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第34話 天神様と連絡手段②
しおりを挟む『まずは、こちらをあなた方に』
世界樹が私に向けた手のひらから……髪や目と同じ、綺麗な赤色の球を出現させた。
ビー玉よりももう少し……水晶球のように大きいね?
私に持つように差し出すので、私はすぐにそれを受け取った。
「これは?」
『通信機……と、あなたのいた世界では言うのでしょうか? 聖樹石を得たあとに……次の目的地を私がそれを介して伝えます。それ以外にも、聖樹石への導きも……徐々に出来るはずです。まだ、今はひとつしか得ていないので私の力も、万全ではないので』
「ふぅむ」
いやいや、それだけでも充分に素晴らしい代物だが。
世界樹としては、もう少し可能な機能を増やしたいのだろうが。
日本とかで言うところの……携帯などで多かったGPSとやらを搭載したいのは、すぐには無理だとしても。
これはこれで、世界樹との連絡手段が出来たのだから……非常にありがたい。
『ひとまず。次の目的地ですね? 次は、ここから先に群生する……魔の森とも呼ばれる場所です。ギルドでは止めに入られるかもしれませんが、あなた方であればきっと大丈夫でしょう』
「……なかなかに、厳しい場所なんだね?」
字面だけ聞けば、邪気などが溜まっているような場所だと思うが……私は今、冒険者なのだ。トビトやフータもいる。殺生も……経験してしまったのだ。後戻りは出来ないし、受け入れる覚悟も……とうにしたのだ。
とは言え、エディトらには……おそらく、行くのを止められそうな場所だが。
『元は神であった、ミザネであれば可能でしょう。ご武運を祈っております』
それを最後に……光を消して、世界樹は異空間を解いて……自身も姿を消した。
止まっていた時間も動いたのか、こぽぽ……と店主がコットを淹れる音が再び聞こえてきたよ。
さらに、私達はいつの間にか元の席に腰掛けていた。
「……世界樹の仕業だね?」
「……お、おそらく」
『す、ごーい!』
小声でやり取りしてから……私達は、まだ残っていたオムレツを食べることにしたよ。
結局、トビトはコットをひと口飲んだが……口に合わなかったようで、残りをフータに差し出すこととなった。
私はおかわりしたものと一緒に……至福の時を過ごせたよ。
いやいや、なかなかに……刺激的な世界だ。
これから、再び始まる旅に……更なる期待感が高まってしまうよ。
(……日本と同じようで、似ている食文化もあるとなれば)
転生でなければ……元飼い猫に教えてあげたいところだ。
あの子は……今、妻とのんびり過ごしているだろうか?
少しばかり、意識を向けてしまったが……あまり考えるのをやめよう。
ここにいる……今の仲間と一緒にいる時間を、大切にしなくては。
私は服のポケットに入れた……連絡手段となる宝玉を、今一度撫でたのだった。
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