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ジョン 弐
第3話 猫人になったのは
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『なら』と、霊夢は黒い毛に覆われた人間のような指を立てた。
「お嬢ちゃんには、ひとつ昔話をしてやろう」
「……昔話??」
「その様子じゃ……火坑から、あやかしに転生した話……聞いちゃいねぇようだからな?」
「! 聞いて……いいんですか??」
「一応、俺は育ての親だからなあ? 親の話として聞いてくれ」
「はい」
だが、美兎の腹も昼過ぎと言うことで、簡単につまめるものと熱いほうじ茶をいただきながら聞くことになった。
「まずあいつは……地獄の補佐官だった功績もあっから……前世の記憶も引き継いで、ガキくらいの身体で転生してきたんだ」
「? それは……あやかしさん達には普通のことですか??」
「いや、あんまりねぇなあ? そこは人間と同じで母親の身体から産まれてくる。だが、あいつは閻魔大王の意向もあり、それがなかった」
火坑も気づいたら、今で言う名古屋の界隈にぽつねんと存在していたそうだ。現世の様変わりはあの世にいた頃から知っていたらしいが……火坑が地獄で獄卒をする以前より、便利な世の中になっていたのに驚いたらしい。
見た目も、今の猫人を子供にした程度。
妖術は扱えたが、人化をする妖力はあまりなかったため、入り口と出口を使って界隈をさまよっていたそうだ。その時に出会ったのが、楽養を営んでいた霊夢と弟子になっていた蘭霊らしく。
「ほんと、ガキンチョの見た目して……良い目してたぜ? 他にも事情があったが……あの世でそれなりの功績を持ってたんだ。しっかりしてて当然だが」
「それで……火坑さんを引き取ったんですか??」
「見つけた時には、あいつ腹減ってたんでな? 当時からあやかしが人肉を食う習慣は減ってたが……あいつ自身人肉を食うことは、獄卒以来だったし、好んでなかったんだ」
「…………火坑、さんが??」
「刑罰の一種だ。亡者の血肉を食らうってだけだから、生きた血肉は食ってなかったんだと」
「…………そうですか」
あんなにも優しくて素敵な猫人が……そのようなむごい事をする存在だったと……過去とはいえ、信じられなかった。だが、今はもう過ぎた事だ。
「んでまあ、補佐官だったのもあるが育ちが良かったのか……綺麗に俺や蘭の飯を食うんだ。こりゃ、下手に野良にしとくよりは俺が親代わりになってやろうかと思ってな?」
「それは……いつくらいから??」
「そうだな? 今から二百年前……明治の時代前後だ」
「め、明治!!?」
「ギリギリ江戸末期くらいか??」
「そんなにも……」
いくら、将来を約束した仲と言えど。
美兎は、まだ先だからとは言え、そのような長い年月を生きることは出来るだろうか。
会社の先輩である沓木や、同僚の田城もおそらく、それを受け入れたかもしれないが。
「んで、引き取ってすぐに……あいつは俺達の仕事に興味を持って……皿洗いから手伝わせた。なりはガキだが、思いの外戦力になってな?? 弟子にしたのはしばらくしてからだが……まさか、蘭より先に暖簾分けするとは思わなかったぜ」
「……そう言えば」
兄弟子である、あの狼頭の蘭霊の方がここに長くいるのに……さすがは、火坑だなと美兎は感心した。
「お嬢ちゃんには、ひとつ昔話をしてやろう」
「……昔話??」
「その様子じゃ……火坑から、あやかしに転生した話……聞いちゃいねぇようだからな?」
「! 聞いて……いいんですか??」
「一応、俺は育ての親だからなあ? 親の話として聞いてくれ」
「はい」
だが、美兎の腹も昼過ぎと言うことで、簡単につまめるものと熱いほうじ茶をいただきながら聞くことになった。
「まずあいつは……地獄の補佐官だった功績もあっから……前世の記憶も引き継いで、ガキくらいの身体で転生してきたんだ」
「? それは……あやかしさん達には普通のことですか??」
「いや、あんまりねぇなあ? そこは人間と同じで母親の身体から産まれてくる。だが、あいつは閻魔大王の意向もあり、それがなかった」
火坑も気づいたら、今で言う名古屋の界隈にぽつねんと存在していたそうだ。現世の様変わりはあの世にいた頃から知っていたらしいが……火坑が地獄で獄卒をする以前より、便利な世の中になっていたのに驚いたらしい。
見た目も、今の猫人を子供にした程度。
妖術は扱えたが、人化をする妖力はあまりなかったため、入り口と出口を使って界隈をさまよっていたそうだ。その時に出会ったのが、楽養を営んでいた霊夢と弟子になっていた蘭霊らしく。
「ほんと、ガキンチョの見た目して……良い目してたぜ? 他にも事情があったが……あの世でそれなりの功績を持ってたんだ。しっかりしてて当然だが」
「それで……火坑さんを引き取ったんですか??」
「見つけた時には、あいつ腹減ってたんでな? 当時からあやかしが人肉を食う習慣は減ってたが……あいつ自身人肉を食うことは、獄卒以来だったし、好んでなかったんだ」
「…………火坑、さんが??」
「刑罰の一種だ。亡者の血肉を食らうってだけだから、生きた血肉は食ってなかったんだと」
「…………そうですか」
あんなにも優しくて素敵な猫人が……そのようなむごい事をする存在だったと……過去とはいえ、信じられなかった。だが、今はもう過ぎた事だ。
「んでまあ、補佐官だったのもあるが育ちが良かったのか……綺麗に俺や蘭の飯を食うんだ。こりゃ、下手に野良にしとくよりは俺が親代わりになってやろうかと思ってな?」
「それは……いつくらいから??」
「そうだな? 今から二百年前……明治の時代前後だ」
「め、明治!!?」
「ギリギリ江戸末期くらいか??」
「そんなにも……」
いくら、将来を約束した仲と言えど。
美兎は、まだ先だからとは言え、そのような長い年月を生きることは出来るだろうか。
会社の先輩である沓木や、同僚の田城もおそらく、それを受け入れたかもしれないが。
「んで、引き取ってすぐに……あいつは俺達の仕事に興味を持って……皿洗いから手伝わせた。なりはガキだが、思いの外戦力になってな?? 弟子にしたのはしばらくしてからだが……まさか、蘭より先に暖簾分けするとは思わなかったぜ」
「……そう言えば」
兄弟子である、あの狼頭の蘭霊の方がここに長くいるのに……さすがは、火坑だなと美兎は感心した。
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