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第6話 天神様と従者
しおりを挟む「……いくらか、難しゅうございます。ミザネ……殿」
「とりあえず、それでいいんじゃないかな?」
私は、もとは人間だったから言葉遣いを直すのは簡単だが。
飛び梅……トビトは、もともと梅の木だったに過ぎない。言葉を話すことなど……主であった私くらいしかいなかったはず。伝えたい言葉も、眷属としてなら致し方ないだろう。
とくれば、トビトは私の従者として接した方が気が楽か?
と思って、敬称の呼び方を変えたのだが……。
【従者としてならば、その方がよろしいかと。……私とは暫しの別れとなりますが、準備はよろしいでしょうか? ミザネ、トビト】
「うん」
「いつでもよろしいかと」
これから私達は、最初の出発点となる街へ……世界樹の持つわずかな魔力で転送してもらうことになっている。身体などは準備が出来ても……聖樹石とやらは様々な場所に存在するらしい。
なので、ヒトが所持している可能性もある。そうなると、神だった時とは違って『身分証』のようなものが必要となってくるらしく。世界樹にはその資格などは準備してもらったが、登録などは別だそうだ。
それは、旅をする私達自身がせねばならないだとか。
【では……良い旅路を願います】
世界樹がそう告げた後……意識が一旦途切れたが、すぐに目の前に壁があった。
よくよく見ると……土壁ではなく岩だった。
意識がはっきりして、辺りを見渡せば……荒野ほどではないが、あの美しい森の中ではない。
転送……と言うのを本当にさせられたのがよくわかった。
トビトは、私を確認した後に同じように見渡していた。
「……何も、ありませんな」
「……何もない? かな?」
遠くを見てみると、ぽつんとだが黒い塊があるように見えたのだが。トビトにも聞いてみれば、彼の目には違ったように見えたらしい。
「……あれは、街ですな」
「目的のところかな?」
「……おそらく」
であれば、我々の身分証とやらを作りに行かねばならない。
私が歩こうとしたのだが、トビトになぜか肩に乗せられてしまった。
「トビト?」
「従者として……主の足になるのは当然」
「いや、ダメでしょ」
そこまで私は姫扱いのように頼りないのだろうか?
軽く小突くと、トビトには不思議そうな顔をされたが。
「……ダメでしょうか?」
「僕らは、『冒険者』になるんだよ? 僕だけがなにもしないわけにはいかないし、お姫様扱いされる気もないよ?」
私達の身分は……これから『冒険者』でなくてはならないそうだ。世界で様々な場所に『ギルド』と言うものがあり……それに所属する身分を得れば、他国での入国証代わりにもなるのだと。
私が観ていた『テレビ』などの知識にも、そのようなものはちらほら出ていたが。絵空事ではなく、実在していたと思わなんだ。
は、とりあえず置いておいて。
「……しかし」
「あと、すっごく目立つから。僕は『ミザネ』。道真じゃないよ?」
「……………………はい」
トビトは渋々と下ろしてくれたのだが……従者らしく出来ないのに、少し残念に思ったのだろう。
しかし……必要以上に目立つのは良くない。
これから……私達は長い旅をしなければならない。
己で出来ることは、出来るようにならなくてはね?
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