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ダイダラボッチ
第2話『レーズンバター』
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真穂の提案とは言え、随分と個性的なあやかしの店だなと思った。
しかし、美兎の目に写ったのは店員はともかく……少し照明は暗いが落ち着いた雰囲気を醸し出すBARの装いだった。
オネエかゲイなのか、いまいちわからない狐耳の男性は相変わらず真穂に抱きついているが。これを兄の海峰斗が見たら……おそらく、嫉妬を感じるだけで済まないだろう。真穂が言うには、海峰斗の独占欲もなかなかのものだそうだ。
火坑とも違うが、基本的穏やかな性格の兄からは想像しにくい。しかし、元彼の美兎への暴行からは守ってくれたのだ。そうだったな、と思い出した。
「あんら~? 可愛らしい人間のお嬢さんじゃなぁい?」
ようやく、美兎に気づいたのか狐耳の男性は真穂から離れて、こちらにやって来た。ニコニコ笑顔なので、つい照れてしまう。中途半端な人間化だが、このあやかしも他のあやかし同様に美形だから。
「は、はじめまして。湖沼美兎です」
「はじめまして~。アタシは狐狸……言っちゃえば、神の使いとかの手前にいる狐のあやかしよん? チカって呼んでちょうだいな?」
「あんたは宗睦でしょう?」
「真穂様ぁ!? 本名は止めてぇ!!」
「……じゃあ、チカさん」
本名はそこそこ男らしい名前ではあるが、本人にとってはあまり好ましく思っていないのか。
とりあえず、カウンターの席に着くとチカもバーテンの仕事をするのか、お決まりのシェイカーを手にしていた。
「さ、お客様は大歓迎よん? 真穂様はいつもの?」
「そうねー? 美兎は甘いもの好きだし、残業明けだから……ひとまずシンデレラ」
「真穂ちゃん、それノンアルじゃ」
「一杯目から飛ばしたら、悪酔いするでしょ?」
本当に、よく見ている守護妖怪だった。
チカがさっと作ってくれたのは、真穂には淡いブルーが美しいカクテル。美兎にはオレンジジュースとかがベースのシンデレラと言うノンアルのカクテル。
ただのミックスジュースでしかないが、丁寧に作られているお陰か、居酒屋よりも断然に美味しかった。
「美味しい!?」
「ンフフ~? 即、じゃないけど。あらかじめ果肉から絞っているのよん? 美味しいでしょー?」
「すっごく!」
チャーミングなウィンクが似合うチカは、軽食にと簡単な生ハムのサンドイッチの他に……手作りだと言うレーズンバターを出してくれた。
「抵抗があるかもだけどぉ。まずは、フォークでちょびっとつまんでみてー?」
なので、言われた通りにちょっとだけフォークですくって口に運ぶ。少しだけラム酒の強い香りがしたが、強烈なアルコールとかは感じない。レーズンの甘さにバターは少し塩気が感じる程度。
これに、まだ残っていたシンデレラを口に含むと幸せの循環でしかなかった。
「美味しいです!」
「レシピの大元は、アタシの師匠だけど……ちょーっとだけ、自分なりにアレンジしてみたのん。クラッカーにも合うわよ~?」
チカの言う通り、クラッカーに載せても絶品だった。晩御飯はほとんど食べていないが、食欲が増していく。何かしっかり食べたいと思う頃に……チカがまたニコニコ笑顔になった。
「?」
「美兎ちゃん、お腹の空き具合どーぅ?」
「結構……ぺこぺこです」
「明日とか休日出勤はなーい?」
「いえ。それは大丈夫ですが」
「じゃ。アタシお得意のまかないメニュー出してあげるわん?」
「まかない?」
「チカ。真穂が美兎の心の欠片出してあげるから、代金にしちゃって?」
「んま!? それって、換金所で噂がすごかった欠片!?」
「そうそう。美兎のは凄いから」
と言って、真穂が出してくれた心の欠片は二種類有り。牛肉の塊とニンニクだった。
しかし、美兎の目に写ったのは店員はともかく……少し照明は暗いが落ち着いた雰囲気を醸し出すBARの装いだった。
オネエかゲイなのか、いまいちわからない狐耳の男性は相変わらず真穂に抱きついているが。これを兄の海峰斗が見たら……おそらく、嫉妬を感じるだけで済まないだろう。真穂が言うには、海峰斗の独占欲もなかなかのものだそうだ。
火坑とも違うが、基本的穏やかな性格の兄からは想像しにくい。しかし、元彼の美兎への暴行からは守ってくれたのだ。そうだったな、と思い出した。
「あんら~? 可愛らしい人間のお嬢さんじゃなぁい?」
ようやく、美兎に気づいたのか狐耳の男性は真穂から離れて、こちらにやって来た。ニコニコ笑顔なので、つい照れてしまう。中途半端な人間化だが、このあやかしも他のあやかし同様に美形だから。
「は、はじめまして。湖沼美兎です」
「はじめまして~。アタシは狐狸……言っちゃえば、神の使いとかの手前にいる狐のあやかしよん? チカって呼んでちょうだいな?」
「あんたは宗睦でしょう?」
「真穂様ぁ!? 本名は止めてぇ!!」
「……じゃあ、チカさん」
本名はそこそこ男らしい名前ではあるが、本人にとってはあまり好ましく思っていないのか。
とりあえず、カウンターの席に着くとチカもバーテンの仕事をするのか、お決まりのシェイカーを手にしていた。
「さ、お客様は大歓迎よん? 真穂様はいつもの?」
「そうねー? 美兎は甘いもの好きだし、残業明けだから……ひとまずシンデレラ」
「真穂ちゃん、それノンアルじゃ」
「一杯目から飛ばしたら、悪酔いするでしょ?」
本当に、よく見ている守護妖怪だった。
チカがさっと作ってくれたのは、真穂には淡いブルーが美しいカクテル。美兎にはオレンジジュースとかがベースのシンデレラと言うノンアルのカクテル。
ただのミックスジュースでしかないが、丁寧に作られているお陰か、居酒屋よりも断然に美味しかった。
「美味しい!?」
「ンフフ~? 即、じゃないけど。あらかじめ果肉から絞っているのよん? 美味しいでしょー?」
「すっごく!」
チャーミングなウィンクが似合うチカは、軽食にと簡単な生ハムのサンドイッチの他に……手作りだと言うレーズンバターを出してくれた。
「抵抗があるかもだけどぉ。まずは、フォークでちょびっとつまんでみてー?」
なので、言われた通りにちょっとだけフォークですくって口に運ぶ。少しだけラム酒の強い香りがしたが、強烈なアルコールとかは感じない。レーズンの甘さにバターは少し塩気が感じる程度。
これに、まだ残っていたシンデレラを口に含むと幸せの循環でしかなかった。
「美味しいです!」
「レシピの大元は、アタシの師匠だけど……ちょーっとだけ、自分なりにアレンジしてみたのん。クラッカーにも合うわよ~?」
チカの言う通り、クラッカーに載せても絶品だった。晩御飯はほとんど食べていないが、食欲が増していく。何かしっかり食べたいと思う頃に……チカがまたニコニコ笑顔になった。
「?」
「美兎ちゃん、お腹の空き具合どーぅ?」
「結構……ぺこぺこです」
「明日とか休日出勤はなーい?」
「いえ。それは大丈夫ですが」
「じゃ。アタシお得意のまかないメニュー出してあげるわん?」
「まかない?」
「チカ。真穂が美兎の心の欠片出してあげるから、代金にしちゃって?」
「んま!? それって、換金所で噂がすごかった欠片!?」
「そうそう。美兎のは凄いから」
と言って、真穂が出してくれた心の欠片は二種類有り。牛肉の塊とニンニクだった。
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