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雪女
第4話 座敷童子の甥
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カチコチに固まってしまった、コーヒーカップをどうすればいいのか美兎はわからずであたふたしてしまったが。
座敷童子の真穂が大袈裟なくらいため息を吐いたが、すぐに季伯を手招きして花菜の方に指を向けた。
「はい、お任せを」
季伯はゆっくりとあたふたしている花菜に近づき、凍っているコーヒーカップになんの躊躇いもなく両手で包み込んだ。
「!? あの……!」
「じっとしていてください」
「はい……?」
季伯の力強い言葉に、美兎もつられて固まってしまう。じっとしていると、季伯はぶつぶつと何かを呟いて集中しているようだ。
途端、季伯の手が触れているところから順に、氷が溶けていった。
「上出来よ、季伯?」
真穂だけ、ふふっと笑う声が静かに店内に響いていく。
美兎もだが、花菜も何故季伯が霜焼けになるどころか氷を溶かせることが出来たのかわからないでいた。溶けた氷は水になったがすぐに蒸発していったので、床が濡れることはなかった。
そして季伯は、カップをテーブルに置いてから改めて、花菜の両手を軽く握ったのである。
「虚ろわぬは、秘事の集い。纏うは月虹の衣。我が手に宿れ、この者宿れ……纏わせよ」
呪文のような言葉を紡いだ瞬間、花菜の手が青く光出して……光が消えた後には、薄い水色の手袋が花菜の手を包み込んでいた。
「これ!?」
「急拵えではありますが、氷結系を弾く手袋を創りました。効力は一日しかありませんので」
「あ、ありがとう……ございます」
「ほーんと。うちの季伯だから出来たんだから、今後は気をつけなさいよ? なんで無くしたの??」
「えっと…………栄に出た時に、野良猫がいて」
「…………触ろうとした時に、破かれたとか?」
「……はい。両手とも。無くしたと言ってすみませんでした!!」
「…………ま、いいわ。あんた小動物好きだもの?」
美少女に猫。
とても似合いだが、そう言う防御策がないと触れられないのは可哀想だ。
美兎も猫や犬は好きなので、触りたい気持ちはよくわかった。
きゅるるるるるるる
考えていたら、美兎もだが花菜からもお腹の音が大きく鳴り出して。
ついつい、季伯も含めて全員で笑い出した。
「そう言えば、美兎は夕飯まだだったものね?」
「……うん」
「私も……です」
「ご注文いただければ、大抵のものはお出し出来ますよ?」
「じゃ、美兎? 心の欠片出してあげるから。季伯に作ってもらいましょうよ?」
「うん!」
真穂に向けて両手を差し出し、ぽんぽんと軽く叩いてくれたら……出てきたのは木箱に入った明太子だった。
「これはこれは……!? パスタとライスだとどちらがいいでしょう?」
「ここはガツンと、明太子炒飯とかで!!」
「かしこまりました」
季伯は少し上機嫌になりながら、美兎の手にあった明太子の箱を持って奥に行ってしまう。
「季伯さんと親しいんだね?」
「あいつは、真穂の兄弟の子供だもの?」
「え、子供??」
「人間とあやかしの混血児なのよ。あの見た目でも、150年は生きているわ」
「へ、へー?」
驚いたが、真穂の見た目だととても伯母と甥の関係には見えなかった。
座敷童子の真穂が大袈裟なくらいため息を吐いたが、すぐに季伯を手招きして花菜の方に指を向けた。
「はい、お任せを」
季伯はゆっくりとあたふたしている花菜に近づき、凍っているコーヒーカップになんの躊躇いもなく両手で包み込んだ。
「!? あの……!」
「じっとしていてください」
「はい……?」
季伯の力強い言葉に、美兎もつられて固まってしまう。じっとしていると、季伯はぶつぶつと何かを呟いて集中しているようだ。
途端、季伯の手が触れているところから順に、氷が溶けていった。
「上出来よ、季伯?」
真穂だけ、ふふっと笑う声が静かに店内に響いていく。
美兎もだが、花菜も何故季伯が霜焼けになるどころか氷を溶かせることが出来たのかわからないでいた。溶けた氷は水になったがすぐに蒸発していったので、床が濡れることはなかった。
そして季伯は、カップをテーブルに置いてから改めて、花菜の両手を軽く握ったのである。
「虚ろわぬは、秘事の集い。纏うは月虹の衣。我が手に宿れ、この者宿れ……纏わせよ」
呪文のような言葉を紡いだ瞬間、花菜の手が青く光出して……光が消えた後には、薄い水色の手袋が花菜の手を包み込んでいた。
「これ!?」
「急拵えではありますが、氷結系を弾く手袋を創りました。効力は一日しかありませんので」
「あ、ありがとう……ございます」
「ほーんと。うちの季伯だから出来たんだから、今後は気をつけなさいよ? なんで無くしたの??」
「えっと…………栄に出た時に、野良猫がいて」
「…………触ろうとした時に、破かれたとか?」
「……はい。両手とも。無くしたと言ってすみませんでした!!」
「…………ま、いいわ。あんた小動物好きだもの?」
美少女に猫。
とても似合いだが、そう言う防御策がないと触れられないのは可哀想だ。
美兎も猫や犬は好きなので、触りたい気持ちはよくわかった。
きゅるるるるるるる
考えていたら、美兎もだが花菜からもお腹の音が大きく鳴り出して。
ついつい、季伯も含めて全員で笑い出した。
「そう言えば、美兎は夕飯まだだったものね?」
「……うん」
「私も……です」
「ご注文いただければ、大抵のものはお出し出来ますよ?」
「じゃ、美兎? 心の欠片出してあげるから。季伯に作ってもらいましょうよ?」
「うん!」
真穂に向けて両手を差し出し、ぽんぽんと軽く叩いてくれたら……出てきたのは木箱に入った明太子だった。
「これはこれは……!? パスタとライスだとどちらがいいでしょう?」
「ここはガツンと、明太子炒飯とかで!!」
「かしこまりました」
季伯は少し上機嫌になりながら、美兎の手にあった明太子の箱を持って奥に行ってしまう。
「季伯さんと親しいんだね?」
「あいつは、真穂の兄弟の子供だもの?」
「え、子供??」
「人間とあやかしの混血児なのよ。あの見た目でも、150年は生きているわ」
「へ、へー?」
驚いたが、真穂の見た目だととても伯母と甥の関係には見えなかった。
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