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猫又
第5話 心の欠片の競り
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店の入り口とは違い、奥は広々としていた空間となっていた。吹き抜け、と言うかホールのような。天井がとても高く、外から見た高さそのもののように見えた。
舞台のような場所があり、中央には司会席。
舞台の下には、化けていたりいなかったりと大きさも様々なあやかし達が鮨詰めのように群がっている。人間がいるようには、舞台袖にいる美兎にはわからなかった。
「まあ、集まっているねえ? さて、旦那方にはとっておきの席にご案内しよう」
猫又の氷見子がついてくるように言うと、和風の建物を意識して作られたような、木製のエレベーターに乗り……降りた場所はすぐに先程のあやかし達を見下ろせる特等席だった。
ちょうど、数人も座れない狭い席だが、司会席はよく見えた。それに今はおりている幕の後ろにも何かあるのが見えたが……あれがこれまで買い取りしてきた心の欠片なのだろうか、と気になった。
その中には、美兎が火坑や他のあやかしに渡したものも混じっているのだろうかと。
「競りはだいたい三時間。飲み物とかはあちきが持ってこよう。遠慮なく言っておくれよ? だいたいは揃えてあるよ」
「そんな……いいんですか??」
「お嬢さんからは、これだけ集まるくらいの極上品を旦那に渡してくれたんだ。逆にこっちがサービスさせてほしいんだよ」
「せっかくなので、お言葉に甘えましょう? 美兎さん」
「…………じゃあ、ホットコーヒーで」
「僕も同じものを」
「酒じゃなくていいのかい? 欲がないねえ?」
せっかくなら、豆から挽いてくる。と、氷見子は言ってからあの和風エレベーターで行ってしまった。
すると、競りの時間になったのか舞台の方に誰かが歩いていくのが見える。この距離でもしっかり見えるので、氷見子に似た和風の服装を着ているあやかしだとわかった。
司会席の前に立つと、マイクのスイッチを入れてから軽くお辞儀をした。
「大変お待たせ致しました。新年の初競りを始めさせていただきます。お集まりいただいた皆様はご存知でしょうが、昨年度集まった心の欠片の中には至高の品々もあります。是非、お買い求めください」
と、言ってから手を上に挙げると……幕がゆっくりと上にあがって行き、だんだんと『心の欠片』が見えてきた。
(……………………え?)
いつも、火坑に渡している……食材の前段階でもある、取り出した人間の思い出の品でもどちらでもない。
色鮮やかなシャボン玉の中に、宝石のような石が入っているだけだった。あれが、美兎達人間から取り出した心の欠片だとは思えない。
とても、美し過ぎである。
「ふふ。調理や加工をして……残った心の欠片はあのような形になるんですよ」
美兎が驚いていた間、火坑はくすくすと笑っていた。
「……あんなに綺麗になるんですか?」
「ええ。元は魂の欠片ですからね? その欠片は加工して時間が経つとあのようになります。仕組みは、そんなもんだと思っておくしかありません」
「そんなものだと?」
「はい」
随分と曖昧な表現ではあるが、あやかしの間でも不確かなものであるならば仕様がない。とにかく見惚れていると、氷見子が戻ってきた。
「お待ちどうさん。コーヒーに合う和菓子もサービスするで?」
その言葉通り、皿の上には抹茶のカステラのようなお菓子が載っていた。
「さあ、始めますよ!! まずは、楽養常連の佐八の御人から!! はじめは15万!!」
「16!!」
「18!!」
「20!!」
「20いただきました!! 他は!?」
テレビで昔、魚市場などの競り場面を見たことはあったが……。桁は低いのか高いのかわからないが、あやかし達が騒ぎ出すのだから、凄い金額かもしれない。
楽養の名前が出た時に親近感が湧いたが、美兎は自分の名前が出てくるかどうかわくわくしてきた。そして、氷見子が持ってきてくれたお茶菓子とコーヒーは店のに負けないくらい美味しかった。
舞台のような場所があり、中央には司会席。
舞台の下には、化けていたりいなかったりと大きさも様々なあやかし達が鮨詰めのように群がっている。人間がいるようには、舞台袖にいる美兎にはわからなかった。
「まあ、集まっているねえ? さて、旦那方にはとっておきの席にご案内しよう」
猫又の氷見子がついてくるように言うと、和風の建物を意識して作られたような、木製のエレベーターに乗り……降りた場所はすぐに先程のあやかし達を見下ろせる特等席だった。
ちょうど、数人も座れない狭い席だが、司会席はよく見えた。それに今はおりている幕の後ろにも何かあるのが見えたが……あれがこれまで買い取りしてきた心の欠片なのだろうか、と気になった。
その中には、美兎が火坑や他のあやかしに渡したものも混じっているのだろうかと。
「競りはだいたい三時間。飲み物とかはあちきが持ってこよう。遠慮なく言っておくれよ? だいたいは揃えてあるよ」
「そんな……いいんですか??」
「お嬢さんからは、これだけ集まるくらいの極上品を旦那に渡してくれたんだ。逆にこっちがサービスさせてほしいんだよ」
「せっかくなので、お言葉に甘えましょう? 美兎さん」
「…………じゃあ、ホットコーヒーで」
「僕も同じものを」
「酒じゃなくていいのかい? 欲がないねえ?」
せっかくなら、豆から挽いてくる。と、氷見子は言ってからあの和風エレベーターで行ってしまった。
すると、競りの時間になったのか舞台の方に誰かが歩いていくのが見える。この距離でもしっかり見えるので、氷見子に似た和風の服装を着ているあやかしだとわかった。
司会席の前に立つと、マイクのスイッチを入れてから軽くお辞儀をした。
「大変お待たせ致しました。新年の初競りを始めさせていただきます。お集まりいただいた皆様はご存知でしょうが、昨年度集まった心の欠片の中には至高の品々もあります。是非、お買い求めください」
と、言ってから手を上に挙げると……幕がゆっくりと上にあがって行き、だんだんと『心の欠片』が見えてきた。
(……………………え?)
いつも、火坑に渡している……食材の前段階でもある、取り出した人間の思い出の品でもどちらでもない。
色鮮やかなシャボン玉の中に、宝石のような石が入っているだけだった。あれが、美兎達人間から取り出した心の欠片だとは思えない。
とても、美し過ぎである。
「ふふ。調理や加工をして……残った心の欠片はあのような形になるんですよ」
美兎が驚いていた間、火坑はくすくすと笑っていた。
「……あんなに綺麗になるんですか?」
「ええ。元は魂の欠片ですからね? その欠片は加工して時間が経つとあのようになります。仕組みは、そんなもんだと思っておくしかありません」
「そんなものだと?」
「はい」
随分と曖昧な表現ではあるが、あやかしの間でも不確かなものであるならば仕様がない。とにかく見惚れていると、氷見子が戻ってきた。
「お待ちどうさん。コーヒーに合う和菓子もサービスするで?」
その言葉通り、皿の上には抹茶のカステラのようなお菓子が載っていた。
「さあ、始めますよ!! まずは、楽養常連の佐八の御人から!! はじめは15万!!」
「16!!」
「18!!」
「20!!」
「20いただきました!! 他は!?」
テレビで昔、魚市場などの競り場面を見たことはあったが……。桁は低いのか高いのかわからないが、あやかし達が騒ぎ出すのだから、凄い金額かもしれない。
楽養の名前が出た時に親近感が湧いたが、美兎は自分の名前が出てくるかどうかわくわくしてきた。そして、氷見子が持ってきてくれたお茶菓子とコーヒーは店のに負けないくらい美味しかった。
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