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火車
第2話 田城真衣
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世間は狭過ぎると実感したのちに。
三田から火車の恋の相手が同期の田城真衣だと判明したからには、美兎はおそらくと頷き。
やはり、と確信したらしい三田は火車と田城の出会いを話してくれることになろうとしたら。休憩時間が終わりそうだったので、今晩楽庵で会うことになり。
美兎は仕事中、田城のデスクを見たが表面上はいつも通り。善行をしたからと吹聴するような女性ではないのを知っているので、今日も特に何もなかった。
であれば、三田の知人である火車の一方的な恋心なのだろうか、と思わずにいられない。
とりあえず、時々様子見をしてたら彼女に見られていることがバレたので。終業直後に、フロアの休憩室に連れて行かれたのだった。
「美兎っち、どったの? 私何かした??」
「え、いや……その」
三田が実はサンタクロースとは言えないし、火車もおそらく人間界に溶け込む形で人化をしていたかもしれない。だから、人間の場合の名前を知らないしどう言う風に言えばいいのやら、と。
だが、それだけ気になって凝視した美兎が悪いので、半分嘘を交えて話すことにした。
「?」
「あのさ、真衣ちゃん」
「うん?」
「最近……だけど。人助けとかした?」
「え? なんで美兎っちが知ってんの?? 私まだ誰にも言ってないのに」
「……三田さんのお知り合いだったんだって。昼休憩の時に、聞かれたの」
「あ、あー? そっか、三田のおじいちゃんの知り合い」
すると、田城は美兎から少し離れて肩を落としたのだった。具合が悪くなったかと言えばそう言うわけでもなく。少しずつだが、彼女の顔に赤味がさしたのだった。
「真衣ちゃん?」
「う、うーん。いやさ? あんま思い出さないようにしてたんだけど」
「え、何か悪いこと??」
「逆だよ、逆!! 沓木先輩んとこバリのイケメンに遭遇だったから、にやけないようにって!!」
「……あー」
火車はどう言う妖怪かは、三田に少しだけ聞いたけども。総じて、妖は人化でも本性でも美醜を問うなら、美の方が強い。
火坑は基本的に控えめにしてるので、他のあやかしよりは大人しめだが……調整しないと超絶美形になるので美兎も直視出来ないくらいだ。美兎と付き合うようになってからは、仕入れに行く以外はそうしているらしい。
であれば、火車は田城が言ったように、赤鬼の隆輝に負けず劣らず美形だったのも頷ける。
「今朝さ? 満員電車の中で気分悪そうにしてたのを介抱したんだー。落ち着いた時に、相手の顔見たらすっげーイケメンだったの!! あー、今思い出してもにやける」
「ドンピシャ?」
「もち!!」
惚れやすいタイプの女性ではあるのだが、チャラっぽいところはあっても根が真面目なのを美兎は同期として知っている。
仕事もそつなくこなすし、口調もオンオフと使い分けていて、社内ではムードメーカーとして上司や先輩から可愛がられている。センスもあるお陰か、Webサイトのクリエイターとして着実に成長しているのだ。
最初の頃は、出来る人間と言うことで避けてしまっていたが。接触する機会が増えていくうちに誤解は解けて……今では仲のいい同期兼友達となっている。
「外見とかは、三田さんから聞いてないけど。どんな感じの人??」
「うーん。……美兎っち、メカクレってわかる?」
「メカクレ??」
「前髪長くて、目が隠れてる人間を言うんだー。ま、最初その人の顔隠れてたし、顔色も見えなかったんだけど。呼吸辛そうだったから体調がわかったわけで」
「うんうん」
「途中下車させて、ちょっと介抱したんだよねー?……で、ベンチで横にならせた時に見えた顔が!!」
「イケメンさんだったと?」
「そう!! 何あれ!? メカクレ推しじゃないのに、ハマりそうになったぁあああああ!!」
その思い出した勢いで、田城が握っていたコーヒー入りの紙コップがお釈迦になり。慌てて二人で片付けたのだった。
「えー……じゃあ。真衣ちゃんはどう思ってるの? 一目惚れ??」
「かなあ? かなあ!!? 私自覚してるけど、ポジティブ過ぎるじゃん!? あの人は静か~で、大人しそうだったけど」
「けど?」
「勝手なイメージだけど、私みたいなタイプが苦手そうだなーって」
むしろ惚れられている、とは……いくら美兎でも言えなかった。
三田から火車の恋の相手が同期の田城真衣だと判明したからには、美兎はおそらくと頷き。
やはり、と確信したらしい三田は火車と田城の出会いを話してくれることになろうとしたら。休憩時間が終わりそうだったので、今晩楽庵で会うことになり。
美兎は仕事中、田城のデスクを見たが表面上はいつも通り。善行をしたからと吹聴するような女性ではないのを知っているので、今日も特に何もなかった。
であれば、三田の知人である火車の一方的な恋心なのだろうか、と思わずにいられない。
とりあえず、時々様子見をしてたら彼女に見られていることがバレたので。終業直後に、フロアの休憩室に連れて行かれたのだった。
「美兎っち、どったの? 私何かした??」
「え、いや……その」
三田が実はサンタクロースとは言えないし、火車もおそらく人間界に溶け込む形で人化をしていたかもしれない。だから、人間の場合の名前を知らないしどう言う風に言えばいいのやら、と。
だが、それだけ気になって凝視した美兎が悪いので、半分嘘を交えて話すことにした。
「?」
「あのさ、真衣ちゃん」
「うん?」
「最近……だけど。人助けとかした?」
「え? なんで美兎っちが知ってんの?? 私まだ誰にも言ってないのに」
「……三田さんのお知り合いだったんだって。昼休憩の時に、聞かれたの」
「あ、あー? そっか、三田のおじいちゃんの知り合い」
すると、田城は美兎から少し離れて肩を落としたのだった。具合が悪くなったかと言えばそう言うわけでもなく。少しずつだが、彼女の顔に赤味がさしたのだった。
「真衣ちゃん?」
「う、うーん。いやさ? あんま思い出さないようにしてたんだけど」
「え、何か悪いこと??」
「逆だよ、逆!! 沓木先輩んとこバリのイケメンに遭遇だったから、にやけないようにって!!」
「……あー」
火車はどう言う妖怪かは、三田に少しだけ聞いたけども。総じて、妖は人化でも本性でも美醜を問うなら、美の方が強い。
火坑は基本的に控えめにしてるので、他のあやかしよりは大人しめだが……調整しないと超絶美形になるので美兎も直視出来ないくらいだ。美兎と付き合うようになってからは、仕入れに行く以外はそうしているらしい。
であれば、火車は田城が言ったように、赤鬼の隆輝に負けず劣らず美形だったのも頷ける。
「今朝さ? 満員電車の中で気分悪そうにしてたのを介抱したんだー。落ち着いた時に、相手の顔見たらすっげーイケメンだったの!! あー、今思い出してもにやける」
「ドンピシャ?」
「もち!!」
惚れやすいタイプの女性ではあるのだが、チャラっぽいところはあっても根が真面目なのを美兎は同期として知っている。
仕事もそつなくこなすし、口調もオンオフと使い分けていて、社内ではムードメーカーとして上司や先輩から可愛がられている。センスもあるお陰か、Webサイトのクリエイターとして着実に成長しているのだ。
最初の頃は、出来る人間と言うことで避けてしまっていたが。接触する機会が増えていくうちに誤解は解けて……今では仲のいい同期兼友達となっている。
「外見とかは、三田さんから聞いてないけど。どんな感じの人??」
「うーん。……美兎っち、メカクレってわかる?」
「メカクレ??」
「前髪長くて、目が隠れてる人間を言うんだー。ま、最初その人の顔隠れてたし、顔色も見えなかったんだけど。呼吸辛そうだったから体調がわかったわけで」
「うんうん」
「途中下車させて、ちょっと介抱したんだよねー?……で、ベンチで横にならせた時に見えた顔が!!」
「イケメンさんだったと?」
「そう!! 何あれ!? メカクレ推しじゃないのに、ハマりそうになったぁあああああ!!」
その思い出した勢いで、田城が握っていたコーヒー入りの紙コップがお釈迦になり。慌てて二人で片付けたのだった。
「えー……じゃあ。真衣ちゃんはどう思ってるの? 一目惚れ??」
「かなあ? かなあ!!? 私自覚してるけど、ポジティブ過ぎるじゃん!? あの人は静か~で、大人しそうだったけど」
「けど?」
「勝手なイメージだけど、私みたいなタイプが苦手そうだなーって」
むしろ惚れられている、とは……いくら美兎でも言えなかった。
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