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第二部拾陸 裕司の場合⑧
第3話 天ぷらリクエスト②
しおりを挟む「……私でいいのかね?」
結局、応援のために葛木経由で内線をかけて……怜をアドバイザーとしてまかない処に招いたのだ。
「怜やんが、ぴったしぜよ」
「そうかね?」
「頼む、眞島ちゃん!! お前さんの舌は天下一品だ!! リクエストまとめに協力してくれ!!」
「む! 手伝えるのであれば、お任せあれ!!」
ジャケットを着ているので、そこまで腕まくりは出来ないが意気込みは出たようだ。
とりあえず、怜には仕分けたリクエスト用紙を一緒に見てもらうことになったが。
「エビはもちろん……貝柱のかき揚げとかがな?」
「多いですねぇ? 無難なとこですが。食べ方は?」
「んー? 小森が塩で食べた方がいい提案してくれてから……比率は天つゆよりかはそっちが多くなってきたな? 塩で物足りなきゃ、自分でつゆにつければいいし」
「なるほど……」
そこから、十分程度……三人でリクエスト用紙と睨めっこしていたが……最初に発言したのは怜だった。
「怜やん?」
「二年前がきっかけなら……具材を変えて、別のかき揚げとかは?」
「「別??」」
「私の希望もあるんですけど……エビももちろん美味しいんですが、貝柱のかき揚げとか」
野菜には、他のリクエストを参考にズッキーニとかぼちゃ、にんじんをせん切りしたものを入れて欲しいと。その提案に、裕司が夏頃自宅で作ろうとしていたかき揚げじゃないかと思い出した。
「ほぉ? ま、かき揚げならアレンジが活かしやすいからなあ? ちょうど貝柱の缶詰あるし、試作すっか??」
「ズッキーニは流石にないでしょうし、にんじんとかぼちゃと玉ねぎでとりあえず」
「だなあ?」
「え、今のでいいんですか??」
「集結させた考え方だ、悪くない」
「わーい!」
とりあえず、試作が出来るまで怜をこれ以上ホール側から引き抜くわけにもいかないので、まかないの時に食べてもらうことに決まったのだ。
約二時間後。バイトも入れて、試行錯誤して仕込んだかき揚げだが。
「……見た目は、普通の貝柱入りのかき揚げだな?」
果たして、怜の舌を唸らせることができるだろうか。
「来たよーん!」
それから、怜が自分のまかないの時間になってやって来たので……もう一度、怜用にと裕司がしっかり手順を間違えないようにかき揚げを作り。
山越が蕎麦とつゆを仕上げ……かき揚げは、皿の上に。今回も一応抹茶塩で。
怜の前に出してやれば、カウンターで待っていた彼女はとても目を輝かせてくれた。
「試作第一号ぜよ?」
「わーい!! いっただきまーす!!」
「足りなかったら、お代わりあるから」
「そかも。今日特にセッティングで疲れたし」
じゃ、と怜はしっかりトレーを持ち上げてから席に行くのだった。
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