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第二部弐拾 裕司の場合⑩

第1話 兄への依頼

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 友人達への祝いの品は、結局れいが提案してくれた『おむつケーキ』と言うことで決まった。

 見た目は、本当におむつをうまい具合にデコレーションしたウェディングケーキのよう。きっと、皐月さつきらも喜んでくれるだろうと……デパートのベビー用品部門で予約をして、怜とふたりで久しぶりにレストランでディナーも楽しんだ。


(……これは、ある意味怜やんの提案だからなあ)


 裕司ゆうじとしては、少し物足りない気がした。皐月にもだが、智也ともやにもなんだかんだ世話になっている。何か、形に残るものを贈りたいと思い……頼った先は。


「まいどー」


 自身の双子の兄であり、先日婚約と同棲を始めたばかりの秀司しゅうじのところだった。


「忙しいとこ、ごめん」

「いいって。片付けはだいたい落ち着いた」

「むしろ、仕事くれてありがたいわよねー?」


 メアリーも、今日はいるのかふたりにコーヒーを用意してくれた。


「そーそー。んで? メインアクセはさすがにその智也さんが頑張るだろうから……お前はどんなの贈りたい?」

「んー。無難なとこで……ブレスレット、とか?」

「妥当。チェーン? バンクル? もしくは革?」

「……そんな種類あるんだ」

「お前は仕事柄、そう言うのはつけれんからな?」

「悩むわよね~?」


 うーん、とここは三人でしっかり悩むことにした。


「ずっとつけとくことも考えると……チェーンとバンクルはある意味ダメじゃない?」

「まあ、その智也さん会社員だろ? 営業? 技術職?」

「営業……とだけ」

「んー。マリッジリングのように、ずっとは無理だろうけど……装着しやすいとなれば革だな? 普通のベルトもいいが、時間かけるなら編むとか」

「編むとか出来るの?」

「裕司君、見たことない? ミサンガ以上に複雑に編み込んだやつとか」

「ああ!」


 たしかに、あれは複雑で凝った作りだ。中央などに配置されている飾り石もピンキリあるが、いい値段だそうで。

 なら……と、一度怜にメッセージで伝えてから少し待つと、休憩時間だったのかすぐに返事が来た。


『お金折半するから、お願い! デザインはゆーくんらに任せた!!』


 なので、皐月らが好きな色合いだけを彼女に聞いてから、秀司に製作を頼むことになったのだ。


「んじゃ、兄貴頼んだ」

「お任せあれ~。期待以上の仕上がりにしてやる」

「ん」

「シューに任せちゃって大丈夫よー?」


 兄に何かを頼む。

 こんな簡単なことが、学生時代はまともに出来なかったのが嘘のようだ。

 あの頃は、とにかく荒んでいたから……。


(……怜やんと出会って、色々変われた)


 ちゃらんぽらんになっていた裕司を変えてくれたのは、本当に怜のお陰だ。感謝してもしきれないし、ずっと大事にしたいと改めて思うのだった。
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