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第三章 綿ぼこりは癒し

第1話 柊司達の朝

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 僕の起床は……すごくではないですが、そこそこ早いです。

 携帯のアラームを5:30にセットしてあるので……以前だったら、鳴りっぱなしでお布団から出たくないとうじうじしていましたが……最近は違います。

 僕の自宅には、天使ちゃんが来たからです。


「……うー」


 お店とは違う、ベビーベッドが僕のベッドの横にあります。そっと起き上がって覗き込めば、天使ちゃんことケサランパサランの沙羅さらちゃんが……本当に天使みたいな寝顔で寝ていました。

 未だに、この赤ちゃんが人間ではなく妖怪ちゃんとは思えません。と言っても、僕や賢也けんや君の前で手品のように大きくなったのは、バッチリと見ましたが。

 とりあえず、起こさないようにベッドから出て……まずは、軽く身支度。朝ご飯はしっかり食べなくては、と僕は思っているので今日の気分は目玉焼きトースト。

 五枚切りの厚さがある食パンの上に……マヨネーズをぐるっとふちに沿うように絞り、その中央に卵一個を落とします。白身が広がりにくいので、お箸で調整。

 これに少し堅めのチーズを細長いブロック状に切り、マヨネーズの壁の内側に並べていきます。こうすると、白身がマヨネーズの外に出ていこうとするのを抑えてくれます。これは、昔の知り合いに習ったんですよね??


「ブラックペッパーと岩塩も軽く」


 あとはこれをトースターで焼くだけ。時間とか温度はだいたいで。

 この間に、自宅用の電動ミルで冷凍庫で保管しているモカブレンドの豆を挽き……モーニングコーヒーを淹れていると、沙羅ちゃんが起きちゃうんですよね??


「……あう??」


 ころん、と起き上がって目をこしこしする姿も本当に、天使です!!

 僕の養女むすめちゃんは今日も最高に可愛いですよ!!


「おはようございます、沙羅ちゃん」

「あう! うー」


 僕が呼ぶと、くるんと振り返ってきて……これまたとろけるような笑顔を向けてくださいます!! 本当に……天使ちゃんですよ!!


「沙羅ちゃんの朝ご飯には……僕のモーニングコーヒーの豆カスでいいですかね? ちょうどモカブレンドですし」

「あう!!」


 嬉しいのか、手足をバタバタさせてくれました。飲むコーヒーについては好き嫌いがあまりないようですが、豆カスについては好みが色々あるようです。座敷童子の颯太ふうた君の推測が当たれば……乳離れ以上にカス離れをすれば、普通の食事も出来るらしいですが。

 とりあえず、今の沙羅ちゃんの好みを尊重しましょう!!



 チーン!!



 トースターもちょうど鳴りました。中を確認すれば、しっかりと黄身まで焼けた目玉焼きトーストの完成です!!

 沙羅ちゃんのご飯である豆カスをお皿に入れて、追加でソーセージや茹でブロッコリーにもフライパンで焼き目をつけて……僕の朝食も出来上がりました。

 沙羅ちゃん用に買った、ベビーチェアをテーブル前にセッティング。沙羅ちゃんを抱っこして座らせれば……ご飯である豆カスがまだかまだかと、待ってくださいます。

 僕は自分のご飯をセッティングしてから、沙羅ちゃんの前にお皿を置いてあげました。


「では……いただきます」

「んまー!」


 沙羅ちゃんは言葉を話せませんのに、それらしい声を上げてくださいますよ?

 スプーンで豆カスを食べさせれば……本当に、人間のご飯と同じように食べてくださいます。僕のコーヒー用に出たカスは綺麗に食べてしまい、食後にと取り分けておいたぬるめのコーヒーの方も、ストロー付きコップで美味しそうに飲んでくださいます。


「んん~!!」


 沙羅ちゃんのご飯をひと通りあげてから、僕も朝ご飯を。ちょっと冷めてしまいましたが、カリッカリに焼けたトーストと、焦げたマヨネーズにチーズの風味がたまりません!!

 目玉焼きは黄身がほんのちょっと、半熟部分がねっとりしていますが……塩胡椒で味付けした部分にマッチしていますよ!!

 油分多めですが……立ち仕事していますし、基本的にひとりでお店を切り盛りしているので。しっかり体力つけませんと!!


「……あう」


 僕がトーストをあと少しで食べ終えてしまうところで、沙羅ちゃんが僕のパジャマの裾をくいくいと引っ張ってきました。


「どうされました??」

「……ぁう」

「これですか??」

「あう!」


 僕のトーストに興味を持って下さったようです。

 食べかけですが、僕が口にしたところ以外を分けてあげてみたのですが……口に入れてすぐに、離乳食のように口から出してしまいました。美味しくなかったようです……。


「……興味はあるんですね??」


 なら、今日は試したいこともあったので、それを沙羅ちゃんにも出してあげましょう!!
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