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第二章 綿ぼこりの好み
第2話 豆の好み
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赤ちゃんとしての知識を与えたわけではありませんが、行儀よく太いストローからアイスコーヒーを麦茶のように飲んでいく姿は大変可愛らしい。
見れば見るほど……沙羅ちゃんは大変可愛らしいです。ぷくぷくのぷにぷにのほっぺもですが、肌はとても白くて柔らかく。
コーヒー豆のカスを食べたことで色が決まった髪と目は綺麗なコーヒー色。色素の薄い方とか、国際結婚が度々あるのでこの色はお客様達からもあまり不思議がられません。
ただ、もし学校に行く年齢になったら……多少の差別化はあるかもしれません!! お父さんになった僕は、全力で沙羅ちゃんをフォローしますよ!!
さておき、とりあえず彼女のご飯です。
用意しましたのは、昨夜から仕込んで置いて冷え冷え状態だった水出しコーヒーの豆カスです。片方がキリマンジャロ。もう片方はモカブレンドです。
モカの方は年々輸出量が減っているらしく、ブレンドが多いですが……また最近になって少しずつ生産が増えている模様。日本人の好みだと酸味より甘味を好む傾向が強いので、ブラジル産のよりもモカや、ちょっと深煎りのキリマンジャロが好まれます。
夏で、長野でも随分と日差しが強くなってきたため……『双樹』でも二種類の水出しコーヒーを用意するようにしたんです。
風味もお湯で淹れた時と違うんですが、雑味が少なく飲みやすい。冷やしたままでも、湯煎でホットにしても同じく。直火で温めると風味が飛んでしまうのでオススメしません。
とりあえず、沙羅ちゃんが来る前から破棄だけしていたコーヒー豆のカスを、とりあえず小皿に少量取り分けました。
手で食べるのはまだまだ無理そうだったので、お客様がお見えにならないのを見計らってから、僕がティースプーンで食べさせてあげます。
「はい、あーん?」
「あー」
沙羅ちゃんは僕の言うことがわかるからか、出来るだけ大きく口を開けてくださいました。口の中を見ても、まだ乳歯は特にありません。
けど……もぐもぐ出来るんですよね??
先にモカブレンドの方をあげますと、沙羅ちゃんはほっぺをピンク色に染め、両手をバタバタしてくださいました。
「美味しいですか??」
「う!」
「もうひとつも食べてみますか??」
「うー!!」
けど、モカブレンドの方が好みだったのか、キリマンジャロにはあまりいい反応をしませんでした。深煎りでしたし、多少酸味が強かったかもしれません。
「……ほんま、食っとるなあ?」
賢也君が来てくださったので、僕は豆カスを隠すことなく続けて沙羅ちゃんに食べさせました。
「はい。モカブレンドの方が好みらしいです」
「ブラックやけど……甘い方が好きなんは赤ん坊やからか??」
「多分ですけど……キリマンジャロはあまりお好みではないようです」
「ほーん? 飲ませとんのは??」
「あ……キリマンジャロでした」
「豆とコーヒーやと好み分かれるんやな?」
「う?」
もぐもぐと豆カスを食べている沙羅ちゃんが賢也君に気付きました。
じーっと彼を見つめていると、賢也君は苦笑いされてから沙羅ちゃんの頭を撫でてくださいました。
「ま。食費が無駄にかからんとええんちゃう? コーヒー好きな赤ん坊とか珍しいけど」
「そうですけど……」
沙羅ちゃん、離乳食は全部突き返すくらい口に合わなかったんですよね??
自宅で僕と賢也君があーだこーだと考えていたら、床にうっかり落とした市販のドリップコーヒーの豆をお菓子のように食べたので……。
見た目は、ほとんど人間の赤ちゃんですがやっぱりこの子は人間ではないのだと実感しました。
あと、今は見せていませんが……自宅だとたまに宙に浮くんですよね? 毛玉だった時みたいに……あれは僕でもヒヤヒヤしましたとも!!
見れば見るほど……沙羅ちゃんは大変可愛らしいです。ぷくぷくのぷにぷにのほっぺもですが、肌はとても白くて柔らかく。
コーヒー豆のカスを食べたことで色が決まった髪と目は綺麗なコーヒー色。色素の薄い方とか、国際結婚が度々あるのでこの色はお客様達からもあまり不思議がられません。
ただ、もし学校に行く年齢になったら……多少の差別化はあるかもしれません!! お父さんになった僕は、全力で沙羅ちゃんをフォローしますよ!!
さておき、とりあえず彼女のご飯です。
用意しましたのは、昨夜から仕込んで置いて冷え冷え状態だった水出しコーヒーの豆カスです。片方がキリマンジャロ。もう片方はモカブレンドです。
モカの方は年々輸出量が減っているらしく、ブレンドが多いですが……また最近になって少しずつ生産が増えている模様。日本人の好みだと酸味より甘味を好む傾向が強いので、ブラジル産のよりもモカや、ちょっと深煎りのキリマンジャロが好まれます。
夏で、長野でも随分と日差しが強くなってきたため……『双樹』でも二種類の水出しコーヒーを用意するようにしたんです。
風味もお湯で淹れた時と違うんですが、雑味が少なく飲みやすい。冷やしたままでも、湯煎でホットにしても同じく。直火で温めると風味が飛んでしまうのでオススメしません。
とりあえず、沙羅ちゃんが来る前から破棄だけしていたコーヒー豆のカスを、とりあえず小皿に少量取り分けました。
手で食べるのはまだまだ無理そうだったので、お客様がお見えにならないのを見計らってから、僕がティースプーンで食べさせてあげます。
「はい、あーん?」
「あー」
沙羅ちゃんは僕の言うことがわかるからか、出来るだけ大きく口を開けてくださいました。口の中を見ても、まだ乳歯は特にありません。
けど……もぐもぐ出来るんですよね??
先にモカブレンドの方をあげますと、沙羅ちゃんはほっぺをピンク色に染め、両手をバタバタしてくださいました。
「美味しいですか??」
「う!」
「もうひとつも食べてみますか??」
「うー!!」
けど、モカブレンドの方が好みだったのか、キリマンジャロにはあまりいい反応をしませんでした。深煎りでしたし、多少酸味が強かったかもしれません。
「……ほんま、食っとるなあ?」
賢也君が来てくださったので、僕は豆カスを隠すことなく続けて沙羅ちゃんに食べさせました。
「はい。モカブレンドの方が好みらしいです」
「ブラックやけど……甘い方が好きなんは赤ん坊やからか??」
「多分ですけど……キリマンジャロはあまりお好みではないようです」
「ほーん? 飲ませとんのは??」
「あ……キリマンジャロでした」
「豆とコーヒーやと好み分かれるんやな?」
「う?」
もぐもぐと豆カスを食べている沙羅ちゃんが賢也君に気付きました。
じーっと彼を見つめていると、賢也君は苦笑いされてから沙羅ちゃんの頭を撫でてくださいました。
「ま。食費が無駄にかからんとええんちゃう? コーヒー好きな赤ん坊とか珍しいけど」
「そうですけど……」
沙羅ちゃん、離乳食は全部突き返すくらい口に合わなかったんですよね??
自宅で僕と賢也君があーだこーだと考えていたら、床にうっかり落とした市販のドリップコーヒーの豆をお菓子のように食べたので……。
見た目は、ほとんど人間の赤ちゃんですがやっぱりこの子は人間ではないのだと実感しました。
あと、今は見せていませんが……自宅だとたまに宙に浮くんですよね? 毛玉だった時みたいに……あれは僕でもヒヤヒヤしましたとも!!
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