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ダイダラボッチ
第5話 ダイダラボッチ②
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ゆらゆらと揺らぎ……そして、美兎の方へと手を伸ばしてきた。
思わず、金切り声のように叫んでしまうと真穂が何故か、ケラケラと笑いながらこちらへとやってきた。
「だーいじょうぶよ? お出ましになるだけ」
「お……お出まし??」
もう一度ポスターを見れば、人の手のようなものからだんだんとポスターから出てきて。黒かったのが白い手足に変わり、長くて綺麗な青色の髪。神主さんのような豪奢な白と金が合わさった服装。袴は紫。
まだ寒いのに、素足で草履をはいていた。出てきた……あやかしは、とても美しかった。火坑が響也になる姿ももちろん美しいが、こちらの彼はさらに神々しく見えたのだ。
店の中に降りてきた彼は、ぱっぱっと服のシワをはらうと……美兎を見るなり、ふにゃんと音が聞こえるくらい柔らかく微笑んだ。
「やぁ~? 今、僕を呼んだ?」
神秘的な外見なのに、随分と間伸びた口調。しかし、それが逆に親しみを持てて……美兎は少しほっと出来た。
「あら、更紗」
「やぁ、真穂~」
真穂が呼んだ名前と、彼が真穂を親しく呼んでいることで……美兎は目を丸くしてしまいそうになった。
「更紗……さん」
「うん?」
思わず呼んでしまっても、彼は嫌な顔をせずに美兎を見てくれた。
「もしかして……ダイダラ」
「さっちゃぁあああんん!!」
「わぁ~」
素性を聞こうとしたら、チカがいつのまにかカウンターから出てきて更紗に抱きついていった。勢いでふたりとも倒れてしまったが、どちらも気にせず……特にチカは飛び出た狐のような白い尾っぽを激しく振っていたのだ。
「久しぶり、久しぶりぃいい!!」
「うん、久しぶりぃ」
いちゃいちゃと言うか、再会の抱擁程度にとどめてくれているようだ。チカは一応客前だからと、多分セーブしているはず。
「ほーら、ラブラブカップル! 美兎に更紗をちゃんと紹介したげなよ?」
「あらやだ!」
「ふふ。美兎ちゃんって言うんだ~?」
真穂の声がけで終わりを告げられると、立ち上がってからチカは隣に立った更紗を紹介してくれることに。チカの人化姿も背が高いが、更紗も負けじと背丈があった。
「改めて、さっちゃんことダイダラボッチの更紗。アタシのパートナーよん?」
「はじめまして~」
「は、はじめまして……」
畏れ多い存在だと、ついさっき聞いたばかりなのに。随分とフレンドリーな感じに見える。とは言っても、あやかしだからとは言え常日頃気を張ってはいるわけでもないかもしれない。
「てか、媒介を使ってわざわざ長野から来たわけ??」
「ん~? なんか呼ばれた気がしたんだ~?」
「アタシはいつでもウェルカムよん!!」
「今日は違うよ~?」
「なんでよ!?」
すると、更紗は美兎の前に立ち、いきなり頭を撫でてきた。ほわっと温かくて大きな手に、驚いたが何故か安心も出来た。
「あの?」
「うんうん。あの子達の子孫か」
「え?」
「あれ? 知らないの~?」
「な、何を??」
疑問に疑問で返してしまったが、更紗が首を傾げていると彼の後ろから、真穂が軽く小突いた。
「その話はしたけど、あいつはあいつで忙しいの! まだ直接会ってないんだから」
「そうなの~?」
「真穂ちゃん、誰が?」
「あんたとミホの先祖」
「ああ!」
兄を初めて楽庵に連れて行ったあの日。
少し忘れかけていたが、真穂からはその話を聞いていた。
「そっかな~? あの子の気配がちょっとしたけど?」
「え?」
「ま、界隈のどっかですれ違ったくらいはあるでしょうね?」
「そっか~? いや~、僕を見てもすごくは怖がらないし、ちょっと嬉しくて」
「はぁ……」
元はどれくらいの大きさかと聞いてみると。
答えたのはチカだったが、最低でも栄のテレビ塔は余裕……東京タワーより少し大きいくらいだとか。
それほどの大きさを想像して、さすがに美兎もひっくり返るくらい驚いてしまう。
思わず、金切り声のように叫んでしまうと真穂が何故か、ケラケラと笑いながらこちらへとやってきた。
「だーいじょうぶよ? お出ましになるだけ」
「お……お出まし??」
もう一度ポスターを見れば、人の手のようなものからだんだんとポスターから出てきて。黒かったのが白い手足に変わり、長くて綺麗な青色の髪。神主さんのような豪奢な白と金が合わさった服装。袴は紫。
まだ寒いのに、素足で草履をはいていた。出てきた……あやかしは、とても美しかった。火坑が響也になる姿ももちろん美しいが、こちらの彼はさらに神々しく見えたのだ。
店の中に降りてきた彼は、ぱっぱっと服のシワをはらうと……美兎を見るなり、ふにゃんと音が聞こえるくらい柔らかく微笑んだ。
「やぁ~? 今、僕を呼んだ?」
神秘的な外見なのに、随分と間伸びた口調。しかし、それが逆に親しみを持てて……美兎は少しほっと出来た。
「あら、更紗」
「やぁ、真穂~」
真穂が呼んだ名前と、彼が真穂を親しく呼んでいることで……美兎は目を丸くしてしまいそうになった。
「更紗……さん」
「うん?」
思わず呼んでしまっても、彼は嫌な顔をせずに美兎を見てくれた。
「もしかして……ダイダラ」
「さっちゃぁあああんん!!」
「わぁ~」
素性を聞こうとしたら、チカがいつのまにかカウンターから出てきて更紗に抱きついていった。勢いでふたりとも倒れてしまったが、どちらも気にせず……特にチカは飛び出た狐のような白い尾っぽを激しく振っていたのだ。
「久しぶり、久しぶりぃいい!!」
「うん、久しぶりぃ」
いちゃいちゃと言うか、再会の抱擁程度にとどめてくれているようだ。チカは一応客前だからと、多分セーブしているはず。
「ほーら、ラブラブカップル! 美兎に更紗をちゃんと紹介したげなよ?」
「あらやだ!」
「ふふ。美兎ちゃんって言うんだ~?」
真穂の声がけで終わりを告げられると、立ち上がってからチカは隣に立った更紗を紹介してくれることに。チカの人化姿も背が高いが、更紗も負けじと背丈があった。
「改めて、さっちゃんことダイダラボッチの更紗。アタシのパートナーよん?」
「はじめまして~」
「は、はじめまして……」
畏れ多い存在だと、ついさっき聞いたばかりなのに。随分とフレンドリーな感じに見える。とは言っても、あやかしだからとは言え常日頃気を張ってはいるわけでもないかもしれない。
「てか、媒介を使ってわざわざ長野から来たわけ??」
「ん~? なんか呼ばれた気がしたんだ~?」
「アタシはいつでもウェルカムよん!!」
「今日は違うよ~?」
「なんでよ!?」
すると、更紗は美兎の前に立ち、いきなり頭を撫でてきた。ほわっと温かくて大きな手に、驚いたが何故か安心も出来た。
「あの?」
「うんうん。あの子達の子孫か」
「え?」
「あれ? 知らないの~?」
「な、何を??」
疑問に疑問で返してしまったが、更紗が首を傾げていると彼の後ろから、真穂が軽く小突いた。
「その話はしたけど、あいつはあいつで忙しいの! まだ直接会ってないんだから」
「そうなの~?」
「真穂ちゃん、誰が?」
「あんたとミホの先祖」
「ああ!」
兄を初めて楽庵に連れて行ったあの日。
少し忘れかけていたが、真穂からはその話を聞いていた。
「そっかな~? あの子の気配がちょっとしたけど?」
「え?」
「ま、界隈のどっかですれ違ったくらいはあるでしょうね?」
「そっか~? いや~、僕を見てもすごくは怖がらないし、ちょっと嬉しくて」
「はぁ……」
元はどれくらいの大きさかと聞いてみると。
答えたのはチカだったが、最低でも栄のテレビ塔は余裕……東京タワーより少し大きいくらいだとか。
それほどの大きさを想像して、さすがに美兎もひっくり返るくらい驚いてしまう。
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