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火車 参
第6話 見事に完食
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凄いとしか言いようがない。
観客席で応援していた真衣は恋人の勢いに圧倒されていた。
どちらかと言えば小柄な彼なのに、再開した時に食べていた勢いと変わらないくらい……目の前の大盛り天丼だったものをどんどん口に入れていく。
たしかに人間ではないのは聞いたし、告白してもらった時に証拠を見せてもらったが、食欲……特に天丼には目がないらしいが。ここまで、上位にランクインするほどの胃袋を持っていつとは思わなかった。
(……玉ねぎあるはずなのに、猫ちゃんでも大丈夫なんだ?)
と、余計な事を考えるくらいに真衣は風吹の食事を見ていることしか出来ない。応援はもちろんするが、真衣の声援が聞こえたのか風吹は勢いを上げて天丼に食らいついた。あのまま行くと、すぐ右隣の巨漢に追いつくかもしれない。
(頑張って……頑張って!!)
制限時間までは余裕ではあっても、大半の参加者は箸が止まりそうになっている。なのに、風吹もだがトップの巨漢は全然。
風吹が完食出来ないと思っていた観客の一部は圧倒されて、ぽそぽそと彼について話す声が聞こえてくる。
「あの陰キャ? メカクレ? すごくない??」
「ほんと、ずーっと黙々と食べているんだけど」
「一位追い抜かれそう」
「なんか、彼女? いるっぽいけど、応援されたら勢い増したよね??」
聞き様によっては、風吹を貶すようにも聞こえなくないが、風吹を狙うわけではないようだ。風吹は目元をばっちり見せたら、絶対モテる。モテまくると思っているので、目元をスッキリして欲しいのとそうでないとで真衣は言うかどうかを悩んでいた。
けど、それを知っているのがこの中なら真衣だけ。
なら、もう一度声援を送ってアピールするしかない。
「不動さーん! あと少しー!!」
出来るだけ大声で叫ぶと、風吹は顔を上げて親指を立ててくれた。ちょっと可愛い仕草にギャップ萌えしてしまう。
「え、彼女可愛い……」
「メカクレだけど、わざと顔隠してんなら……」
「ひょっとして、イケメンと美女の組み合わせ……? 裏山……」
「って見て! 不動って人追いつこうとしてる!!?」
天ぷらの一部を少し残して、米の部分をかっこんでいく。箸が面倒だったからかスプーンで、その勢いがとても男らしい。
少しだけあの綺麗なブルーアイが見えてしまってたが、観客は彼に顔なんて見ていなくて勢いに圧倒されていた。
「おっとぉ!? 不動さん、声援を受けたお陰かさらに米を口に入れていく!! あれは彼女さんでしょうか?! 羨ましいですね!!」
司会にも言われてしまったが、悪い気はしない。
風吹を見ると、こちらから見える範囲では米がほぼない感じだ。逆に、巨漢の方は胃に負担がきたのか苦しそうにしている。
「ふ……侑さぁん!! ラストスパートですよー!!」
真衣は思い切って、人間名の名前を初めて呼ぶと…………風吹の方はびっくりしたのか、一瞬箸が止まったがすぐに残しておいた天ぷらを大口を開けて食べていく。
その勢い良さ、勇ましいと言えようか。
結果、完食出来たのは彼ひとりで優勝も獲得してしまった。
「完食です!! 初参加の不動侑さん唯一人が完食!! そして、優勝となりましたぁああああ!!」
「…………ごちそうさまでした」
司会のホイッスルが鳴った時に、試合終了の合図となった。他の参加者が全員ギブアップをしたからである。
そして、風吹はまだまだ余裕そうだった。
「優勝賞品は、清浄の年間パスポートです!! ペアなので、彼女さんとどうぞ!!」
「……ありがとうございます」
司会からパスポートを受け取った風吹は、軽く会釈をしてから真衣のところにやってきた。
「お疲れ様です、侑さん!」
「……真衣さんのお陰です」
メカクレであのブルーアイは今見えないが、口元は微笑んでいたので真衣にとっては嬉しくて。
公衆の前だと言うのに、彼に思いっきり抱きついた。
観客席で応援していた真衣は恋人の勢いに圧倒されていた。
どちらかと言えば小柄な彼なのに、再開した時に食べていた勢いと変わらないくらい……目の前の大盛り天丼だったものをどんどん口に入れていく。
たしかに人間ではないのは聞いたし、告白してもらった時に証拠を見せてもらったが、食欲……特に天丼には目がないらしいが。ここまで、上位にランクインするほどの胃袋を持っていつとは思わなかった。
(……玉ねぎあるはずなのに、猫ちゃんでも大丈夫なんだ?)
と、余計な事を考えるくらいに真衣は風吹の食事を見ていることしか出来ない。応援はもちろんするが、真衣の声援が聞こえたのか風吹は勢いを上げて天丼に食らいついた。あのまま行くと、すぐ右隣の巨漢に追いつくかもしれない。
(頑張って……頑張って!!)
制限時間までは余裕ではあっても、大半の参加者は箸が止まりそうになっている。なのに、風吹もだがトップの巨漢は全然。
風吹が完食出来ないと思っていた観客の一部は圧倒されて、ぽそぽそと彼について話す声が聞こえてくる。
「あの陰キャ? メカクレ? すごくない??」
「ほんと、ずーっと黙々と食べているんだけど」
「一位追い抜かれそう」
「なんか、彼女? いるっぽいけど、応援されたら勢い増したよね??」
聞き様によっては、風吹を貶すようにも聞こえなくないが、風吹を狙うわけではないようだ。風吹は目元をばっちり見せたら、絶対モテる。モテまくると思っているので、目元をスッキリして欲しいのとそうでないとで真衣は言うかどうかを悩んでいた。
けど、それを知っているのがこの中なら真衣だけ。
なら、もう一度声援を送ってアピールするしかない。
「不動さーん! あと少しー!!」
出来るだけ大声で叫ぶと、風吹は顔を上げて親指を立ててくれた。ちょっと可愛い仕草にギャップ萌えしてしまう。
「え、彼女可愛い……」
「メカクレだけど、わざと顔隠してんなら……」
「ひょっとして、イケメンと美女の組み合わせ……? 裏山……」
「って見て! 不動って人追いつこうとしてる!!?」
天ぷらの一部を少し残して、米の部分をかっこんでいく。箸が面倒だったからかスプーンで、その勢いがとても男らしい。
少しだけあの綺麗なブルーアイが見えてしまってたが、観客は彼に顔なんて見ていなくて勢いに圧倒されていた。
「おっとぉ!? 不動さん、声援を受けたお陰かさらに米を口に入れていく!! あれは彼女さんでしょうか?! 羨ましいですね!!」
司会にも言われてしまったが、悪い気はしない。
風吹を見ると、こちらから見える範囲では米がほぼない感じだ。逆に、巨漢の方は胃に負担がきたのか苦しそうにしている。
「ふ……侑さぁん!! ラストスパートですよー!!」
真衣は思い切って、人間名の名前を初めて呼ぶと…………風吹の方はびっくりしたのか、一瞬箸が止まったがすぐに残しておいた天ぷらを大口を開けて食べていく。
その勢い良さ、勇ましいと言えようか。
結果、完食出来たのは彼ひとりで優勝も獲得してしまった。
「完食です!! 初参加の不動侑さん唯一人が完食!! そして、優勝となりましたぁああああ!!」
「…………ごちそうさまでした」
司会のホイッスルが鳴った時に、試合終了の合図となった。他の参加者が全員ギブアップをしたからである。
そして、風吹はまだまだ余裕そうだった。
「優勝賞品は、清浄の年間パスポートです!! ペアなので、彼女さんとどうぞ!!」
「……ありがとうございます」
司会からパスポートを受け取った風吹は、軽く会釈をしてから真衣のところにやってきた。
「お疲れ様です、侑さん!」
「……真衣さんのお陰です」
メカクレであのブルーアイは今見えないが、口元は微笑んでいたので真衣にとっては嬉しくて。
公衆の前だと言うのに、彼に思いっきり抱きついた。
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