107 / 204
猫人 弐
第5話 便利な調理器具と絆
しおりを挟む
父にもだが、母にも喜んでもらえて何よりだった。
夕飯は一緒に食べれなかったが、火坑の人当たりの良さに家族はとても喜んでくれた。
拓哉とは違い過ぎると、誰も言わなかったが美兎は実感していた。人間などではない妖怪でも、中身は中身。
素敵過ぎる男性に変わりない。これからも付き合っていけるのに喜ばないわけがなかった。美兎は、お風呂に入ってから……久しぶりに家族だけの団欒と言うことで夕飯の準備をしている母を手伝うことにした。
「響也君のお料理には負けるけど、南蛮系が食べたくなったから。唐揚げでチキン南蛮風にするわ」
「ん。ゆで卵か玉ねぎ切ればいい??」
「玉ねぎにはこう言うのを買ったのよ」
と言って、母が戸棚から取り出したのはバレーボールとかより少し小ぶりサイズの丸っこいタッパーに似た器具。
内側には、フードプロセッサーのような鋭い刃が内蔵されていた。
「これ、なぁに??」
「あら、意外。あなたくらい若い子だと知ってそうだったけど」
「うちの会社でも、調理器具関連は別部署だし……」
「そうなのね? あのね、それ。簡易型のフードプロセッサーのようなものなの。電池とかはなしで」
「どう使うの??」
「論より証拠。玉ねぎは皮剥いて、芯と先端を取ったら適当な大きさにカットして??」
母に言われるがままに、玉ねぎを調理していき……その器具の蓋を開けてから入れて、また蓋をすると飾りだったツマミを母が引っ張り、出てきた紐を出したり閉まったりすると……内蔵の刃が動き出してまるでフードプロセッサーのように、玉ねぎをすぐにみじん切りにしていった。
「おお!?」
「ほんとはいっぺんにタルタルソース作れるんだけど。ゆで卵今からだし、手間かかるけどそれぞれの材料をチョッパーでみじん切りお願い」
「はーい」
こんな風に、母の手伝いをするだなんていつぶりだろうか。高校や大学は勉学に明け暮れて、家事を手伝うことがほとんどなかった。火坑に初めて心の欠片で見せてくれた、あのゾウさんのバッジを手にした時から……家族よりも自分を優先し過ぎていた。
男運もなかったし、バカな女だったと思う。
なのに、両親や兄は美兎を見放さなかった。
それについては、今は感謝してもし切れない。
とりあえず、母がメインで動いている間に美兎は自分なりに覚えた家事で、味噌汁やサラダとかを作ってみた。火坑にもだが、母にも負けるが悪くない見栄えだと思う。
「あら、上出来じゃない? 響也君に習ったの??」
「うーん。いつもカウンター席だから、見様見真似だけど」
ほんとは、座敷童子の真穂と半同居中なので彼女に教わりながら作っているのだ。今は、美兎の影の中にいるから、きっと声を押し殺しながら笑っているに違いない。
「あらそうなの? けど、手際が昔に比べたら凄くいいわ。…………ほんと、良い彼氏君に出会えたわね?」
「…………うん」
本当に、あやかしであれ、良い存在に出会えた。願わくば、彼とずっと一緒にいたいと思えるくらいに。
「けど、今度は海峰斗の彼女さんでしょ? なんか、あなた達のタイミング考えると知り合いかと思っちゃうけど」
その母の問いには、兄や真穂の許可なく言いたくはないのでスルーすることにした。
夕飯は一緒に食べれなかったが、火坑の人当たりの良さに家族はとても喜んでくれた。
拓哉とは違い過ぎると、誰も言わなかったが美兎は実感していた。人間などではない妖怪でも、中身は中身。
素敵過ぎる男性に変わりない。これからも付き合っていけるのに喜ばないわけがなかった。美兎は、お風呂に入ってから……久しぶりに家族だけの団欒と言うことで夕飯の準備をしている母を手伝うことにした。
「響也君のお料理には負けるけど、南蛮系が食べたくなったから。唐揚げでチキン南蛮風にするわ」
「ん。ゆで卵か玉ねぎ切ればいい??」
「玉ねぎにはこう言うのを買ったのよ」
と言って、母が戸棚から取り出したのはバレーボールとかより少し小ぶりサイズの丸っこいタッパーに似た器具。
内側には、フードプロセッサーのような鋭い刃が内蔵されていた。
「これ、なぁに??」
「あら、意外。あなたくらい若い子だと知ってそうだったけど」
「うちの会社でも、調理器具関連は別部署だし……」
「そうなのね? あのね、それ。簡易型のフードプロセッサーのようなものなの。電池とかはなしで」
「どう使うの??」
「論より証拠。玉ねぎは皮剥いて、芯と先端を取ったら適当な大きさにカットして??」
母に言われるがままに、玉ねぎを調理していき……その器具の蓋を開けてから入れて、また蓋をすると飾りだったツマミを母が引っ張り、出てきた紐を出したり閉まったりすると……内蔵の刃が動き出してまるでフードプロセッサーのように、玉ねぎをすぐにみじん切りにしていった。
「おお!?」
「ほんとはいっぺんにタルタルソース作れるんだけど。ゆで卵今からだし、手間かかるけどそれぞれの材料をチョッパーでみじん切りお願い」
「はーい」
こんな風に、母の手伝いをするだなんていつぶりだろうか。高校や大学は勉学に明け暮れて、家事を手伝うことがほとんどなかった。火坑に初めて心の欠片で見せてくれた、あのゾウさんのバッジを手にした時から……家族よりも自分を優先し過ぎていた。
男運もなかったし、バカな女だったと思う。
なのに、両親や兄は美兎を見放さなかった。
それについては、今は感謝してもし切れない。
とりあえず、母がメインで動いている間に美兎は自分なりに覚えた家事で、味噌汁やサラダとかを作ってみた。火坑にもだが、母にも負けるが悪くない見栄えだと思う。
「あら、上出来じゃない? 響也君に習ったの??」
「うーん。いつもカウンター席だから、見様見真似だけど」
ほんとは、座敷童子の真穂と半同居中なので彼女に教わりながら作っているのだ。今は、美兎の影の中にいるから、きっと声を押し殺しながら笑っているに違いない。
「あらそうなの? けど、手際が昔に比べたら凄くいいわ。…………ほんと、良い彼氏君に出会えたわね?」
「…………うん」
本当に、あやかしであれ、良い存在に出会えた。願わくば、彼とずっと一緒にいたいと思えるくらいに。
「けど、今度は海峰斗の彼女さんでしょ? なんか、あなた達のタイミング考えると知り合いかと思っちゃうけど」
その母の問いには、兄や真穂の許可なく言いたくはないのでスルーすることにした。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
転生したら侯爵令嬢だった~メイベル・ラッシュはかたじけない~
おてんば松尾
恋愛
侯爵令嬢のメイベル・ラッシュは、跡継ぎとして幼少期から厳しい教育を受けて育てられた。
婚約者のレイン・ウィスパーは伯爵家の次男騎士科にいる同級生だ。見目麗しく、学業の成績も良いことから、メイベルの婚約者となる。
しかし、妹のサーシャとレインは互いに愛し合っているようだった。
二人が会っているところを何度もメイベルは見かけていた。
彼は婚約者として自分を大切にしてくれているが、それ以上に妹との仲が良い。
恋人同士のように振舞う彼らとの関係にメイベルは悩まされていた。
ある日、メイベルは窓から落ちる事故に遭い、自分の中の過去の記憶がよみがえった。
それは、この世界ではない別の世界に生きていた時の記憶だった。
龍神山の蛙
Yoshinari F/Route-17
キャラ文芸
明治時代。
龍神の巫女である龍加美紗夜(りゅうかみ・さや)は、干ばつで水不足に陥った村を救うため、たった一人で龍神山迷い込む。龍神山には多くの妖(あやかし)が棲むと言われ、誰も近づくことのない魔の山。その山頂にある龍神湖には「主様=龍神様」が棲み、雨を降らせる力を持っているといわれている。またその生き血はあらゆる病を治し、肉には不老不死の力が宿っているという。しかし、そこで1尺(30㎝)もあろうかという蛙が紗夜の目の前に現れ口づけを懇願する。
「巫女殿、口づけを…!!」
「い…嫌ぁぁぁ!!」
16歳の経験のない乙女の唇を狙う蛙の目的は? そして紗夜は「主様」のもとに辿り着き雨を降らせてもらい、村を救うことが出来るのか? やがて紗夜の失われた記憶と蛙との過去が明らかになり、物語は急展開を見せる。
原作 Yumi F
文 Yoshinari F/Route-17
あやかし駄菓子屋商店街 化け化け壱花 ~ただいま社長と残業中です~
菱沼あゆ
キャラ文芸
普通の甘いものではこの疲れは癒せないっ!
そんなことを考えながら、会社帰りの道を歩いていた壱花は、見たこともない駄菓子屋にたどり着く。
見るからに怪しい感じのその店は、あやかしと疲れたサラリーマンたちに愛されている駄菓子屋で、謎の狐面の男が経営していた。
駄菓子屋の店主をやる呪いにかかった社長、倫太郎とOL生活に疲れ果てた秘書、壱花のまったりあやかしライフ。
「駄菓子もあやかしも俺は嫌いだ」
「じゃあ、なんでこの店やってんですか、社長……」
「玖 安倍晴明の恩返し」完結しました。
転校生は朝ドラ女優!?
小暮悠斗
キャラ文芸
若者に絶大な人気を誇る若手女優――新田結衣には夢があった。
普通の生活がしてみたい。国民的女優の仲間入りを果たしつつある彼女に普通の生活など送れるはずもなく、多忙な日々を送っていた。そんな中、結衣は周囲を巻き込み自分の夢をかなえる手段を思いつく。
問題は山積みのまま。
朝ドラ女優の二重生活が幕を開ける!!
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
小説サイト「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
〈銀龍の愛し子〉は盲目王子を王座へ導く
山河 枝
キャラ文芸
【簡単あらすじ】周りから忌み嫌われる下女が、不遇な王子に力を与え、彼を王にする。
★シリアス8:コミカル2
【詳細あらすじ】
50人もの侍女をクビにしてきた第三王子、雪晴。
次の侍女に任じられたのは、異能を隠して王城で働く洗濯女、水奈だった。
鱗があるために疎まれている水奈だが、盲目の雪晴のそばでは安心して過ごせるように。
みじめな生活を送る雪晴も、献身的な水奈に好意を抱く。
惹かれ合う日々の中、実は〈銀龍の愛し子〉である水奈が、雪晴の力を覚醒させていく。「王家の恥」と見下される雪晴を、王座へと導いていく。
後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる