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ダイダラボッチ
第3話 心の欠片『ステーキとガリバタの炒飯』
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ニンニクと牛肉……ステーキかと思ったが、欠片であるそのふたつを受け取ったチカはカウンターの向こう側で調理していくのをみていると違うとわかった。
ニンニクはみじん切り、牛肉はサイコロ状にカット。
火坑のところと似た一台のガスコンロの上でフライパンを温め、そこに脂身の少し多いサイコロ状の牛肉を焼いていく。焼肉にも久しく行っていないので、美兎はそれでも食べたいと思うくらい胃袋が限界だった。
軽く焼き目をつけたら、牛肉は一度皿に入れ。その後に、軽くバターを落とした同じフライパンでニンニクを炒めていく。その匂いは暴力的だった。
「食べたいですぅ……!」
「待ってて? もっと最高に美味しいものにしてあげるからん」
「これ以上?」
すると、チカは冷やご飯のようなボウルを取り出し……フライパンに勢いよく入れていった。そこに、ステーキを戻してさらに炒めていく。仕上げには黒胡椒と醤油。さらに追いかけるようにバター。
「はい! チカ特製のステーキ入りガリバタ炒飯よん?」
「わぁ……!?」
美兎と真穂と、それそれ盛り付けてから渡してくれた。
至近距離で香る、ガーリックバターと醤油のコラボした匂いが強烈だが美兎は大好きだった。
普通の平日だったら明日を気にするが、今日は金曜日。
明日は予定もなく、土曜日だから遠慮なく食べていい。いただきますをしてから、チカに渡されたスプーンで口に運んだ。
「!?」
強烈な香りがするのに、バターをたっぷり入れたお陰かニンニクの風味は柔らかい。醤油と胡椒のパンチもあとからやってきて、ステーキはしっかりめではなくミディアムレアな状態で焼かれている上に簡単に歯で噛み切れた。
これが米と合わさると、無限に口に入れれる。次、次と空腹だった胃袋がこの料理を欲していくのだ。食べ終えた頃には、まだ食べられるが悲鳴をあげていた胃袋が、いくらか落ち着いたのだった。
「どーぉ?」
チカは美兎の食べっぷりを見て、ほぼわかっているようだったが聞いてきた。
「とっても、美味しかったです! これがまかないなんですか?」
「こういうBARだもの。しょっちゅう出したら、店が臭いわ」
たしかに。今は調理した匂いが店中を漂っている。この落ち着いたBARには少し不似合いなくらいに。
胃に食べ物を入れたので、次は……と美兎にはミモザと言うシャンパンベースのカクテルを出してくれた。これに混ぜたオレンジジュースも、絞った果汁のお陰で味が濃くて美味しい。しかし、シャンパンの度数がキツめだからとゆっくり飲んだ。
「美味しいです」
「ありがとん? あーあ、美兎ちゃんは恋人さんと会える距離が近くていいわん? アタシは遠距離よ遠距離」
シェイカーを置いてから、ふっとチカは淋しそうに笑った。
「恋人……さんが?」
「もち、人間じゃないわん? けど、あやかしでも特異な存在。……ダイダラボッチって知ってる~?」
「いいえ?」
どんな存在かな、と首を傾げると……チカは壁側にあるポスターのひとつに指を向けた。森と湖、巨人が歩いているような不思議なポスターだった。
ニンニクはみじん切り、牛肉はサイコロ状にカット。
火坑のところと似た一台のガスコンロの上でフライパンを温め、そこに脂身の少し多いサイコロ状の牛肉を焼いていく。焼肉にも久しく行っていないので、美兎はそれでも食べたいと思うくらい胃袋が限界だった。
軽く焼き目をつけたら、牛肉は一度皿に入れ。その後に、軽くバターを落とした同じフライパンでニンニクを炒めていく。その匂いは暴力的だった。
「食べたいですぅ……!」
「待ってて? もっと最高に美味しいものにしてあげるからん」
「これ以上?」
すると、チカは冷やご飯のようなボウルを取り出し……フライパンに勢いよく入れていった。そこに、ステーキを戻してさらに炒めていく。仕上げには黒胡椒と醤油。さらに追いかけるようにバター。
「はい! チカ特製のステーキ入りガリバタ炒飯よん?」
「わぁ……!?」
美兎と真穂と、それそれ盛り付けてから渡してくれた。
至近距離で香る、ガーリックバターと醤油のコラボした匂いが強烈だが美兎は大好きだった。
普通の平日だったら明日を気にするが、今日は金曜日。
明日は予定もなく、土曜日だから遠慮なく食べていい。いただきますをしてから、チカに渡されたスプーンで口に運んだ。
「!?」
強烈な香りがするのに、バターをたっぷり入れたお陰かニンニクの風味は柔らかい。醤油と胡椒のパンチもあとからやってきて、ステーキはしっかりめではなくミディアムレアな状態で焼かれている上に簡単に歯で噛み切れた。
これが米と合わさると、無限に口に入れれる。次、次と空腹だった胃袋がこの料理を欲していくのだ。食べ終えた頃には、まだ食べられるが悲鳴をあげていた胃袋が、いくらか落ち着いたのだった。
「どーぉ?」
チカは美兎の食べっぷりを見て、ほぼわかっているようだったが聞いてきた。
「とっても、美味しかったです! これがまかないなんですか?」
「こういうBARだもの。しょっちゅう出したら、店が臭いわ」
たしかに。今は調理した匂いが店中を漂っている。この落ち着いたBARには少し不似合いなくらいに。
胃に食べ物を入れたので、次は……と美兎にはミモザと言うシャンパンベースのカクテルを出してくれた。これに混ぜたオレンジジュースも、絞った果汁のお陰で味が濃くて美味しい。しかし、シャンパンの度数がキツめだからとゆっくり飲んだ。
「美味しいです」
「ありがとん? あーあ、美兎ちゃんは恋人さんと会える距離が近くていいわん? アタシは遠距離よ遠距離」
シェイカーを置いてから、ふっとチカは淋しそうに笑った。
「恋人……さんが?」
「もち、人間じゃないわん? けど、あやかしでも特異な存在。……ダイダラボッチって知ってる~?」
「いいえ?」
どんな存在かな、と首を傾げると……チカは壁側にあるポスターのひとつに指を向けた。森と湖、巨人が歩いているような不思議なポスターだった。
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