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第31話 天神様と茶店①
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そして、だんだんとだが……私にもその『匂い』が届いてきた。
茶ではないが……この香ばしさ、『コーヒー』だろうか?
現世であれば、嗅ぎ慣れた香りだったが……まさか、異世界でもあるとは。醤油と似た調味料もあるから……似た飲み物もあるかもしれないねぇ?
これはひとつ……茶を探してみるのも良いだろう。
とりあえず、その香りを頼りに進んでみれば……小さな茶店のような場所に到着した。
石造りで、適度にツルが巻き付いている……落ち着いた雰囲気の店。
どのような品を扱っているか、実に興味をそそられる店構えだった。
「……ここですかな?」
『ん! い……い、匂い!』
「コーヒーに似てるね? 僕も入ってみたい」
では……と、扉を開けてみれば。チリン、と扉に設置されている鈴の音が鳴り響いた。いや、鈴と言うのではなくベルか? 日本で言う鈴よりだいぶ大きい。
「……おや。いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、老年にさしかかる年齢くらいの男だった。外見だけなら、レイバンより上だろう。耳も尖っていないので、エディトとも違うはず。
店の中は、酒場や食堂ほど広くはないが……落ち着いた雰囲気だとすぐにわかる調度品の配置が、いくらか心地よい。
そして……フータが感じ取った、コーヒーらしい香りが満ちていたのにも嬉しく感じる。
「こんにちは。僕の精霊が、美味しそうな匂いだとこちらに案内してくれたので」
「ん? ……中級精霊だね? 君は、冒険者かい?」
「はい。こちらのトビトと一緒に行動しています。まだ……駆け出しですが」
「そうかい。ゆっくりしていきなさい。飲み物は、なんにしようか?」
「えっと……この香りは?」
「ん? コットだが……飲んだことないのかい?」
「お恥ずかしながら……」
呼び名を間違えては、怪しまれるからねぇ?
とりあえず、フータも飲んでみたいからと人数分頼んだのだが。
「……黒い、ですな」
『……くろ』
見た目は普通にコーヒーだったが、一切飲んだことのない二人には異質に見えただろうね?
なので、私が手始めに飲んでみることにした。
(……うん)
酸味も程よく、適度な苦味。
ほのかに……甘みも感じる、飲みやすいコーヒーの味わいだった。これには、甘味も合うだろう。和菓子でも洋菓子でも。
食事で言うなら……パスタとかが合いそうだ。
「おや。僕の方は気に入ってくれたようだね?」
店主らしい男は、何かを載せた皿を持ってきてくれた。卓に乗せたそれは……なんと、オムレツだったのだ。
ケチャップもご丁寧に添えてある……おそらく、プレーンの。しかも、かなり大きい。
「はい。美味しいです! えっと……食事頼んでないですけど」
「いいんだよ。こちらはセットメニューのようなものさ。そっちの若い子には……一緒に食べた方がいいだろう?」
「……あー」
トビトは、まだコーヒーことコットのマグカップを凝視していて……額に汗を浮かべているくらい、緊張していたのだった。
茶ではないが……この香ばしさ、『コーヒー』だろうか?
現世であれば、嗅ぎ慣れた香りだったが……まさか、異世界でもあるとは。醤油と似た調味料もあるから……似た飲み物もあるかもしれないねぇ?
これはひとつ……茶を探してみるのも良いだろう。
とりあえず、その香りを頼りに進んでみれば……小さな茶店のような場所に到着した。
石造りで、適度にツルが巻き付いている……落ち着いた雰囲気の店。
どのような品を扱っているか、実に興味をそそられる店構えだった。
「……ここですかな?」
『ん! い……い、匂い!』
「コーヒーに似てるね? 僕も入ってみたい」
では……と、扉を開けてみれば。チリン、と扉に設置されている鈴の音が鳴り響いた。いや、鈴と言うのではなくベルか? 日本で言う鈴よりだいぶ大きい。
「……おや。いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、老年にさしかかる年齢くらいの男だった。外見だけなら、レイバンより上だろう。耳も尖っていないので、エディトとも違うはず。
店の中は、酒場や食堂ほど広くはないが……落ち着いた雰囲気だとすぐにわかる調度品の配置が、いくらか心地よい。
そして……フータが感じ取った、コーヒーらしい香りが満ちていたのにも嬉しく感じる。
「こんにちは。僕の精霊が、美味しそうな匂いだとこちらに案内してくれたので」
「ん? ……中級精霊だね? 君は、冒険者かい?」
「はい。こちらのトビトと一緒に行動しています。まだ……駆け出しですが」
「そうかい。ゆっくりしていきなさい。飲み物は、なんにしようか?」
「えっと……この香りは?」
「ん? コットだが……飲んだことないのかい?」
「お恥ずかしながら……」
呼び名を間違えては、怪しまれるからねぇ?
とりあえず、フータも飲んでみたいからと人数分頼んだのだが。
「……黒い、ですな」
『……くろ』
見た目は普通にコーヒーだったが、一切飲んだことのない二人には異質に見えただろうね?
なので、私が手始めに飲んでみることにした。
(……うん)
酸味も程よく、適度な苦味。
ほのかに……甘みも感じる、飲みやすいコーヒーの味わいだった。これには、甘味も合うだろう。和菓子でも洋菓子でも。
食事で言うなら……パスタとかが合いそうだ。
「おや。僕の方は気に入ってくれたようだね?」
店主らしい男は、何かを載せた皿を持ってきてくれた。卓に乗せたそれは……なんと、オムレツだったのだ。
ケチャップもご丁寧に添えてある……おそらく、プレーンの。しかも、かなり大きい。
「はい。美味しいです! えっと……食事頼んでないですけど」
「いいんだよ。こちらはセットメニューのようなものさ。そっちの若い子には……一緒に食べた方がいいだろう?」
「……あー」
トビトは、まだコーヒーことコットのマグカップを凝視していて……額に汗を浮かべているくらい、緊張していたのだった。
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