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第5話 パン作りをしよう③
しおりを挟む『ふぉ!? それは、新種のスライムでやんすか!?』
カウルの目が出ているわけじゃないけど、外の様子も見えているみたい。
だけど、僕は彼の驚きを否定した。
「違うよー? これが、パンの生地。カウルの能力のお陰で、こんなにも膨らんだんだ。ありがとう」
『あ……ありが、とうって……ぐ、ぐすんっ』
どうやら、めちゃくちゃ嬉しかったみたい。はぐれさせられたスライムのお仲間には、あんまりよく思われていなかったようだ。僕には有益な能力なのに、要らないなら捨てるってあんまりだ。
それか、神様の言ってた回復薬の浸透していない事態が……モンスターにも関係するのかな? 発酵って、言い換えると腐らせる方法に近いから。
「カウルにも美味しいパン食べさせてあげるよ。まだまだ活躍してもらうから手伝ってくれる?」
『合点承知でやんすよ!!』
カウルにはドウコンの状態でいてもらって……上の扉はホイロのまま。下の扉は冷却機能をつけた半冷凍状態に。
キッチンに用意されている、僕専用の大理石作業台の上に……出来上がった生地を、薄いプラスチックの半円上の板で掻くように作業台に載せる。ボウルにこびりついた生地は、その『カード』で細かく取り出す。乾燥しなきゃ、その生地も使えるからだ。
湖の側でのオープンクッキングだけど、湿度があんまりないからかすぐには乾燥しない。
気候も……多分、秋近いかな?
暑過ぎず寒過ぎずちょうどよかった。
「よーし!」
打ち粉用の小さなボウルに、手を入れて小麦粉をすくい上げる。広げた生地の表面を化粧するように叩き、今度はカードじゃなく刃が潰れたような生地を切る道具……スケッパーを手に、パン専用の測りを使ってどんどん生地を切り分けていく。
ある程度台の上にたまったら、両手で生地を丸めて天板の上に均一に並べ。
天板いっぱいになったら、冷やしたドウコンの下にストッカーの位置を確認して差し込む。それを生地が全部なくなるまで繰り返し……出来上がって、片付けをしたら生地の冷え具合を確認。
ドウコンパネルの時間操作も相まり、いい冷え具合になっていた。一番上の板を取り出して……台にまた持っていったら、手もだが麺棒も使ってバターロールに成形していく。
これが全部出来上がったら……ちょっと問題が出たが。
オーブンはカウルにも機能としてあるらしいが……ドウコンのままではそうはいかない。
電気釜でも予熱は必要だから……と、とりあえず、二次発酵のためにホイロへ出来上がった生地の天板を入れて……また鑑定でステータスを確認することにした。
【電気釜……すぐ焼けます。すぐ!】
と、電気釜の備考欄にはこれだけしかなかった。あの神様……変なところでいい加減じゃないだろうか?
けど、このホイロのまま焼けないだろう。だから、キッチンのストッカーを出現させ、二次発酵を時間操作で終わらせたらすぐにそちらに差し込み。
またカウルには、例の呪文で変身してもらった。
「……おお」
変身で出てきたのは、本当に僕のよく知る電気釜……パンとかケーキで使う三段式のオーブンだった。
予熱は、先に設定されているのか……見慣れたパネルには温度調節のボタンに、火力調節のもあった。
なら、と。溶き卵を水で溶いたドリュールを刷毛で生地の表面に塗ったら、どんどん放り込んでいく。
そして、全部入れ終えたら。
チ───────ン!!
「へ?」
『え?』
僕らが驚くのも無理はない。
本当に、数秒も経たないうちに……パンが焼けたんだから!?
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