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第11話 リオーネの街中
しおりを挟む「これが仮の身分証明書。正式に発行をするのなら、冒険者ギルドか生産ギルド。もしくは、街役場に行けば可能だ。テイム……の魔物がいるのなら、冒険者ギルドがいいだろう」
「わかりました」
冒険者……には、多分なれないから縁がないだろうけど。
今回の目的は、エリーちゃんが紹介してくれる生産ギルドのギルドマスターさんに会うためだ。
それで、僕とカウルの今後のために……何か役に立てることをするためでもある。まだ転生してから……一日どころか数時間程度しか経っていないのに、どったんばったんだ。逆にダラダラしているよりずっといいけど。
とにかく、仮の身分証は立派なカードだった。木とか紙じゃなくて……ちゃんと金属製。プラスチックはないのはわかってたけど、仮なのに金属なのは驚いた。アルミじゃないのはわかるけど……スチール?
それにはチェーンが通してあったから、首からかければ大抵の住人達には認知してもらえるんだってさ。
「じゃ、ケント。行くわよ」
エリーちゃんの後について、検問場から出れば……抱っこし直したカウルをうっかり落としてしまいそうなくらい、賑やかな街並みに驚いた!!
「すっごい!!」
「やんす~!」
これぞ、ファンタジー!
ってくらいに、建物もだけど……どこもかしこも日本とは大幅にかけ離れている光景ばかり。
人間だけじゃなく、猫耳とかウサギの耳を持っている獣人って人とか。
リザードマンぽいようなトカゲの顔や体をしている人とか。
妖精やドワーフ、エルフっぽい人までいる。
それぞれが思い思いに出歩き、騒ぎ、飲み食いや商売をしたりしている。
格好も現実世界とは大幅にかけ離れていた。洋服と同じようなものもあれば全然違うのも。和服に近いものがあったのはびっくりしたけど。ちなみに、僕は転生した時からイケメン神様の手配で、村男っぽい服装だから……顔以外は紛れやすい。
それより、あちこち回りたいとは思ったけど、お金も無いし……今はギルドマスターさんへの用件があるから、エリーちゃんとはぐれないように付いていくのに精一杯だ。
「すんごいねぇ!」
「さっきも言ったけど、リオーネは城下町でもあるの。王都ほどじゃないけど、流通は凄いからケントのパンが認められたらあっという間に出回ると思うわ」
「……そうだといいけど」
もしそうなったら、イケメン神様の望みは叶えられるが……障害はひとつだけある。エリーちゃんが『屑』と言うくらい、性格とかが最悪な人達が独り占めしようとするのを止められるか。
それをさせないようにするのは……僕にイケメン神様からお願いされたことだ。好きな事をさせてもらうだけでなく、役に立てることがあるのなら……僕は嬉しい。
手配ミスで死んで転生させられたのに……と、オタク知識を教えてくれた友人だと言いそうだが、これが僕だ。
完全に生まれ変わったのとも少し違うから……僕は僕のやりたいようにする。
だって、夢だったパン職人になれるかもしれないんだから!
「ケント、ここよ」
エリーちゃんが立ち止まった先にあったのは。
日本で言うなら、そこそこ大きな会社……って思うくらいの、立派な建物。
看板は一瞬、わけのわからない単語しか書いていないように見えたのが……『リオーネ生産ギルド』とちゃんと読めた。
やっぱり、イケメン神様て決めた言語チート機能がきちんと働いているお陰なのかも。
エリーちゃんが入り口の扉を開けて、僕とカウルが入りやすいように手招きしてくれた。中に入ると……外以上に活気にあふれた空間となっていたんだ!!
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