スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

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第14話 事情説明

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「……て、転生……者……?」


 面白いくらいに、お口をぽっかーんとさせているけど……笑っている場合じゃないので、僕は強く頷くことにした。


「はい。『地球』と言う世界……その中の『日本』からです」

「…………デタラメを言っているようには、見えんな」


 僕の顔を見て、ロイズさんは気を引き締められた。軽く息を吐き、僕とエリーちゃんの向かい側のソファにどかっと腰掛けた。


「そうなのよ。神の不手際とかで、こちらの世界に転生させられたらしいわ。しかも、使命を与えられて」

「……それが、このパンか?」

「はい」


 エリーちゃんの説明でもわかったのか、ロイズさんはオープンサンドをローテーブルの上に置いた。


「エリーが言いたいのは……俺らが少々困ってるとこに、ケントをあてがえば……仕事も与えられるし、流通事情を発展させられる可能性が高いと?」

「そう言うことよ!」

「そりゃ、こっちには願ったり叶ったりだが」

「あの……エリーちゃんにもまだ聞けていないんですが。『例の件』とは?」


 僕が挙手すると、ロイズさんはまた目を丸くして……エリーちゃんは、てへって感じに舌を出した。


「……エリー。保護の意味も兼ねているだろうが、説明下手でもきちんと言えよ」

「ロイズさんが来る前には言おうとしたのよ?」

「……まあ、いい。ケントよく聞け」

「はい」


 真剣な表情に、僕は思わず背筋をピンと伸ばした。腕にはカウルを抱っこしたままだけど。


「……例の件っつーのは、単純に言えば『事故物件』だ」

「……事故物件?」

「向こうでもわかるようだな? ちょいと、曰く付きの物件があってな? そこが上手いこと片付けば……元はパン屋だったから、お前さんに任せられるっつーことだ」

「パン屋ですか!?」

「おお!?」


 僕はカウルを思わず、『わっしょい!』と胴上げしちゃったよ。ただ、はしゃいでたらロイズさんがこっちに回ってきて、軽く僕らを小突いたんだけど。


「落ち着け。事故物件っつったろ?」

「……すみません。どう言う理由で?」

「以前のパン屋の主人は病死だが……そこに、なんでかレイスが居着いた」

「れ、れれれ、レイスぅ!?」

「……ってなんですか?」


 カウルは異常に驚いているけど、僕はラノベ知識の中にはなかったので、ロイズさんに聞き返していた。


「簡単に言えば死霊よ。めちゃんこレベル高いから……冒険者のあたし達でも、そう簡単に討伐出来ないの。対処出来る僧侶クレリックとかは、あいにく長期遠征隊で居ないし」

「……ほえー」


 そんな曰く付きの物件……原因が半分不明なら、周りの住民とかは困っているかもしれない。

 けど、でも!


「……ケン兄さん。行く気満々でやんすね?」

「うん!」


 問題はあっても、パン屋を経営出来るのなら!!

 これってないくらい……僕には好転するかもしれない事態だからね!!


「……やる気は嬉しいが。レイスがなあ?」

「そこなのよね……」


 僕はやる気満々でも、これまで問題を抱えていたロイズさん達は……乗り気じゃないみたい。

 ちょっと考えてみたけど……もしや、と思ったことを僕がお伝えすれば、全員でハイタッチしたのだった。
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