【完結】現代もふもふあやかしは、意外にもブラックコーヒーがお好き

櫛田こころ

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第一章 綿ぼこりはきっかけ

第1話 半地下のコーヒーショップ

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 長野県某地域。

 僕が今いるのは、駅前の雑居ビルの半地下一階。

 半地下と言うのは、裏通りにあるからなんですけどね?

 お店の広さは大しておおきくはありませんが、カウンターが数席。厨房設備は普通……けど、ひときわ大きく目立つのは業務用のエスプレッソマシーン。

 僕にとっては大事な大事な相棒です。選んだのは、お店のオーナーと一緒だったんですが。

 店の内装などの色は基本的にモノトーンに近い。夜はBARのようにお酒を扱うため、可愛いよりもシックな路線でいこうとオーナーがデザイン案を提出するときに言い出したからです。けど、ロゴとかは少し可愛らしいので、僕の要望も取り入れてくれました。

 あと、開店中にはわかりやすいように白の暖簾を出すのも。洋物ばかりの店構えに合わないように見えますが、意外としっくりきました。ちょっとラーメン屋もしくは、和菓子屋と間違えられたのは一度や二度ではありません……。


「ん~!! 今日もいい天気ですね……」


 お店の開店は、コーヒーショップなどでは少し遅めですが朝の十時。しかし、夜もそこそこ遅い時間まで営業していますのでご勘弁を。

 店内の朝の掃除と、コーヒー豆やマシンのチェックに軽食用の仕込みをいくらかしていたらあっという間。オーナーもいますが、基本的に店は僕ひとりで切り盛りしているんです。

 看板を出し、暖簾を引っ掛けてから開店。

 場所柄、すぐにお客様はいらっしゃいませんが……十一時前くらいにはちらほら。主にテイクアウト のお客様ですが、これからお昼ご飯のお供にと電車に乗られるために来ていただけるのです。

 決して、すごく大きい駅ではありませんが東京行きの特急電車に乗る時間はそこそこ長いので……ショートかロングのサイズどちらも、ぼちぼち頼んでいかれます。特に女性客には豆乳を使ったソイラテのロングが多いですね?

 十二時過ぎからは、ランチと言うより軽食とコーヒーを楽しんでいかれるお客様がいらっしゃいます。時々うちのオーナーも来ますが、だいたいは駅ビルか表通りの飲食店を経営されているところの店長さん達もいらしてくださいます。

 ありがたいことに、コーヒーをメインに扱ううちの店の方が断然味が良いと言ってくださるんです。腕が鳴るものですよ。

 コーヒーショップ、もしくはそこそこのマシンを取り扱うお店は駅中にもあるのですが……それでも、比較的最近オープンしたうちの方が良いと言ってくださいます。ありがたいことです。


「……夏は結構涼しいですね?」


 僕は、訳あって長野県に来た人間ですが……元から居た場所に比べると、湿気はありますが風は涼しく意外と過ごしやすい。

 この土地が標高が高い場所だからと、オーナーの彼も言っていました。たしか、800mはあると言っていたような……。なので、登山者のお客様も結構いらっしゃるのです。


「今日も頑張りましょう!」


 一日はこれから、未だ長い!

 夜のおつまみメニューの試作もしつつなので、やることはたくさんあります!

 と、大きく深呼吸をしてからお店の中へ戻ろうとすると……大きな毛ぼこりのような、たんぽぽの綿毛の集合体のようなものが飛んできたので……思わず、壊さないようにキャッチしてしまいました。
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