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ぬらりひょん
第4話 ぬらりひょん・間半
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何故、界隈にいるのか……と聞きたくても、馬鹿のように開いた口が閉じれないでいた。そんな美兎の様子に、男性はにっこりと笑ってくれた。整ったロマンスグレーの顔立ちに、美兎は少しだけときめいてしまう。
「改めまして、座敷童子の一角を守護に持つお嬢さん? 僕は、あやかし達の総大将を担う存在。ぬらりひょんの間半が本性、真鍋は人間界での呼称さ」
「妖怪……さんなんですか?」
「うん、見た目はあんまり変わらないけど」
『ほら?』と持っていた扇子を開いてくれた。そして、美兎の目の前で扇子の上の部分にいくつもの赤くて小さな炎を灯したのだ。
「わぁ!?」
「今から、僕がメインでステージで披露するんだよ。この炎を使って……君も楽しめると思うよ?」
と言って、炎を消してから扇子を勢いよく畳む所作はかっこいいと思えた。
「! 楽しみです!」
「うんうん。サンタのあいつにも気にかけられた君なら、そう言ってくれると思ったよ」
「え? サンタクロース……さんが?」
「実は、君にプレゼントを投げた時に僕も一緒だったんだよ? あと、あいつも普段は人間界に紛れている」
「さ、サンタさんが??」
「君もよーく知ってるジジイだよ?」
「え……?」
まさか、いやそんなと思っても……美兎には三田しか思いつかなかった。今日は会わなかったが、間半がそう言うのであれば……思いつくのはやはり三田だけだ。彼が、サンタクロースの仮の姿だなんて、信じられない。しかし、妖怪達と関わってきた美兎には今の現実も受け入れている。
であれば、三田に直接聞いてもいいものか。来週の出勤の時に出会えたら、思い切って聞いてみようとは決めた。
「さてさて。僕の挨拶はこの程度に。そろそろ時間だから、君達は楽しんでいきなさい?」
そして、現れたのと同じように、さっと行ってしまったのだ。それに、彼が通るとあやかし達はすぐに道を開けていく。あやかしでも偉い存在だと、そんな扱いなのだなと理解は出来た。
「総大将にも気に入られたようね、美兎?」
ずっと隣にいた真穂はケラケラと笑い出した。
「そのようですね……?」
反対にいた猫人の火坑も関心していたように……見えた。何故か、少しだけ悶々としているようにも見えたからだ。
何か不機嫌にさせるようなことでもしたかと思ったが、美兎の様子に気づくと、彼はすぐに笑顔に戻ってくれた。気のせいか、と思うくらいにいい笑顔で。
「お待たせ致しましたー!! 第百回錦三イルミネーションイベント開催です!! 進行役はサルーテ店長の盧翔がお送りしますよー!!」
司会席の方を見れば、たしかに見覚えのある人影があった。ろくろ首であり、クリスマス前に雪女の花菜と結ばれたイタリアンレストランの店長。
知り合いがいると、不思議と安心感があった。
盧翔が意気込みの声を上げると、つられるように観客にいるあやかし達も大声を上げていく。イベントを楽しむのに人間もあやかしも関係はないのだな、と思えて。
ちらっと火坑を見ると……はしゃぎはしていないが楽しそうな雰囲気だったので良かったと思えた。
「さあ! 一番手!! 楽養の三番弟子であり……俺の恋人、雪女の花菜の吹雪イリュージョン!!」
『ええ~~!?』
花菜が出るだなんて知らなかったが、さらっと恋人宣言で牽制する辺り、盧翔のベタ惚れを目の当たりにするのだった。
そして、花菜が照れながらも白をメインとした雪女らしい着物で出て来た途端。歓声も静かになり、花菜も凛とした表情で中央に歩いていく。
盧翔が手を軽く振ったのが合図となったのか、花菜は両手を上に向けて……息を吹きかけたところから、氷の蔦が広がっていき、彼女を囲んでいった。
『おお!?』
氷の芸術品が出来上がり、黙っていた観客も声を上げて。次に花菜が息を吹きかけると、蔦の氷が砕けていき、ライトアップされてた光のお陰でダイヤモンドダストのようにキラキラと輝いた。
砕けた氷が粒々になって消えた後に、花菜は綺麗にお辞儀をしてからステージを下りた。
「前座が終了! 次は、我らが総大将。間半様のメインステージ!! 炎の演舞!!」
その声と同時に、炎の塊がステージの中央に出現したのだ。
「改めまして、座敷童子の一角を守護に持つお嬢さん? 僕は、あやかし達の総大将を担う存在。ぬらりひょんの間半が本性、真鍋は人間界での呼称さ」
「妖怪……さんなんですか?」
「うん、見た目はあんまり変わらないけど」
『ほら?』と持っていた扇子を開いてくれた。そして、美兎の目の前で扇子の上の部分にいくつもの赤くて小さな炎を灯したのだ。
「わぁ!?」
「今から、僕がメインでステージで披露するんだよ。この炎を使って……君も楽しめると思うよ?」
と言って、炎を消してから扇子を勢いよく畳む所作はかっこいいと思えた。
「! 楽しみです!」
「うんうん。サンタのあいつにも気にかけられた君なら、そう言ってくれると思ったよ」
「え? サンタクロース……さんが?」
「実は、君にプレゼントを投げた時に僕も一緒だったんだよ? あと、あいつも普段は人間界に紛れている」
「さ、サンタさんが??」
「君もよーく知ってるジジイだよ?」
「え……?」
まさか、いやそんなと思っても……美兎には三田しか思いつかなかった。今日は会わなかったが、間半がそう言うのであれば……思いつくのはやはり三田だけだ。彼が、サンタクロースの仮の姿だなんて、信じられない。しかし、妖怪達と関わってきた美兎には今の現実も受け入れている。
であれば、三田に直接聞いてもいいものか。来週の出勤の時に出会えたら、思い切って聞いてみようとは決めた。
「さてさて。僕の挨拶はこの程度に。そろそろ時間だから、君達は楽しんでいきなさい?」
そして、現れたのと同じように、さっと行ってしまったのだ。それに、彼が通るとあやかし達はすぐに道を開けていく。あやかしでも偉い存在だと、そんな扱いなのだなと理解は出来た。
「総大将にも気に入られたようね、美兎?」
ずっと隣にいた真穂はケラケラと笑い出した。
「そのようですね……?」
反対にいた猫人の火坑も関心していたように……見えた。何故か、少しだけ悶々としているようにも見えたからだ。
何か不機嫌にさせるようなことでもしたかと思ったが、美兎の様子に気づくと、彼はすぐに笑顔に戻ってくれた。気のせいか、と思うくらいにいい笑顔で。
「お待たせ致しましたー!! 第百回錦三イルミネーションイベント開催です!! 進行役はサルーテ店長の盧翔がお送りしますよー!!」
司会席の方を見れば、たしかに見覚えのある人影があった。ろくろ首であり、クリスマス前に雪女の花菜と結ばれたイタリアンレストランの店長。
知り合いがいると、不思議と安心感があった。
盧翔が意気込みの声を上げると、つられるように観客にいるあやかし達も大声を上げていく。イベントを楽しむのに人間もあやかしも関係はないのだな、と思えて。
ちらっと火坑を見ると……はしゃぎはしていないが楽しそうな雰囲気だったので良かったと思えた。
「さあ! 一番手!! 楽養の三番弟子であり……俺の恋人、雪女の花菜の吹雪イリュージョン!!」
『ええ~~!?』
花菜が出るだなんて知らなかったが、さらっと恋人宣言で牽制する辺り、盧翔のベタ惚れを目の当たりにするのだった。
そして、花菜が照れながらも白をメインとした雪女らしい着物で出て来た途端。歓声も静かになり、花菜も凛とした表情で中央に歩いていく。
盧翔が手を軽く振ったのが合図となったのか、花菜は両手を上に向けて……息を吹きかけたところから、氷の蔦が広がっていき、彼女を囲んでいった。
『おお!?』
氷の芸術品が出来上がり、黙っていた観客も声を上げて。次に花菜が息を吹きかけると、蔦の氷が砕けていき、ライトアップされてた光のお陰でダイヤモンドダストのようにキラキラと輝いた。
砕けた氷が粒々になって消えた後に、花菜は綺麗にお辞儀をしてからステージを下りた。
「前座が終了! 次は、我らが総大将。間半様のメインステージ!! 炎の演舞!!」
その声と同時に、炎の塊がステージの中央に出現したのだ。
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