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サンタクロース
第6話 サンタクロースのソリ
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楽庵にて、ひと通りの馳走をあの猫人に振る舞ってもらった後。
深夜……もうまもなく日付が変わる直前に、サンタクロースは楽庵を出て界隈の端まで歩いていく。酒で気分も良くて、本当ならばこのまま帰宅したいところだがまだ大きな仕事が残っている。
ゆっくりと界隈と人間界の境目に行くと、とある人物が待ってくれていた。
「お疲れさんじゃのお、間半」
「まったくだよ、サンタ? あやかしである僕が君の真似事をするだなんてあちらに怒られるで済まないよ?」
「ほっほ? お前さんが楽庵に行けば、際限なく焼酎のボトルを開けるじゃろう?」
「はは、それは自覚している!」
サンタクロースほどではないが、銀髪に髭と渋めの顔立ち。そこにサンタクロースと似た衣装をまとっているとなんとも言えないコスプレ感を漂わせている。サンタクロース的には面白いが、これが人間でもあやかしでも子供らに『サンタ』だと認識して欲しくはない。
とは言え、サンタクロースは知人である彼にしか仕事を任せられなかった。
「とりあえず、土産は後で渡そう。最終仕上げと行こうじゃないか?」
「あのお嬢さんに向けてかい?」
「うむ。真穂が憑いているとは言え、怖い目に遭ったかもしれん。その記憶を少しでも上書きしてやろうとな?」
聖夜とは言われても、日本にとってはあまりキリスト教の信仰が薄い方なので聖夜とは言い難い。大抵は、イベントとして家族や友人、はたまた恋人同士との絆を深める云々……とにかく、サンタクロースの出身地である国とはだいぶ趣きが違うのだ。
たしかに、他国でも年々装いが変わっているが、そもそもの本質が違う。だが、それも世の移り変わりだとサンタクロースも受け入れている。
間半に預けていたものを受け取ると、小さなブリキのように出来ていたソリが、息を吹きかけるだけでトナカイも含めて大きくなった。巨体であるサンタクロースだけでなく、間半が乗っても充分なくらいの大きさに。
トナカイが身体を震わせたので、サンタクロースは労いを込めて二頭の背を撫でてやる。落ち着いてから、間半と一緒にソリへと乗り込んだ。
手綱を掴むと、トナカイらは地面を蹴り。
何度か蹴ってから、界隈の広小路通を駆けていく。巨漢に近いサンタクロースだけでなく、細身の間半もソリに乗っているのに気にしないで駆けて行くのだ。そして、行き止まりになる直前に空へと脚を伸ばして……飛んだ。
「おっほー!? やっぱり自分で運転するより気持ちが良いねー?」
あやかしであるのに、相変わらず子供のようなあやかしだ。昨日の晩にも、雪掻きで美兎の会社の前に特大の雪だるまを作るくらい。これが、日本のあやかしの頂点に近いところに位置する存在だとはとても思えない。
だが、今日の大半の仕事を肩代わりしてくれたのだから、これくらいでちょうどいいだろう。
「ほっほっほ! サンタクロースからの祝福をあげようじゃないか!!」
手綱を握ったまま両手を広げれば……薄緑のホタルのような光がサンタクロースの手からあふれて地上に降り注いでいく。川のように流れていき、まるで街路樹や建物のイルミネーションの光のように広がっていったのだ。
ソリを操りながら、サンタクロースは栄に向かう。そろそろ、美兎らが搬入を終えて帰宅する時刻だろうと踏んで。
実際に到着すれば、それらしい人間の影がデパートの建物の前でポツポツと散らばっていた。サンタクロースは人間ではないので、その影の中から美兎を見つけた。
「居たねえ? サンタ」
「そうじゃな?……湖沼さんには見えておるじゃろ」
実際、旋回して彼女に近いところの上空に行くと。美兎がぽかんと口を開けてしまった。そして、口が『サンタ?』と動いたのを見逃さない。
『メリークリスマス!!』
間半と叫んでから、サンタクロースは美兎に向けて光だけでなく小さな小箱を落とした。慌てて彼女は小箱を追い、キャッチしたのを見てからソリを操って……明日のクリスマス本番に向けての総仕上げのため、間半を連れて名古屋一帯の上空を駆けた。
深夜……もうまもなく日付が変わる直前に、サンタクロースは楽庵を出て界隈の端まで歩いていく。酒で気分も良くて、本当ならばこのまま帰宅したいところだがまだ大きな仕事が残っている。
ゆっくりと界隈と人間界の境目に行くと、とある人物が待ってくれていた。
「お疲れさんじゃのお、間半」
「まったくだよ、サンタ? あやかしである僕が君の真似事をするだなんてあちらに怒られるで済まないよ?」
「ほっほ? お前さんが楽庵に行けば、際限なく焼酎のボトルを開けるじゃろう?」
「はは、それは自覚している!」
サンタクロースほどではないが、銀髪に髭と渋めの顔立ち。そこにサンタクロースと似た衣装をまとっているとなんとも言えないコスプレ感を漂わせている。サンタクロース的には面白いが、これが人間でもあやかしでも子供らに『サンタ』だと認識して欲しくはない。
とは言え、サンタクロースは知人である彼にしか仕事を任せられなかった。
「とりあえず、土産は後で渡そう。最終仕上げと行こうじゃないか?」
「あのお嬢さんに向けてかい?」
「うむ。真穂が憑いているとは言え、怖い目に遭ったかもしれん。その記憶を少しでも上書きしてやろうとな?」
聖夜とは言われても、日本にとってはあまりキリスト教の信仰が薄い方なので聖夜とは言い難い。大抵は、イベントとして家族や友人、はたまた恋人同士との絆を深める云々……とにかく、サンタクロースの出身地である国とはだいぶ趣きが違うのだ。
たしかに、他国でも年々装いが変わっているが、そもそもの本質が違う。だが、それも世の移り変わりだとサンタクロースも受け入れている。
間半に預けていたものを受け取ると、小さなブリキのように出来ていたソリが、息を吹きかけるだけでトナカイも含めて大きくなった。巨体であるサンタクロースだけでなく、間半が乗っても充分なくらいの大きさに。
トナカイが身体を震わせたので、サンタクロースは労いを込めて二頭の背を撫でてやる。落ち着いてから、間半と一緒にソリへと乗り込んだ。
手綱を掴むと、トナカイらは地面を蹴り。
何度か蹴ってから、界隈の広小路通を駆けていく。巨漢に近いサンタクロースだけでなく、細身の間半もソリに乗っているのに気にしないで駆けて行くのだ。そして、行き止まりになる直前に空へと脚を伸ばして……飛んだ。
「おっほー!? やっぱり自分で運転するより気持ちが良いねー?」
あやかしであるのに、相変わらず子供のようなあやかしだ。昨日の晩にも、雪掻きで美兎の会社の前に特大の雪だるまを作るくらい。これが、日本のあやかしの頂点に近いところに位置する存在だとはとても思えない。
だが、今日の大半の仕事を肩代わりしてくれたのだから、これくらいでちょうどいいだろう。
「ほっほっほ! サンタクロースからの祝福をあげようじゃないか!!」
手綱を握ったまま両手を広げれば……薄緑のホタルのような光がサンタクロースの手からあふれて地上に降り注いでいく。川のように流れていき、まるで街路樹や建物のイルミネーションの光のように広がっていったのだ。
ソリを操りながら、サンタクロースは栄に向かう。そろそろ、美兎らが搬入を終えて帰宅する時刻だろうと踏んで。
実際に到着すれば、それらしい人間の影がデパートの建物の前でポツポツと散らばっていた。サンタクロースは人間ではないので、その影の中から美兎を見つけた。
「居たねえ? サンタ」
「そうじゃな?……湖沼さんには見えておるじゃろ」
実際、旋回して彼女に近いところの上空に行くと。美兎がぽかんと口を開けてしまった。そして、口が『サンタ?』と動いたのを見逃さない。
『メリークリスマス!!』
間半と叫んでから、サンタクロースは美兎に向けて光だけでなく小さな小箱を落とした。慌てて彼女は小箱を追い、キャッチしたのを見てからソリを操って……明日のクリスマス本番に向けての総仕上げのため、間半を連れて名古屋一帯の上空を駆けた。
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