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閻魔大王 弐
第4話 心の欠片『スパムとアスパラガスのパスタ』
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出てきた心の欠片は、今日はアスパラガスだった。
色鮮やかで、美兎の目から見ても美味しそうな。これで何を作ってくれるのか楽しみだ。
「ふむ。アスパラガスか??」
「ちょうど旬の食材ですし、大王もしっかり召し上がりませんか? アスパラガスとスパムのパスタでも」
「スパムか??」
「えっと……沖縄だとよく使うお肉みたいなのでしたっけ??」
名古屋で売っていないわけではないが、美兎は実家でも出てきたような覚えがない。あと、沖縄料理だとゴーヤチャンプルーの主要食材としかわかっていない。そう、火坑に聞くと彼は頷いてくれた。
「はい。少し独特の風味もありますが、コーンビーフより食べやすいと思います。少々お待ちを」
その間に、梅酒のお湯割りも貰い……タラモサラダだと思っていた明太子のじゃがサラダを肴に待つことにした。ぴりりと辛味がある明太子が少し酸味の効いたマヨネーズが合わせてあり、これだけでご飯が食べたくなる味付けだ。
それに加えて、火坑が手早く調理をしていく光景から目が離せない。素人目から見ても、無駄な動きがないように見えるからだ。
「ううむ。良い香りじゃ」
閻魔大王が口にしたように、独特の香りはしたが肉の焼けるいい香りがしてきた。油ぎっているような違うような……とにかく、不思議な香り。
軽く胃袋を満たしただけの、美兎のお腹に直撃するような良い香りなのだ。
そして、パスタを入れてささっと火坑が炒め上げたら出来上がってしまう。
「お待たせ致しました。美兎さんの心の欠片で作らせていただきました、アスパラガスとスパムのパスタです」
一見、普通のベーコンとアスパラガスのペペロンチーノのように見える。しかしながら、スパムもだがまた違ったスパイスのような香りがした。塩気が強いような違うような。
大王も皿を受け取ってから、胃袋が限界を迎えていた美兎はさっそくフォークを手に取った。
「いただきます」
ペペロンチーノに見えるが、鷹の爪の輪切りなどは見えない。香りは独特なせいか、和風パスタぽくはない。となると、美兎が時々自宅で作る適当パスタの感じか……火坑がそんな手抜きをするはずがないが。
まず、スパムらしき細切りの肉を口にしてみる。口に入れた途端、油が強いがコーンビーフよりもしっかりした歯応え……ハムやソーセージなどの加工肉ともまた違う食感だった。そして、塩気と香辛料が強いのに嫌な感じがしない。
アスパラガスは炒めただけなのか、シャキシャキとした歯応えがあり……絡んだ調味料から、塩気と醤油に似た味がしてこれも美味しい。しかし、醤油みたいで違う調味料の味が思い出せるようで出来なかった。
「美味い! 火坑や、この味付けはなんだ?」
「ふふ。ナンプラーです」
「ほう? パスタにナンプラーか」
エスニック料理がよく使うとされている調味料とここで出会うとは。
あれはあれで、何度かランチで沓木達と行ったことはあるがもっと独特で不思議な味付けだったと思う。それに比べて、このパスタはとても食べやすい。スパムも加わっているせいだろうか。
「とっても美味しいです」
美味し過ぎて、すぐに皿の上を空にしてしまうくらい。
皿を返せば、火坑はいつもの涼しい笑顔になってくれた。
「うむ。良い縁じゃ」
閻魔大王も、こちらを見るとにこにこと微笑む。年代は美兎の両親くらいなのに、酒が入っているせいかどこか幼く見えるのだ。あの世の偉い存在であるのに、不謹慎かもしれないが。
「お前達は良き関係を築けている」
「あ……りがとうございます」
「ふふ。恐縮です」
閻魔大王に認められる程の絆があると言われると、いくらか気恥ずかしい。けど、嬉しくないわけがない。
頬を両手で挟んでいると、後ろの扉が開かれた。
「……………………大王」
静かで、鋭い。
しかし、聞き覚えがないわけではない声。
美兎はゆっくり振り返ると、こちらも一年近く会っていない火坑のかつての先輩が怖い笑顔で立っていたのだった。
色鮮やかで、美兎の目から見ても美味しそうな。これで何を作ってくれるのか楽しみだ。
「ふむ。アスパラガスか??」
「ちょうど旬の食材ですし、大王もしっかり召し上がりませんか? アスパラガスとスパムのパスタでも」
「スパムか??」
「えっと……沖縄だとよく使うお肉みたいなのでしたっけ??」
名古屋で売っていないわけではないが、美兎は実家でも出てきたような覚えがない。あと、沖縄料理だとゴーヤチャンプルーの主要食材としかわかっていない。そう、火坑に聞くと彼は頷いてくれた。
「はい。少し独特の風味もありますが、コーンビーフより食べやすいと思います。少々お待ちを」
その間に、梅酒のお湯割りも貰い……タラモサラダだと思っていた明太子のじゃがサラダを肴に待つことにした。ぴりりと辛味がある明太子が少し酸味の効いたマヨネーズが合わせてあり、これだけでご飯が食べたくなる味付けだ。
それに加えて、火坑が手早く調理をしていく光景から目が離せない。素人目から見ても、無駄な動きがないように見えるからだ。
「ううむ。良い香りじゃ」
閻魔大王が口にしたように、独特の香りはしたが肉の焼けるいい香りがしてきた。油ぎっているような違うような……とにかく、不思議な香り。
軽く胃袋を満たしただけの、美兎のお腹に直撃するような良い香りなのだ。
そして、パスタを入れてささっと火坑が炒め上げたら出来上がってしまう。
「お待たせ致しました。美兎さんの心の欠片で作らせていただきました、アスパラガスとスパムのパスタです」
一見、普通のベーコンとアスパラガスのペペロンチーノのように見える。しかしながら、スパムもだがまた違ったスパイスのような香りがした。塩気が強いような違うような。
大王も皿を受け取ってから、胃袋が限界を迎えていた美兎はさっそくフォークを手に取った。
「いただきます」
ペペロンチーノに見えるが、鷹の爪の輪切りなどは見えない。香りは独特なせいか、和風パスタぽくはない。となると、美兎が時々自宅で作る適当パスタの感じか……火坑がそんな手抜きをするはずがないが。
まず、スパムらしき細切りの肉を口にしてみる。口に入れた途端、油が強いがコーンビーフよりもしっかりした歯応え……ハムやソーセージなどの加工肉ともまた違う食感だった。そして、塩気と香辛料が強いのに嫌な感じがしない。
アスパラガスは炒めただけなのか、シャキシャキとした歯応えがあり……絡んだ調味料から、塩気と醤油に似た味がしてこれも美味しい。しかし、醤油みたいで違う調味料の味が思い出せるようで出来なかった。
「美味い! 火坑や、この味付けはなんだ?」
「ふふ。ナンプラーです」
「ほう? パスタにナンプラーか」
エスニック料理がよく使うとされている調味料とここで出会うとは。
あれはあれで、何度かランチで沓木達と行ったことはあるがもっと独特で不思議な味付けだったと思う。それに比べて、このパスタはとても食べやすい。スパムも加わっているせいだろうか。
「とっても美味しいです」
美味し過ぎて、すぐに皿の上を空にしてしまうくらい。
皿を返せば、火坑はいつもの涼しい笑顔になってくれた。
「うむ。良い縁じゃ」
閻魔大王も、こちらを見るとにこにこと微笑む。年代は美兎の両親くらいなのに、酒が入っているせいかどこか幼く見えるのだ。あの世の偉い存在であるのに、不謹慎かもしれないが。
「お前達は良き関係を築けている」
「あ……りがとうございます」
「ふふ。恐縮です」
閻魔大王に認められる程の絆があると言われると、いくらか気恥ずかしい。けど、嬉しくないわけがない。
頬を両手で挟んでいると、後ろの扉が開かれた。
「……………………大王」
静かで、鋭い。
しかし、聞き覚えがないわけではない声。
美兎はゆっくり振り返ると、こちらも一年近く会っていない火坑のかつての先輩が怖い笑顔で立っていたのだった。
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