上 下
39 / 99

第39話 天神様と移動手段

しおりを挟む
 蔓が多く、茎や花びらに巻きついている姿。

 私達は、シトゥリでそこそこ採取の依頼をこなしてきたが……全く見たことがないものだったね?

 鞄に、一応これまで採取した一部をリーンに見せたが……彼女には首を左右に振られた。


「怪我……がね。そこから……病気になって。変な……模様になっていくの。だから……村長さんに聞いたら、これだって絵を見せてもらったの」

「そっか。上手だね」

「絵は得意!」


 と言うことは、文字は幾分か苦手なのだろうか?

 それはともかく、トビトらの後始末が終わったところで……私は此度も殺生してしまった魔物らに祈りを捧げた。

 リーンには、不思議そうな顔をされたがね?


「魔物でもね? 生きていたものなんだよ。天国へは行けなくても……ちゃんと生きたものへの祈りは大事だって、僕は思うんだ」

「そうなの?」


 まだ子供だから、難しい部分はわからなくて当然だ。

 だから、私は彼女の頭を撫でて……大丈夫だと笑うだけにしておいた。


「とりあえず、君の依頼だね? どこに生えているか……わかる?」

「うん、と……水辺だって村長さん言ってた」

「たしかに……この先に水のある場所が見えますな」


 さすがはトビト。頼もしい限りだ。

 フータは浮くことが出来るのと、子供の足ではゆっくりとなってしまうので……フータに少し大きくなってもらってから、リーンを乗せて移動することにした。フータも経験値? とやらを得たことで、出来ることが増えたのだよ。

 大きさも、今なら私くらいなら乗せられるほどだ。だから、私より軽いリーンなら余裕だろう。


「すご~い!」

『あん、まり……動かない、でね?』

「うん!」


 移動の不便を解消しても、いつもの速さではリーンを落とすことがあるだろうと。少し速足程度の速さで水辺があるところへ向かうことにした。


(う~ん……魔物の気配は無さそうだが)


 先ほど、いきなりワーウルフの集団に囲まれた危険性がある森。

 世界樹に、私やトビトらは大丈夫だと言ってもらえたが……ここに、リーンが加わるといつもと訳が違うのだ。

 護りながら、どこまで戦えるか……いきなり遭遇することもあるだろうし、慎重に向かわねば。

 トビトに目配せすると……本当に頼もしい相棒は、私の心配を察したのかゆるく笑ってうなずいてくれたよ。

 元から気づいていたかもしれないが、流石だね。


「む。水の匂いがしますな」


 そのトビトから、さらに頼もしい言葉をもらえたよ。


「近いってことだね。急ぎ過ぎても危ないし、慎重に向かおう」

『う……ん!』

「お兄ちゃん……見えないのに、わかるの?」

「少し……俺は特殊だからな」


 と言うより、リーン以外全員が精霊だと言われても……子供には信じられないだろう。

 とにかく、薬草……リーンが言うには、『快癒草』と言うものが手に入るのが近いはず。

 けれども、慢心してはいけないので……やはり、慎重に足を動かすことにしたよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...