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第21話 天神様と初めての討伐③

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 私の目の前に来たのは……棒のような武器を持った小鬼ゴブリン

 生きている。

 非常に醜いが……きちんと生きている存在だ。

 これを……倒さなくてはいけない。

 聖樹石を得るためだとは言え、無駄な殺生を……と以前の私だと思ったかもしれないが。

 今の私は『ミザネ=プラハド』。

 天神でも『菅原すがわらの道真みちざね』でもない。

 人間でもないが、生きている存在には変わりない。

 だから……ここは避けて通れない道だ。

 短剣を構え、私は……棒を振りかざそうとしていた小鬼ゴブリンの間合いに入った。


「はぁ!!」

「ギャー!?」


 首をいきなりはねるのは無理だったが。

 急所である首筋に……深く刃を刺し、肉の感触を感じながら引き裂いた!

 紫の血飛沫が上がる前に離れれば、小鬼ゴブリンはすぐに命が尽きたのか……倒れた。

 それから……二度と動かなかった。


「……やった」


 命を奪ってしまった。

 神としてなら……無情の感情があっただろうが。

 今は精霊の身。

 呼応する感情があるのか、少し震えてしまったが……これで終わらせてはいけない。

 次! と思ったのだが……。


『ふー……!』

「はぁ!」


 フータがほとんどの小鬼ゴブリンを氷漬けにさせ、トビトが素早く砕いたり……まだ氷になっていないものの首をはねていた。

 私はどうやら、おこぼれをひとつ与えられただけかもしれない。


(……やれやれ。熱くなってはいけないね?)


 これから……機会はいくらでもあるだろうに。今滾る熱を燃え上げても仕方がない。

 とりあえず……私は刃についた血を振り払い、次にフータが凍らせていった小鬼ゴブリンらを砕きにいったが。


(……飴細工だね?)


 大して力を入れていないのに……簡単に壊れてしまった。

 小鬼ゴブリンらは氷の中で既に命を落としていたが……氷は砕けた破片の中に肉を混じらせていた。

 耐性がなければ、なかなかに悲惨な光景だ。

 そこは……人間ではない私だから、多少驚くだけで済んだが。

 しばらく、三人で繰り返していると……小鬼ゴブリンらをすべて倒してしまったのか。

 あちこちに、肉片が広がる……なかなかに酷い光景が出来上がってしまった。


『お……わ、た?』

「そのようであるな?」

「……うん。そうだけど」


 最低ランクとは言え……私達、結構強いのでは? と感心しそうだった。

 とりあえず……討伐証拠を取れる箇所は取り。

 石に近づく前に、最低限の後片付けをしようと土に埋めるものは埋めて。無理なものは……私が天神であった頃以来……初めて使う、『火将かしょう』で簡易的に火葬をしてみた。

 臭いはきついが……そのままにしておくわけにもいかない。

 そこはやはり……天神以前の日本人であった感覚なのだろう。

 まだ、その名残りがあったとは……我ながら少し驚きだった。
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