スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

文字の大きさ
5 / 731

第5話 パン作りをしよう③

しおりを挟む


『ふぉ!? それは、新種のスライムでやんすか!?』


 カウルの目が出ているわけじゃないけど、外の様子も見えているみたい。

 だけど、僕は彼の驚きを否定した。


「違うよー? これが、パンの生地。カウルの能力のお陰で、こんなにも膨らんだんだ。ありがとう」

『あ……ありが、とうって……ぐ、ぐすんっ』


 どうやら、めちゃくちゃ嬉しかったみたい。はぐれさせられたスライムのお仲間には、あんまりよく思われていなかったようだ。僕には有益な能力なのに、要らないなら捨てるってあんまりだ。

 それか、神様の言ってた回復薬の浸透していない事態が……モンスターにも関係するのかな? 発酵って、言い換えると腐らせる方法に近いから。


「カウルにも美味しいパン食べさせてあげるよ。まだまだ活躍してもらうから手伝ってくれる?」

『合点承知でやんすよ!!』


 カウルにはドウコンの状態でいてもらって……上の扉はホイロのまま。下の扉は冷却機能をつけた半冷凍状態に。

 キッチンに用意されている、僕専用の大理石作業台の上に……出来上がった生地を、薄いプラスチックの半円上の板で掻くように作業台に載せる。ボウルにこびりついた生地は、その『カード』で細かく取り出す。乾燥しなきゃ、その生地も使えるからだ。

 湖の側でのオープンクッキングだけど、湿度があんまりないからかすぐには乾燥しない。

 気候も……多分、秋近いかな?

 暑過ぎず寒過ぎずちょうどよかった。


「よーし!」


 打ち粉用の小さなボウルに、手を入れて小麦粉をすくい上げる。広げた生地の表面を化粧するように叩き、今度はカードじゃなく刃が潰れたような生地を切る道具……スケッパーを手に、パン専用の測りを使ってどんどん生地を切り分けていく。

 ある程度台の上にたまったら、両手で生地を丸めて天板の上に均一に並べ。

 天板いっぱいになったら、冷やしたドウコンの下にストッカーの位置を確認して差し込む。それを生地が全部なくなるまで繰り返し……出来上がって、片付けをしたら生地の冷え具合を確認。

 ドウコンパネルの時間操作も相まり、いい冷え具合になっていた。一番上の板を取り出して……台にまた持っていったら、手もだが麺棒も使ってバターロールに成形していく。

 これが全部出来上がったら……ちょっと問題が出たが。

 オーブンはカウルにも機能としてあるらしいが……ドウコンのままではそうはいかない。

 電気釜でも予熱は必要だから……と、とりあえず、二次発酵のためにホイロへ出来上がった生地の天板を入れて……また鑑定でステータスを確認することにした。


【電気釜……すぐ焼けます。すぐ!】


 と、電気釜の備考欄にはこれだけしかなかった。あの神様……変なところでいい加減じゃないだろうか?

 けど、このホイロのまま焼けないだろう。だから、キッチンのストッカーを出現させ、二次発酵を時間操作で終わらせたらすぐにそちらに差し込み。

 またカウルには、例の呪文で変身してもらった。


「……おお」


 変身で出てきたのは、本当に僕のよく知る電気釜……パンとかケーキで使う三段式のオーブンだった。

 予熱は、先に設定されているのか……見慣れたパネルには温度調節のボタンに、火力調節のもあった。

 なら、と。溶き卵を水で溶いたドリュールを刷毛で生地の表面に塗ったら、どんどん放り込んでいく。

 そして、全部入れ終えたら。



 チ​───────ン!!



「へ?」

『え?』


 僕らが驚くのも無理はない。

 本当に、数秒も経たないうちに……パンが焼けたんだから!?
しおりを挟む
感想 64

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...