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ジョン
第4話『銀杏の茶碗蒸し』
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霊夢に勧められた茶碗蒸しを見る。
綺麗な翡翠色のような陶器の蓋には、持ち手に龍が形作られていた。割ったら大変、だと思うくらい高級そうなその持ち手にそっと手を添えて……持ち上げれば、熱い湯気が出てきた。それで火傷をすることはないが、とても美味しそうだ。
「うわぁ……!」
隙間なく、均一に綺麗に蒸されている茶碗蒸しとのご対面だ。『ス』と呼ばれる隙間も全くなくて、匙を入れてしまうのがもったいないくらいに。けれど、寒天寄せで余計に空腹が助長されてしまった、美兎のお腹はこれを食べたいと主張している。
隣にいる真穂と手を合わせてから、朱塗りの匙を手に取った。三つ葉が映えるくらい、美し過ぎる卵の表面。まるでプリンにも見えるが、湯気が立っているので違うはず。
匙ですくい、ぷるんと揺れる蒸された卵が匙の上で踊るようになった。少し息を吹きかけてから口に運ぶ。まだ熱いが火傷する程ではない。
つるんと口の中に入り、歯で軽く噛み砕けばほろほろと崩れていく。プリンとは違う、出汁のよく効いた味付けに塩加減。甘味も加わって、とても美味しい。
銀杏があると言っていたので探そうとしたら、次のひとすくいで見つかった。器よりもさらに翡翠色が強い実は、ホクホクとしていそうでとても美味しそうだ。口に入れれば、苦味が主張してきたがわずかな甘味で舌の上が落ち着いていく。これが卵と一緒に食べればなんとも言えない快感だ。
「どうだ?」
霊夢が口端を緩めていると、美兎は何度も首を縦に振った。
「とっても美味しいです! 銀杏もこんなに美味しかったんですね!?」
「そりゃ良かった。銀杏はこの界隈にあるイチョウ並木から採ったもんだが、悪くないだろ?」
「仕入れ……とかではないんですか?」
「場合によっちゃそうするが、この界隈で自然に成ってる実も美味いんだぜ?」
「さくらんぼとか山法師の木もあるわよ?」
「やまぼうし?」
「さくらんぼにちょっと似てる、良い木の実だ。締めの水菓子に出してやっから楽しみにしてな?」
「わぁ……!」
本当に、火坑の店とも違うが火坑が育っただけあって、よく似ていた。雰囲気とか料理の美味しさもあるが。
まだ、火坑に告白する勇気は持てないが……ここに来れて良かった。美味しい料理と優しい空気で癒されてしまう。だがふと、火坑の事を思い返してしまう。
半月以上、楽庵に行けていないが……どうしているのか気になるのだ。もうすぐクリスマスだが、美兎にはイルミネーションを一緒に見に行くなどと誘えない。
「ねーねー、美兎?」
真穂が茶碗蒸しを空にしてから、美兎の肩を揺すってきた。
「? なに?」
「せっかくだから、霊夢の大将にも心の欠片渡したら? 美味しく調理してくれるわよ?」
「お? 良いのか?」
「真穂が払ってもいいけど、せっかくだしねー?」
「うん」
たしかに、料金を気にしてなかったわけではないが使ってもらえるのなら差し出さないわけにはいかない。
美兎が両手を差し出せば、霊夢の柔らかい肉球のない黒い手でぽんぽんと叩かれた。
出たのは食材ではなく、小さな招き猫だったが。
「ほう? いい欠片だな?」
もう一度、霊夢が叩くと……美兎に手の上にカレイかヒラメのような魚が出てきた。
「せっかくの冬場だ? 唐揚げと餡掛けにしてやんよ?」
「わーい!!」
さらに温かいメニューに、美兎は思わず唾を飲み込んだ。
綺麗な翡翠色のような陶器の蓋には、持ち手に龍が形作られていた。割ったら大変、だと思うくらい高級そうなその持ち手にそっと手を添えて……持ち上げれば、熱い湯気が出てきた。それで火傷をすることはないが、とても美味しそうだ。
「うわぁ……!」
隙間なく、均一に綺麗に蒸されている茶碗蒸しとのご対面だ。『ス』と呼ばれる隙間も全くなくて、匙を入れてしまうのがもったいないくらいに。けれど、寒天寄せで余計に空腹が助長されてしまった、美兎のお腹はこれを食べたいと主張している。
隣にいる真穂と手を合わせてから、朱塗りの匙を手に取った。三つ葉が映えるくらい、美し過ぎる卵の表面。まるでプリンにも見えるが、湯気が立っているので違うはず。
匙ですくい、ぷるんと揺れる蒸された卵が匙の上で踊るようになった。少し息を吹きかけてから口に運ぶ。まだ熱いが火傷する程ではない。
つるんと口の中に入り、歯で軽く噛み砕けばほろほろと崩れていく。プリンとは違う、出汁のよく効いた味付けに塩加減。甘味も加わって、とても美味しい。
銀杏があると言っていたので探そうとしたら、次のひとすくいで見つかった。器よりもさらに翡翠色が強い実は、ホクホクとしていそうでとても美味しそうだ。口に入れれば、苦味が主張してきたがわずかな甘味で舌の上が落ち着いていく。これが卵と一緒に食べればなんとも言えない快感だ。
「どうだ?」
霊夢が口端を緩めていると、美兎は何度も首を縦に振った。
「とっても美味しいです! 銀杏もこんなに美味しかったんですね!?」
「そりゃ良かった。銀杏はこの界隈にあるイチョウ並木から採ったもんだが、悪くないだろ?」
「仕入れ……とかではないんですか?」
「場合によっちゃそうするが、この界隈で自然に成ってる実も美味いんだぜ?」
「さくらんぼとか山法師の木もあるわよ?」
「やまぼうし?」
「さくらんぼにちょっと似てる、良い木の実だ。締めの水菓子に出してやっから楽しみにしてな?」
「わぁ……!」
本当に、火坑の店とも違うが火坑が育っただけあって、よく似ていた。雰囲気とか料理の美味しさもあるが。
まだ、火坑に告白する勇気は持てないが……ここに来れて良かった。美味しい料理と優しい空気で癒されてしまう。だがふと、火坑の事を思い返してしまう。
半月以上、楽庵に行けていないが……どうしているのか気になるのだ。もうすぐクリスマスだが、美兎にはイルミネーションを一緒に見に行くなどと誘えない。
「ねーねー、美兎?」
真穂が茶碗蒸しを空にしてから、美兎の肩を揺すってきた。
「? なに?」
「せっかくだから、霊夢の大将にも心の欠片渡したら? 美味しく調理してくれるわよ?」
「お? 良いのか?」
「真穂が払ってもいいけど、せっかくだしねー?」
「うん」
たしかに、料金を気にしてなかったわけではないが使ってもらえるのなら差し出さないわけにはいかない。
美兎が両手を差し出せば、霊夢の柔らかい肉球のない黒い手でぽんぽんと叩かれた。
出たのは食材ではなく、小さな招き猫だったが。
「ほう? いい欠片だな?」
もう一度、霊夢が叩くと……美兎に手の上にカレイかヒラメのような魚が出てきた。
「せっかくの冬場だ? 唐揚げと餡掛けにしてやんよ?」
「わーい!!」
さらに温かいメニューに、美兎は思わず唾を飲み込んだ。
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