62 / 204
サンタクロース
第2話 名古屋の大雪②
しおりを挟む
そのためには、是が非でも頑張らないといけないので……美兎は重い雪をスコップでトラックの近くまで運んでいく。
「おや、湖沼さん」
雪を運んでいたら、見覚えのある人物が雪をトラックに積む袋に入れていた。清掃員の三田である。朝っぱらから、しかも会社ではない場所で除雪作業とは少し驚きだった。
「三田さん!? お、おはようございます!!」
「おはようございます。わざわざ湖沼さん達まで、こんなところで除雪作業を?」
「三田さんこそ」
「はは。僕は清掃員ではあるんですが、うちの会社はここも契約先なもので」
「なるほど……」
とは言え、初老を越えた三田にはいつも以上に重労働に思えるのだが。しかし、三田は歳を感じさせないキビキビとした動きで、クレーンが引っ張り上げる袋へとどんどん雪を入れていったのだ。
それともう一つ。
三田ではないが、似たような年代の男性スタッフが鼻歌を歌いながら除雪作業を進めていた。鼻歌がうまいのも気になったが、除雪に慣れていない美兎よりもよっぽど戦力になるくらいに。
一瞬だけ目があったが、ついこの間界隈で出会った季伯に負けず劣らずなロマンスグレーの男性だった。季伯に比べるとチャームポイントが高めな彼は、美兎と目が合ったらウィンクしてくれたのだ。
少しびっくりしたが、見惚れててはいけないと美兎は田城を手伝うべく持ち場に戻った。
それから約二時間。美兎ら女性スタッフの労力は大したことはないが、三田や他の清掃員の男性らのお陰でデパートの搬入口や道路は確保が出来た。
終わってからは、若い方の清掃員が差し入れだと温かい缶のココアを持ってきてくれた。
受け取った時の温かさに、美兎もだが田城も蕩けそうになってしまう。
「あったか~い……」
「ほんと。頑張った甲斐があったね~?」
プルタブを開けて、ひと口飲んだら思わず溶けてしまいそうになったほど。
この後美兎らは、正午までは半休扱いなのでゆるやかに会社まで歩く予定だ。なにせ、今日の夜中の方が本番。ディスプレイや広告の変更などの雑務が待っている。
けれど、移動中に転けて怪我をしたら元も子もないので、ココアをゆっくり飲んでからスコップを業者に返して荷物を取りに行く。
ただ、移動前に三田にもう一度声をかけようとしたら……あの鼻歌を歌っていた男性と何かを話していた。三田と比較すると背丈もあり背筋もしっかりしている男性だ。
「美兎っち~、あのおじいちゃんスタッフかっこいいね?」
少々惚れっぽい田城までこう言うくらいだから、やはりあの男性は素敵に違いない。しかし、目的はきちんとしなくてはなので、三田の前に立つと二人とも美兎を見てくれた。
「お疲れ様でした。私はこれで」
「はい。お疲れ様です。僕らもあとで向かうので」
「重労働したのに、お疲れでは?」
「なーに? まだまだ若い子達には、おじさん達負けないよー?」
答えたのは三田ではなく、向かいの男性スタッフ。チャーミングな笑顔とウィンクに少しドキッとしたが、すぐに首を横に振ってからもう一度腰を折った。
「お疲れ様です。では、お先に」
「あ、そうそう。お姉ちゃん、西創の子だよね?」
「? はい?」
「僕は真鍋って言うんだけど……ちょっとだけお宅んとこにびっくりを届けておいたからよろしく!」
「? わかりました」
びっくりとはいったいなんなのか。少々気になったが、真鍋と名乗った彼が言う感じだと会社に行けばわかるのだろう。
美兎の荷物も確保してくれていた田城のとこに戻り、二人で転けないように地下道も使ってから会社に向かえば。
「えー!?」
「これって……」
会社の玄関口の脇にだが。
とてつもなく、大きくて精巧に出来ている雪だるまが立っていたのだ。美兎達も見上げてしまったが、他の社員達も通り過ぎずに写真をスマホなどで撮るくらい。
あのロマンスグレーな男性は、見た目を裏切らずにお茶目なんだなと理解出来た。かく言う、美兎らもついつい写真を撮ったのである。
「おや、湖沼さん」
雪を運んでいたら、見覚えのある人物が雪をトラックに積む袋に入れていた。清掃員の三田である。朝っぱらから、しかも会社ではない場所で除雪作業とは少し驚きだった。
「三田さん!? お、おはようございます!!」
「おはようございます。わざわざ湖沼さん達まで、こんなところで除雪作業を?」
「三田さんこそ」
「はは。僕は清掃員ではあるんですが、うちの会社はここも契約先なもので」
「なるほど……」
とは言え、初老を越えた三田にはいつも以上に重労働に思えるのだが。しかし、三田は歳を感じさせないキビキビとした動きで、クレーンが引っ張り上げる袋へとどんどん雪を入れていったのだ。
それともう一つ。
三田ではないが、似たような年代の男性スタッフが鼻歌を歌いながら除雪作業を進めていた。鼻歌がうまいのも気になったが、除雪に慣れていない美兎よりもよっぽど戦力になるくらいに。
一瞬だけ目があったが、ついこの間界隈で出会った季伯に負けず劣らずなロマンスグレーの男性だった。季伯に比べるとチャームポイントが高めな彼は、美兎と目が合ったらウィンクしてくれたのだ。
少しびっくりしたが、見惚れててはいけないと美兎は田城を手伝うべく持ち場に戻った。
それから約二時間。美兎ら女性スタッフの労力は大したことはないが、三田や他の清掃員の男性らのお陰でデパートの搬入口や道路は確保が出来た。
終わってからは、若い方の清掃員が差し入れだと温かい缶のココアを持ってきてくれた。
受け取った時の温かさに、美兎もだが田城も蕩けそうになってしまう。
「あったか~い……」
「ほんと。頑張った甲斐があったね~?」
プルタブを開けて、ひと口飲んだら思わず溶けてしまいそうになったほど。
この後美兎らは、正午までは半休扱いなのでゆるやかに会社まで歩く予定だ。なにせ、今日の夜中の方が本番。ディスプレイや広告の変更などの雑務が待っている。
けれど、移動中に転けて怪我をしたら元も子もないので、ココアをゆっくり飲んでからスコップを業者に返して荷物を取りに行く。
ただ、移動前に三田にもう一度声をかけようとしたら……あの鼻歌を歌っていた男性と何かを話していた。三田と比較すると背丈もあり背筋もしっかりしている男性だ。
「美兎っち~、あのおじいちゃんスタッフかっこいいね?」
少々惚れっぽい田城までこう言うくらいだから、やはりあの男性は素敵に違いない。しかし、目的はきちんとしなくてはなので、三田の前に立つと二人とも美兎を見てくれた。
「お疲れ様でした。私はこれで」
「はい。お疲れ様です。僕らもあとで向かうので」
「重労働したのに、お疲れでは?」
「なーに? まだまだ若い子達には、おじさん達負けないよー?」
答えたのは三田ではなく、向かいの男性スタッフ。チャーミングな笑顔とウィンクに少しドキッとしたが、すぐに首を横に振ってからもう一度腰を折った。
「お疲れ様です。では、お先に」
「あ、そうそう。お姉ちゃん、西創の子だよね?」
「? はい?」
「僕は真鍋って言うんだけど……ちょっとだけお宅んとこにびっくりを届けておいたからよろしく!」
「? わかりました」
びっくりとはいったいなんなのか。少々気になったが、真鍋と名乗った彼が言う感じだと会社に行けばわかるのだろう。
美兎の荷物も確保してくれていた田城のとこに戻り、二人で転けないように地下道も使ってから会社に向かえば。
「えー!?」
「これって……」
会社の玄関口の脇にだが。
とてつもなく、大きくて精巧に出来ている雪だるまが立っていたのだ。美兎達も見上げてしまったが、他の社員達も通り過ぎずに写真をスマホなどで撮るくらい。
あのロマンスグレーな男性は、見た目を裏切らずにお茶目なんだなと理解出来た。かく言う、美兎らもついつい写真を撮ったのである。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
あやかし酒場と七人の王子たち ~珠子とあやかしグルメ百物語~
相田 彩太
キャラ文芸
東京の中心より西に外れた八王子、さらにその片隅に一軒のひなびた酒場がある。
「酒処 七王子」
そこは一見、普通の酒場であるが、霊感の鋭い人は気づくであろう。
そこが人ならざるモノがあつまる怪異酒場である事を。
これは酒場を切り盛りする7人の兄弟王子と、そこを訪れる奇怪なあやかしたち、そしてそこの料理人である人間の女の子の物語。
◇◇◇◇
オムニバス形式で送る、”あやかし”とのトラブルを料理で解決する快刀乱麻で七転八倒の物語です。
基本的にコメディ路線、たまにシリアス。
小説家になろうでも掲載しています。
【完結】僕と先生のアヤカシ事件簿 〜古書店【眠り猫堂】で 小学生と女子高生が妖怪の絡む事件を解決します〜
馳倉ななみ/でこぽん
キャラ文芸
完結しました!
小学五年生のヒカルは、ちょっと怖いトラブルに巻き込まれがち。
幽霊や神さま、目には見えないあやかしに、油断していると手を引かれそうになる。
いつも助けてくれるのは、セーラー服を着た社会不適合者の女子高生、通称『先生』。
商店街の古書店を根城に、ほんのりホラーな事件を二人で解決していきます。
第一章『首吊り桜』
「学校の裏山にある桜の樹には決して近いてはいけないよ」
先生からそう言われていたのに、クラスメイトに巻き込まれて裏山に行ってしまったヒカル。直後から、後ろをつけてくる姿の見えない足音が聞こえる様になって……。
第二章『眠り姫の家』
ヒカルは3日連続で奇妙な夢を見ていた。誰もいない家の中のそこかしこから、誰かの気配がする夢だ。程なくして夢の中で同じ学校の少女と出会う。けれども彼女は、長い間夢から目覚めていないと言って……。
第三章『宇宙のリゲル』
ある日古書店に若い女性のお客さんが来る。彼女は母親との思い出の本を探しているのだと言う。タイトルは『宇宙のリゲル』。しかし店にあった本と、彼女の記憶の中の本とは別物で……。
第四章『シロと黒い水』
ヒカル達は三連休を利用して田舎の古民家へと旅行に来た。そこは不思議な伝説と不気味な雰囲気の漂う場所。胡乱な青年から貰った桃を食べた仲間が倒れてしまい、ヒカルは解毒薬を条件に『ちょっとした頼まれごと』をする事に……。
降りしきる雪をすべて玻璃に~大正乙女あやかし譚~
遠野まさみ
キャラ文芸
時は大正時代。
人ならざるものが視える子爵家の長女・華乃子は、その視える『目』により幼い頃から家族や級友たちに忌み嫌われてきた
実家に居場所もなく独り立ちして出版社に勤めていた華乃子は、雪月という作家の担当になる。
雪月と過ごすうちに彼に淡い想いを抱くようになるが、雪月からは驚愕の事実を知らされて・・・!?
自らの不幸を乗り越えて、自分の居場所を探して懸命に生きるヒロインのお話。
第5回キャラ文芸大賞にエントリー中です。よろしくお願い致します。
表紙イラスト:ひいろさま
タイトル文字:れっこさま
お二方、ありがとうございます!
こちら、あやかし移住就職サービスです。ー福岡天神四〇〇年・お狐社長と私の恋ー
まえばる蒔乃
キャラ文芸
転職活動中のOL菊井楓は、何かと浮きやすい自分がコンプレックス。
いつも『普通』になりたいと願い続けていた。ある日、もふもふの耳と尻尾が映えたどう見ても『普通』じゃない美形お狐様社長・篠崎に声をかけられる。
「だだもれ霊力で無防備でいったい何者だ、あんた。露出狂か?」
「露出狂って!? わ、私は『普通』の転職希望のOLです!」
「転職中なら俺のところに来い。だだもれ霊力も『処置』してやるし、仕事もやるから。ほら」
「うっ、私には勿体無いほどの好条件…ッ」
霊力『処置』とは、キスで霊力を吸い上げる関係を結ぶこと。
ファーストキスも知らない楓は篠崎との契約関係に翻弄されながら、『あやかし移住転職サービス』ーー人の世で働きたい、居場所が欲しい『あやかし』に居場所を与える会社での業務に奔走していく。
さまざまなあやかしの生き方と触れ、自分なりの『普通』を見つけていく楓。
そして篠崎との『キス』の契約関係も、少しずつ互いに変化が……
※ 土地勘や歴史知識ゼロでも大丈夫です。 ※ この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
蒼穹(そら)に紅~天翔る無敵皇女の冒険~ 三の巻
初音幾生
歴史・時代
日本がイギリスの位置にある、そんな架空戦記的な小説です。
一九四〇年九月、新米飛行士丹羽洋一は久しぶりの休暇で実家に帰る。戦争中とは思えない銃後の平和を堪能しているところに上司が家庭訪問にやってくる!
ついでに帝都に危機が迫る!
「小説家になろう」と同時公開。
第三巻全16話
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる