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猫人
第3話 猫人の家③
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穏やかで、夢のような時間に感じた。
火坑と恋人になれた。それだけでも信じられないことなのに……今まさに、その彼が『香取響也』の姿で、美兎とキスをしている。彼の、自室で。
ただただ、触れ合うだけのキスを。それを何度か繰り返した後に、火坑は美兎と額を合わせてから小さく笑う。つられて、美兎も笑った。
「……夢みたいです」
「僕もですよ……」
恋人になれるだなんて、思ってもいなかったから……ましてや、人間でなくとも大好きな相手と。その事実が受け止める気持ちが追いつかないでいたが、火坑がまたひとつ、美兎の額に口付けを贈ってくれる。その熱さに、美兎の頭が沸騰しそうになった。
「か、かかか、火坑、さん!?」
「ふふ。これくらいで驚いてはいけません」
もう一度口付けを額にされてから、火坑は美兎の隣に腰掛けて、肩を引き寄せられる。本当の恋人になったので、これくらい大したことがないように思われるだろうが、美兎には心臓が保たないと鼓動が速くなって行った。
足のこたつ以外にも、密着する熱さは元の猫のあやかしのせいか、今は人間だからか。どちらにしても、元彼とはなかった接し方の違いに戸惑う。しかし、不快には感じない。
「…………」
「美兎さん?」
美兎が黙ってしまっていると、火坑は顔を覗き込んできた。眩しい程のイケメンっぷりに急に恥ずかしくなって俯いてしまう。初対面の時はともかく、何故今もだが美兎と出かけてた時はこのイケメンの姿なのだろう。
「あの……沓木先輩達と、紅葉の時にお出かけしたじゃないですか」
「え、ええ……」
「なんで……そんなにもカッコよく変身してるんですか??」
「お嫌でしたか?」
「まさか!? えっと……カッコ良すぎて直視しにくくて」
思った言葉を口にして、失礼じゃないかとも思ったが。火坑は、少し苦笑いする程度だった。嫌がられていないのに、少しだけほっと出来た。
すると、火坑はわざとらしく咳払いをした。
「えっと……ですね」
「? はい?」
「美兎さんに好意を持っていただけるように、と。いくらか装いを変えたんです」
「え……じゃあ」
「はい。あのお出掛けの前くらいに、自覚出来たんです。美兎さんが好きだと」
あの時から。だから、意識してもらおうとわざわざ変身を麗しいものにしたんだと。理解は出来たが、美兎は少しだけ笑いが込み上げてきてしまい、くすりと笑ってしまう。当然、火坑には不思議がられた。
「あ……すみません。火坑さんの努力を笑ったんじゃなくて」
「はい?」
「そんなことしなくても……私、真穂ちゃんと契約した辺りで好きになっていたんです。だから、響也さんの姿でなくても、あなたが好きなんです」
「……そうでしたか」
火坑は触れ合うのが好きなのか、また美兎を抱きしめてくれた。
その後、お腹は火坑のおでんをイルミネーションの前に食べていたので空いていないが。簡単に夜食にしようと、火坑が響也の姿のまま台所に立つことになった。猫人のままだと、キスしづらいと言う少し気恥ずかしい理由で、そのままでいるらしい。
かっこいいが、意外と可愛い理由に美兎はますますときめいてしまう。その間に、美兎はイルミネーションの時に光った、サンタクロースからもらったクリスマスプレゼントを開けることにした。
条件は揃ったので、リボンも簡単にほどけたのだが。
開けた箱の中身は、綺麗なシルバーリングにチェーンが通されたネックレスがひと組入っていたのだ。
火坑と恋人になれた。それだけでも信じられないことなのに……今まさに、その彼が『香取響也』の姿で、美兎とキスをしている。彼の、自室で。
ただただ、触れ合うだけのキスを。それを何度か繰り返した後に、火坑は美兎と額を合わせてから小さく笑う。つられて、美兎も笑った。
「……夢みたいです」
「僕もですよ……」
恋人になれるだなんて、思ってもいなかったから……ましてや、人間でなくとも大好きな相手と。その事実が受け止める気持ちが追いつかないでいたが、火坑がまたひとつ、美兎の額に口付けを贈ってくれる。その熱さに、美兎の頭が沸騰しそうになった。
「か、かかか、火坑、さん!?」
「ふふ。これくらいで驚いてはいけません」
もう一度口付けを額にされてから、火坑は美兎の隣に腰掛けて、肩を引き寄せられる。本当の恋人になったので、これくらい大したことがないように思われるだろうが、美兎には心臓が保たないと鼓動が速くなって行った。
足のこたつ以外にも、密着する熱さは元の猫のあやかしのせいか、今は人間だからか。どちらにしても、元彼とはなかった接し方の違いに戸惑う。しかし、不快には感じない。
「…………」
「美兎さん?」
美兎が黙ってしまっていると、火坑は顔を覗き込んできた。眩しい程のイケメンっぷりに急に恥ずかしくなって俯いてしまう。初対面の時はともかく、何故今もだが美兎と出かけてた時はこのイケメンの姿なのだろう。
「あの……沓木先輩達と、紅葉の時にお出かけしたじゃないですか」
「え、ええ……」
「なんで……そんなにもカッコよく変身してるんですか??」
「お嫌でしたか?」
「まさか!? えっと……カッコ良すぎて直視しにくくて」
思った言葉を口にして、失礼じゃないかとも思ったが。火坑は、少し苦笑いする程度だった。嫌がられていないのに、少しだけほっと出来た。
すると、火坑はわざとらしく咳払いをした。
「えっと……ですね」
「? はい?」
「美兎さんに好意を持っていただけるように、と。いくらか装いを変えたんです」
「え……じゃあ」
「はい。あのお出掛けの前くらいに、自覚出来たんです。美兎さんが好きだと」
あの時から。だから、意識してもらおうとわざわざ変身を麗しいものにしたんだと。理解は出来たが、美兎は少しだけ笑いが込み上げてきてしまい、くすりと笑ってしまう。当然、火坑には不思議がられた。
「あ……すみません。火坑さんの努力を笑ったんじゃなくて」
「はい?」
「そんなことしなくても……私、真穂ちゃんと契約した辺りで好きになっていたんです。だから、響也さんの姿でなくても、あなたが好きなんです」
「……そうでしたか」
火坑は触れ合うのが好きなのか、また美兎を抱きしめてくれた。
その後、お腹は火坑のおでんをイルミネーションの前に食べていたので空いていないが。簡単に夜食にしようと、火坑が響也の姿のまま台所に立つことになった。猫人のままだと、キスしづらいと言う少し気恥ずかしい理由で、そのままでいるらしい。
かっこいいが、意外と可愛い理由に美兎はますますときめいてしまう。その間に、美兎はイルミネーションの時に光った、サンタクロースからもらったクリスマスプレゼントを開けることにした。
条件は揃ったので、リボンも簡単にほどけたのだが。
開けた箱の中身は、綺麗なシルバーリングにチェーンが通されたネックレスがひと組入っていたのだ。
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