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第44話 天神様と解体

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 とりあえず、この惨状だけは片付けなくてはいけないからと。

 自己紹介とかはひとまず置いておいて……彼らと手分けして火葬しやすいように何ヶ所かに集めていく。

 ただ、『豚もどきオーク』と言う魔物については、小柄な男性が何故か解体を始めたのだ。


「……何をするんですか?」


 私は気になって声をかけると、男性は一瞬目を丸くしたが……すぐに自前らしいナイフに指を向けた。


「……肉。オーク、の肉は……普通食」

「…………食べられる、んですか?」

「む? 知らない?」

「……生憎と」


 家畜でない肉を食べたことは……ないと言い切れない。

 前世はともかく……シトゥリにいた頃の宿屋で出された肉料理は、どれもこれも美味しいものだったが。まさか……魔物の肉である可能性があったのでは?

 トビトは他の処理に回っていたので、こちらの会話は聞こえていないようだ。


「……美味しい。……ものに、よるけど。脂身が多いと尚」

「……僕にも、解体教えてもらえます?」

「む。……あちらは出来ない?」

「生憎と。魔物の肉をあんまり食べてこなかったので……討伐証拠取った以外は普通に焼きました」

「……わかった。これ、貸す」


 と、彼……リクターと名乗ってくれた小柄な男性は、皮の剥ぎ方から肉の必要部位まで……きちんと私に教えてくれたよ。討伐証拠を取る以外の……あまり感じたくなかった、肉を裂く感触は最初不快だったが。

 前世……日本の現世にて、元飼い猫が何度か見せてくれた……猪肉のように美しい肉の塊が出来上がると。えも言えない達成感を覚えた。

 決して、暴食してはいけないことだが……精霊でも命を受け止めることがある。そのひとつが食事なのだから……元飼い猫が言っていたように、感謝して食さねば。

 必要でない部分は、私がリクターとは別に『火将かしょう』で焼却をし……次は、串焼きを作るのを手伝うことに。

 どうやら……彼らは食事前だったらしい。

 私達も、そろそろ食事をしようと思っていたので都合が良かった。


「こう……ですか?」

「そう。しっかり、塩……塗りつけて、余分な水……抜く」

「味付けじゃないんですね?」

「味付けは……あと」


 きちんと料理をした経験がないので、なんとも新鮮な感じだ。

 塩を塗りつけて少し待つと……たしかに、余分な水が出てきたよ。これを布で拭き取り、次に味付け用の塩と胡椒をきつめに振りかける。

 濃いめにしないと、肉の旨みに負けるからだと。なかなかに勉強になったね?

 ぶつ切りに切った肉を……リクターと一緒に串に刺していると、トビトがこちらに来たよ。


「……なにを?」

「ご飯作りの手伝いだよ。トビトもやってみる? 勉強もなるよー」

「……では」

『ぼ……く、も』


 疲れて休んでいたフータも手分けして作業に入ったことで……リクターが思っていた以上に、食事の準備が早く終わったそうだ。


「……手際、良い。次は……ひとりで出来そう」

「ありがとうございます」


 たしかに、ずっと彼らといるわけじゃないから……自炊を覚えるのは大事だからね?
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