74 / 204
ぬらりひょん
第2話『色々おでん』②
しおりを挟む
コンビニ以外でおでんを食べるだなんて、滅多になかった。
美兎の場合、学校給食で名古屋特有の『味噌おでん』でこんにゃくを初めて知り……そして、苦手以上に大嫌いな食材となってしまったのだ。
(うう……あのブニョブニョで粒々した模様!!?)
それを思い出すだけで、思わず鳥肌が立つくらい。味噌おでん全体を苦手にしているわけではないのだが、どうもゼリーよりも固くてザラザラとした食感がキノコを連想させるようで嫌いになったのだ。
ちなみに、キノコは椎茸が白和えで、こちらも保育園の給食で出てきてから見た目と口にした時の食感がこんにゃく以上にアウトだったのだ。
兄とかは平気でも、美兎は母に頼んでいつも除けてもらったくらいに。一人暮らしの今も、積極的に買うことはない。ただ、キノコ出汁のお味噌汁は飲めるようにはなってきた。
とにかく、美兎の顔に『こんにゃく嫌!』が出ていたのか、猫人の火坑にくすくすと笑われて……おでんの入った器を差し出された。
「大丈夫ですよ? 美兎さんが苦手なこんにゃくは取り分けませんので」
「……ほっ」
その言葉通り、差し出された陶器の器の中にはこんにゃくはなかった。代わりに、色とりどりの食材が入っていた。
(……うわ!!)
卵は茹で卵。
じゃがいもは中くらいのサイズが丸ごと。
牛すじ串も贅沢に二本。
大振りの骨つきウィンナーに、丸いはんぺんや結び昆布。ごぼう天にちくわぶ。
全部、美兎が好きなおでんの具材ばかりだった。芥子は別の小皿にて出してくれた。
「大将~、真穂にはこんにゃく欲しい~!」
そして、感動している横でこんにゃくをリクエストする真穂には、少々引いてしまった。たしかに、おでんにこんにゃくは必須食材とされている。欲しいと思う者は仕方がないだろう。
「はい。味噌ダレは使いますか?」
「肉味噌?」
「ええ。僕の手製ですが」
「……火坑さんの肉味噌」
「ふふ。試してみますか?」
「はい」
給食のは時間が経ってあまり美味しいとは思えなかったが。プロの、火坑のは違うと思っている。だからお願いすると、小鉢のような器に木製のスプーンを添えて差し出された。
見た目は、名古屋特有の赤味噌をベースにした挽肉入りの味噌ダレ。愛知の各家庭にある市販の味噌ダレと色合いは似ていた。試しに、そのままひと口スプーンで頬張ると……馴染み深い甘辛い味付けに加えて、豚ひき肉の旨味と油が堪らなかった。
「おいひー!」
美兎が味噌ダレを味わっている間に、真穂は真穂で既にそのタレを三角形のこんにゃくにつけて……もきゅもきゅと音を立てながら食べ進めていた。その食感を嫌悪している美兎にとっては引くくらい嫌な音だが……真穂の顔を見ていると、美味しそうに見えてしまう。
今までそんなことを思ったことがないのに、守護に憑いてくれた真穂は座敷童子の特徴的な子供の姿であるからか、どうも大人の姿の時よりも可愛く見えてしまう。その相乗効果のようなものだろうか。
だが、そう思えた進歩はあれど口にしようとは思えない。
とりあえず、手を合わせてからまずはタレをつけずにそのまま食べてみることにした。順番など特に決めていなかったが、まずはじゃがいもを。
「ほふ……あふ!?」
やはり、よく煮込まれたせいか、芯まで熱い。この間食べたドリア程ではなくとも、熱いことに変わりない。お出汁は薄めだから、関西風かもしれないが……適度な味わいに味噌ダレをつけずとも十分に美味しいおでんだった。だが、せっかくの味噌ダレを利用しないわけにはいかない。味噌ダレに合うのは、こんにゃく以外だと練り物が多い。
美兎ははんぺんではなく、ごぼう天に味噌ダレを少量つけて箸で口に運ぶ。思いっきり口に入れて、練り物のお出汁を吸った柔らかい食感とごぼう独特の歯応えに加えて……味付けした味噌ダレのハーモニーが堪らなかった。
甘味噌に肉の旨味。そこに魚の練り物の甘い味わいとごぼうの食感。全てが、バランス良く整えられて、給食の味噌ダレとはまったく違う味わいに美兎は虜になりそうだった。
思わずお酒を飲みたくなるが、この後火坑達と出かけるので飲めない。また次の機会に取っておこうと決めた。
美兎の場合、学校給食で名古屋特有の『味噌おでん』でこんにゃくを初めて知り……そして、苦手以上に大嫌いな食材となってしまったのだ。
(うう……あのブニョブニョで粒々した模様!!?)
それを思い出すだけで、思わず鳥肌が立つくらい。味噌おでん全体を苦手にしているわけではないのだが、どうもゼリーよりも固くてザラザラとした食感がキノコを連想させるようで嫌いになったのだ。
ちなみに、キノコは椎茸が白和えで、こちらも保育園の給食で出てきてから見た目と口にした時の食感がこんにゃく以上にアウトだったのだ。
兄とかは平気でも、美兎は母に頼んでいつも除けてもらったくらいに。一人暮らしの今も、積極的に買うことはない。ただ、キノコ出汁のお味噌汁は飲めるようにはなってきた。
とにかく、美兎の顔に『こんにゃく嫌!』が出ていたのか、猫人の火坑にくすくすと笑われて……おでんの入った器を差し出された。
「大丈夫ですよ? 美兎さんが苦手なこんにゃくは取り分けませんので」
「……ほっ」
その言葉通り、差し出された陶器の器の中にはこんにゃくはなかった。代わりに、色とりどりの食材が入っていた。
(……うわ!!)
卵は茹で卵。
じゃがいもは中くらいのサイズが丸ごと。
牛すじ串も贅沢に二本。
大振りの骨つきウィンナーに、丸いはんぺんや結び昆布。ごぼう天にちくわぶ。
全部、美兎が好きなおでんの具材ばかりだった。芥子は別の小皿にて出してくれた。
「大将~、真穂にはこんにゃく欲しい~!」
そして、感動している横でこんにゃくをリクエストする真穂には、少々引いてしまった。たしかに、おでんにこんにゃくは必須食材とされている。欲しいと思う者は仕方がないだろう。
「はい。味噌ダレは使いますか?」
「肉味噌?」
「ええ。僕の手製ですが」
「……火坑さんの肉味噌」
「ふふ。試してみますか?」
「はい」
給食のは時間が経ってあまり美味しいとは思えなかったが。プロの、火坑のは違うと思っている。だからお願いすると、小鉢のような器に木製のスプーンを添えて差し出された。
見た目は、名古屋特有の赤味噌をベースにした挽肉入りの味噌ダレ。愛知の各家庭にある市販の味噌ダレと色合いは似ていた。試しに、そのままひと口スプーンで頬張ると……馴染み深い甘辛い味付けに加えて、豚ひき肉の旨味と油が堪らなかった。
「おいひー!」
美兎が味噌ダレを味わっている間に、真穂は真穂で既にそのタレを三角形のこんにゃくにつけて……もきゅもきゅと音を立てながら食べ進めていた。その食感を嫌悪している美兎にとっては引くくらい嫌な音だが……真穂の顔を見ていると、美味しそうに見えてしまう。
今までそんなことを思ったことがないのに、守護に憑いてくれた真穂は座敷童子の特徴的な子供の姿であるからか、どうも大人の姿の時よりも可愛く見えてしまう。その相乗効果のようなものだろうか。
だが、そう思えた進歩はあれど口にしようとは思えない。
とりあえず、手を合わせてからまずはタレをつけずにそのまま食べてみることにした。順番など特に決めていなかったが、まずはじゃがいもを。
「ほふ……あふ!?」
やはり、よく煮込まれたせいか、芯まで熱い。この間食べたドリア程ではなくとも、熱いことに変わりない。お出汁は薄めだから、関西風かもしれないが……適度な味わいに味噌ダレをつけずとも十分に美味しいおでんだった。だが、せっかくの味噌ダレを利用しないわけにはいかない。味噌ダレに合うのは、こんにゃく以外だと練り物が多い。
美兎ははんぺんではなく、ごぼう天に味噌ダレを少量つけて箸で口に運ぶ。思いっきり口に入れて、練り物のお出汁を吸った柔らかい食感とごぼう独特の歯応えに加えて……味付けした味噌ダレのハーモニーが堪らなかった。
甘味噌に肉の旨味。そこに魚の練り物の甘い味わいとごぼうの食感。全てが、バランス良く整えられて、給食の味噌ダレとはまったく違う味わいに美兎は虜になりそうだった。
思わずお酒を飲みたくなるが、この後火坑達と出かけるので飲めない。また次の機会に取っておこうと決めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
121
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる