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雪女 弐
第5話『時期外れの牡丹鍋』
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真穂は海峰斗を迎えに行くと、界隈の途中で別れ……美兎は単身で楽庵に向かう。
途中、あちこちのあやかし達に挨拶していると……久しぶりの顔ぶれと出会えたのだ。
「ジェイクさん?」
「美兎さん……!」
楽庵の手前で、吸血鬼のジェイクと出会えた。去年の暮れ以降だからか、そこそこ久しぶりである。そして、彼はひとりではなかった。
「……お知り合い?」
青い髪の美少女。
としか言えないくらい、真穂や雪女の花菜に勝るとも劣らないくらいの、あやかしの美少女が隣にいたのだ。
「! ああ、ハナ。彼女が以前僕を助けてくれた恩人の湖沼美兎さんだよ」
「! じゃあ」
「うん。で、さっきのお店の大将さんの恋人さんだよ」
随分と、親しい間柄のようだ。と言うよりも、ジェイクが彼女に話す表情が生き生きとしている感じがする。もしや、と思うとハナと呼ばれたあやかしが美兎にお辞儀をしてきた。
「はじめまして、吸血鬼の天宮花恵です。その……ジェイクさんとはつい先日から、お付き合いさせていただいて、います」
「あら」
美兎の知らない間に、同じ種族のあやかしとお付き合いをしていたとは。だから、ジェイクの表情が明るいのも納得が出来た。
(日本人? の吸血鬼さんもいるんだ……?)
あやかし知識に足を少し突っ込んだ程度の美兎が聞くべきではないけれど。
とりあえず、ふたりにはまた会おうと約束してから美兎は楽庵に行った。到着すると、入り口に猫人が待ってくれていた。
「火坑さん!」
「いらっしゃいませ、美兎さん」
どうしたのかと首を傾げると、火坑はふふっと涼しい笑顔になったのだ。
「火坑さん?」
「いえ。この後は貸切にしましたので、外で美兎さんを待っていたんです」
「え? わざわざ?」
「先程、ジェイクさん達とお会いしたようですね? あの方々で今日の営業自体は終わりです」
だから、思う存分ご馳走をすると彼は招き入れてくれた。店に入ると赤味噌のいい香りが、中で充満していたのだ。カウンターに座ると、すぐに火坑がいつものように梅酒のお湯割りを出してくれた。
「ありがとうございます」
「さ、今からは僕らだけです。美兎さんには時期外れではありますが、牡丹鍋をご馳走させてください」
「……ぼたん鍋?」
「ジビエ料理ですよ。猪肉の味噌鍋ですね? 狩猟時期に仕入れたものを冷凍してたんですよ。是非、ゆっくり出来る時に美兎さんに召し上がっていただきたくて」
と言って、以前の時のようにカウンターにカセットコンロと鍋をセッティングしてくれた。大皿には、脂身の凄い綺麗な豚肉にも見える猪肉。野菜もたっぷりで、これから煮ていくのが楽しみになってきた。
「あ、火坑さん」
先に、彼の妹弟子から手解きを受けたマフラーを渡せば……水色の瞳を丸くしてくれたが、嬉しそうに包みを開けてくれた。
「……素敵なマフラーですね」
素敵なのは、笑顔全開な火坑の方だ。おまけに、何故か響也の姿になってマフラーを巻いてくれたのだから、余計に笑顔が眩しい。
その後、牡丹鍋をシメの雑炊まで堪能し……実は火坑からも赤鬼の隆輝に習ったと言うラングドシャと一緒に……こちらも花菜から手解きを受けたオフホワイトの模様編みが美しいマフラーをもらったのだ。
ふたりでそれぞれのマフラーを見につけたら、火坑のマンションでお泊まりデートをすることになり……社会人一年目の素敵な節目となった。
途中、あちこちのあやかし達に挨拶していると……久しぶりの顔ぶれと出会えたのだ。
「ジェイクさん?」
「美兎さん……!」
楽庵の手前で、吸血鬼のジェイクと出会えた。去年の暮れ以降だからか、そこそこ久しぶりである。そして、彼はひとりではなかった。
「……お知り合い?」
青い髪の美少女。
としか言えないくらい、真穂や雪女の花菜に勝るとも劣らないくらいの、あやかしの美少女が隣にいたのだ。
「! ああ、ハナ。彼女が以前僕を助けてくれた恩人の湖沼美兎さんだよ」
「! じゃあ」
「うん。で、さっきのお店の大将さんの恋人さんだよ」
随分と、親しい間柄のようだ。と言うよりも、ジェイクが彼女に話す表情が生き生きとしている感じがする。もしや、と思うとハナと呼ばれたあやかしが美兎にお辞儀をしてきた。
「はじめまして、吸血鬼の天宮花恵です。その……ジェイクさんとはつい先日から、お付き合いさせていただいて、います」
「あら」
美兎の知らない間に、同じ種族のあやかしとお付き合いをしていたとは。だから、ジェイクの表情が明るいのも納得が出来た。
(日本人? の吸血鬼さんもいるんだ……?)
あやかし知識に足を少し突っ込んだ程度の美兎が聞くべきではないけれど。
とりあえず、ふたりにはまた会おうと約束してから美兎は楽庵に行った。到着すると、入り口に猫人が待ってくれていた。
「火坑さん!」
「いらっしゃいませ、美兎さん」
どうしたのかと首を傾げると、火坑はふふっと涼しい笑顔になったのだ。
「火坑さん?」
「いえ。この後は貸切にしましたので、外で美兎さんを待っていたんです」
「え? わざわざ?」
「先程、ジェイクさん達とお会いしたようですね? あの方々で今日の営業自体は終わりです」
だから、思う存分ご馳走をすると彼は招き入れてくれた。店に入ると赤味噌のいい香りが、中で充満していたのだ。カウンターに座ると、すぐに火坑がいつものように梅酒のお湯割りを出してくれた。
「ありがとうございます」
「さ、今からは僕らだけです。美兎さんには時期外れではありますが、牡丹鍋をご馳走させてください」
「……ぼたん鍋?」
「ジビエ料理ですよ。猪肉の味噌鍋ですね? 狩猟時期に仕入れたものを冷凍してたんですよ。是非、ゆっくり出来る時に美兎さんに召し上がっていただきたくて」
と言って、以前の時のようにカウンターにカセットコンロと鍋をセッティングしてくれた。大皿には、脂身の凄い綺麗な豚肉にも見える猪肉。野菜もたっぷりで、これから煮ていくのが楽しみになってきた。
「あ、火坑さん」
先に、彼の妹弟子から手解きを受けたマフラーを渡せば……水色の瞳を丸くしてくれたが、嬉しそうに包みを開けてくれた。
「……素敵なマフラーですね」
素敵なのは、笑顔全開な火坑の方だ。おまけに、何故か響也の姿になってマフラーを巻いてくれたのだから、余計に笑顔が眩しい。
その後、牡丹鍋をシメの雑炊まで堪能し……実は火坑からも赤鬼の隆輝に習ったと言うラングドシャと一緒に……こちらも花菜から手解きを受けたオフホワイトの模様編みが美しいマフラーをもらったのだ。
ふたりでそれぞれのマフラーを見につけたら、火坑のマンションでお泊まりデートをすることになり……社会人一年目の素敵な節目となった。
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