契約精霊になった」
「え゛!?」
きっぱり言い切ったラティストに、ジェイド……さんは可愛らしい顔を思いっきり鳩が豆鉄砲を食ったようにぽかんとさせてしまった。
「嘘偽りない。俺の恩人でもあるし、俺が望んだことだ」
「ちょ、ちょ、ラティスト……兄さん? 兄さんがわざわざ人の子と!?」
「ケントがいなければ……消滅していたかもしれん。なら、恩を返すにはそれくらいしか出来なかったからな」
「え、えぇ~~??」
ジェイドさんは、僕とラティストを何度も交互に見てきたけど……しばらくしたら、『はぁ~……』と大きくため息を吐いた。
「……ジェイド、さん?」
「……たしかに。契約の証は存在してる。……けど、精霊界にはどう言うの!? 僕ら以外の創始の大精霊が黙ってないよ!!?」
「……頼んだ」
「雑に言わないで!!?」
「あ、あの~……」
ここはもう、きちんと僕のことも言おうと決めることにした。
「……なに?」
「僕はこの世界の人間じゃなかったんです」
「へ?」
「あの阿呆神の不手際で……命を失ったが、こちらに転生させられた人間だ。しかし……この世界をある意味救う存在として遣わされたと言ってもいい」
「あのスカポンたんが? 何を?」
「ラティストを助ける時にも使ったんですが……僕、パン作りが得意なんですけど。そのパンが回復薬……ポーションになるんです。今準備してて、そのパンをこの建物から広めようと」
「効果は絶大だ。だからこそ、俺はケントを守護すると決めた」
交互に説明すると……ジェイドさんは綺麗なエメラルドグリーンの瞳をぱちぱちさせ、すぐに僕の前に来たんだ。
「……あの美味しいのも?」
「あ、さっきのは途中で……」
「それが……ポーションに??」
「俺を取り込んだレイスを消滅させたくらいだ」
「! そっかあ!」
ラティストがきっぱり言うと、ジェイドさんはそれはそれは綺麗な笑顔になった。
「ジェイドさん?」
「じゃ、しょうがないや。里にもきちんと報告するよ? 人の子にはあんまり介入しちゃいけないけど……あのスカポンたんがそうなら、兄さんが居た方がいい。むしろ、いなきゃダメだ」
「……わかってくれたか?」
「うん! 長……父さんにもそう報告しとくよ。あ、けど。時々遊びにきていい? お金もちゃんと払うから、売り出したら買わせて?」
「い、いいんですか?」
「精霊だからって、勝手に人の子の食べ物横取りしないよぉ。それに美味しかったし……あ、兄さんの主だから、僕も呼び捨てとかでいいよー?」
とだけ言って、ジェイド……は、空気に溶け込むように消えてしまった。
「……ケント、よく堂々と出来たわね?」
「痺れるでやんすぅ!」
ジェイドがいなくなってから、ようやく発言出来たエリーちゃん達は体をプルプルさせていた。
とりあえず、その後に出来たハンバーグサンドイッチのお陰で気力とかは回復出来たのだった。
58
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
元勇者の俺と元魔王のカノジョがダンジョンでカップル配信をしてみた結果。
九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
ファンタジー
異世界から帰還した元勇者・冴木蒼真(さえきそうま)は、刺激欲しさにダンジョン配信を始める。
異世界での無敵スキル〈破壊不可(アンブレイカブル)〉を元の世界に引き継いでいた蒼真だったが、ただノーダメなだけで見栄えが悪く、配信者としての知名度はゼロ。
人気のある配信者達は実力ではなく派手な技や外見だけでファンを獲得しており、蒼真はそんな〝偽者〟ばかりが評価される世界に虚しさを募らせていた。
もうダンジョン配信なんて辞めてしまおう──そう思っていた矢先、蒼真のクラスにひとりの美少女転校生が現れる。
「わたくし、魔王ですのよ」
そう自己紹介したこの玲瓏妖艶な美少女こそ、まさしく蒼真が異世界で倒した元魔王。
元魔王の彼女は風祭果凛(かざまつりかりん)と名乗り、どういうわけか蒼真の家に居候し始める。そして、とあるカップルのダンジョン配信を見て、こう言った。
「蒼真様とカップル配信がしてみたいですわ!」
果凛のこの一言で生まれた元勇者と元魔王によるダンジョン配信チャンネル『そまりんカップル』。
無敵×最強カップルによる〝本物〟の配信はネット内でたちまち大バズりし、徐々にその存在を世界へと知らしめていく。
これは、元勇者と元魔王がカップル配信者となってダンジョンを攻略していく成り上がりラブコメ配信譚──二人の未来を知るのは、視聴者(読者)のみ。
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!

暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!

転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる