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のっぺらぼう
第5話 のっぺらぼう・芙美
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そんな偶然があっていいのかと思うほど、辰也は驚いてしまった。
入り口を見れば、あの女性が……と振り返れば、たまらず声を上げそうになったが。
昼間に見たカントリー風の服装は可愛らしいままだが、彼女の顔が違っていたのだ。
(か、顔がない!!?)
あの時、だぶって見えた……彼女のもうひとつの顔。風吹がのっぺらぼうと言ったように、彼女の顔には目鼻口が一切ない……のっぺらとした顔しかなかったのだ。
「おや、芙美さん。いらっしゃいませ」
火坑はなんてことのないように接客しているが、それは当然か。
この店主もだが、辰也の隣にいるかまいたちの水緒も含めて人間ではないのだから。
「こーんばんは! ちょっと寄っちゃって……あら~?」
芙美が、辰也の横の空いてる席に座ろうとする前に……辰也を見て、のっぺらな顔を赤くしたのだ。
「昼間、人間界でぶつかったお兄さんだ~!! あの時はどうも~!!」
そう言うと、芙美は自分の顔に手をかざして……一瞬だけ光った後には、辰也も昼間に見た……あの可愛らしい容姿がちゃんとあった。ずっとのっぺらの顔を見るのは、少し緊張していたので落ち着けた。
「ど、どうも……」
「ここの常連さんだったんですね~?」
「は、はい」
「芙美の嬢ちゃん、そう言う情報はあんたの専売特許だろ?」
「誰彼構わず、調べたりしませんよ~?」
とりあえず、と芙美は何か飲みたいからと席に腰かけ、火坑に梅酒のお湯割りを頼んだ。女性だから、飲み仲間の湖沼美兎のように甘い酒が好みか。
この店で、甘い酒は他にポートワインしかないがあれはスッポンの生き血を割るのに使われるから……あまりグイグイ飲むのには向かないだろう。
辰也は熱燗をちびちび飲んでいると、右側……芙美の方から視線を感じた。振り向けば、彼女はにこにこと微笑んでいた。
「? あの??」
「いいえー? かまいたちの守護を持つ人間って、可愛らしいですね~って」
「か、かわいい??」
女性に可愛いだなんて言われたことなど、いつぶりか。幼少期は、姉などに着せ替え人形にさせられたことはあるが、それはどうでもいい。
とにかく、驚いて口に含んでいた燗酒を吹きそうになってしまった。
「ンフフ~? 私達あやかしには、可愛く見えちゃんです~」
こてんと音が聞こえるように首を傾げる、芙美の方が可愛いと言いたくなってしまう。
やはり、この女性に一目惚れしてしまったんだな……と、辰也は改めて自覚をした。
しかしながら、この女性の守備範囲に入っているのかとも気になる。どうしたって、彼女らあやかしの方がはるかに年上なのだから、辰也のような人間はその範囲なのかと。
「なんだなんだ~? 芙美の嬢ちゃん、この坊を気に入ったのか??」
「み、水緒さん??」
「気に入りますよ~? 私の顔見ても、ちょっと驚いただけですし~??」
火坑を除くあやかしらが何を言うのかと思うと、辰也は慌てたが……芙美の方は変わらずにこやかなままだった。
入り口を見れば、あの女性が……と振り返れば、たまらず声を上げそうになったが。
昼間に見たカントリー風の服装は可愛らしいままだが、彼女の顔が違っていたのだ。
(か、顔がない!!?)
あの時、だぶって見えた……彼女のもうひとつの顔。風吹がのっぺらぼうと言ったように、彼女の顔には目鼻口が一切ない……のっぺらとした顔しかなかったのだ。
「おや、芙美さん。いらっしゃいませ」
火坑はなんてことのないように接客しているが、それは当然か。
この店主もだが、辰也の隣にいるかまいたちの水緒も含めて人間ではないのだから。
「こーんばんは! ちょっと寄っちゃって……あら~?」
芙美が、辰也の横の空いてる席に座ろうとする前に……辰也を見て、のっぺらな顔を赤くしたのだ。
「昼間、人間界でぶつかったお兄さんだ~!! あの時はどうも~!!」
そう言うと、芙美は自分の顔に手をかざして……一瞬だけ光った後には、辰也も昼間に見た……あの可愛らしい容姿がちゃんとあった。ずっとのっぺらの顔を見るのは、少し緊張していたので落ち着けた。
「ど、どうも……」
「ここの常連さんだったんですね~?」
「は、はい」
「芙美の嬢ちゃん、そう言う情報はあんたの専売特許だろ?」
「誰彼構わず、調べたりしませんよ~?」
とりあえず、と芙美は何か飲みたいからと席に腰かけ、火坑に梅酒のお湯割りを頼んだ。女性だから、飲み仲間の湖沼美兎のように甘い酒が好みか。
この店で、甘い酒は他にポートワインしかないがあれはスッポンの生き血を割るのに使われるから……あまりグイグイ飲むのには向かないだろう。
辰也は熱燗をちびちび飲んでいると、右側……芙美の方から視線を感じた。振り向けば、彼女はにこにこと微笑んでいた。
「? あの??」
「いいえー? かまいたちの守護を持つ人間って、可愛らしいですね~って」
「か、かわいい??」
女性に可愛いだなんて言われたことなど、いつぶりか。幼少期は、姉などに着せ替え人形にさせられたことはあるが、それはどうでもいい。
とにかく、驚いて口に含んでいた燗酒を吹きそうになってしまった。
「ンフフ~? 私達あやかしには、可愛く見えちゃんです~」
こてんと音が聞こえるように首を傾げる、芙美の方が可愛いと言いたくなってしまう。
やはり、この女性に一目惚れしてしまったんだな……と、辰也は改めて自覚をした。
しかしながら、この女性の守備範囲に入っているのかとも気になる。どうしたって、彼女らあやかしの方がはるかに年上なのだから、辰也のような人間はその範囲なのかと。
「なんだなんだ~? 芙美の嬢ちゃん、この坊を気に入ったのか??」
「み、水緒さん??」
「気に入りますよ~? 私の顔見ても、ちょっと驚いただけですし~??」
火坑を除くあやかしらが何を言うのかと思うと、辰也は慌てたが……芙美の方は変わらずにこやかなままだった。
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