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第三章 綿ぼこりは癒し

第4話 看板娘

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 いやはや、人間でなくとも赤ちゃんの可愛さは恐るべしです。

 ちょっと可愛い服を着せただけで、ただでさえ可愛い沙羅さらちゃんがさらに可愛くなるのですから!!

 沙羅ちゃんはウサギのパーカーにあるフード……ウサ耳がついているところが気になったのか、くいくいと引っ張っています。その仕草だけでも、すっごく可愛いです!!

 賢也けんや君は、僕の横で関西人ぽくオーバーリアクションをしていましたが。


「……ただでさえ、美人の赤ん坊やのに!! この破壊力!!? さすがは、うちの看板娘やわ!!」

「そうですね!!」


 まだ出会って一週間程度ですが、沙羅ちゃんはもううちの立派な看板娘ですとも!!

 そして、沙羅ちゃんがくるんと振り返って、ちょうどフードを目深にかぶる仕草も……これが激カワと言うのでしょうか。めちゃくちゃ可愛いです!!

 動画サイトにはアップしませんが、記録として残したいくらいに!!


「あっはっは!! 今日は面白いことになってるね??」


 沙羅ちゃんを可愛い可愛いと連呼していたら、座敷童子の颯太ふうた君が来てくださいました。


「こんにちは、颯太君」

「……よぉ」


 そこそこ接点は増えましたのに、このふたりの相性は相変わらずのようです。


「やっほー? 可愛く着飾らせちゃってるけど……ケサランパサランなんだから、夏より冬の方がもっと似合うよ?」

「ほーん?」

「モコモコフリースとかですか??」

「そうそう。毛並み……こっちの本体がボフっとなるから可愛いんだ~。僕らあやかしの間だと、冬はレンタル騒ぎが凄いくらい」

「……沙羅はお前んだったんか?」

「うん、一応」


 なのに、沙羅ちゃんが僕を主人として認識したために……颯太君から離れてしまった。それは、良い事なのでしょうか?

 僕が少し不安になると、颯太君は僕のところに来ていつもの扇子で軽く腕を叩きました。


「?」

「いいんだって。ケサランパサランが自我を持つ前後だったし、柊司しゅうじ君がいいって沙羅が選んだんだから。ケサランパサランは一個体じゃなくて、種族だし……他のあてはあるから心配しないで?」

「……ありがとうございます」


 いけません、僕はもうひとりではないとわかっても……大切な誰かがいきなりいなくなる事態は、もう嫌なんです。

 あれから随分と経つとは言え……僕は、未だに忘れられない。

 事故をきっかけに、遺体ごと消えたかもしれないと言われた……実の姉である女性を。

 僕は、目の前で失ったのだから。


(………………姉さん……)


 エスプレッソマシーンの向かいの棚にある、ひとつの写真立て。

 そこに、賢也君と僕がまだ高校生だった時の写真があります。中央には、僕とよく似た女性……僕の最愛の姉である人が写っていますが。

 彼女は……もうこの世にはいないんです。
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