【完結】ホテルグルメはまかないさんから

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
158 / 192
第二部拾肆 裕司の場合⑦

第2話 男ら集結

しおりを挟む


「……ふーん? よかったじゃん」


 クリスマス間近という時期になった頃。

 少し相談事があるからと、双子の兄である秀司しゅうじが自宅にやってきたのだ。身内とは言え、こちらに来るのはまだ片手で数えられる程度だった。

 呼び名について、まずは報告すると裕司ゆうじの表情が緩みきっていたのか……少しじと目で見られた。


「うん。やっと」

「苦節何年……ってやつか?」

「そうだね。そろそろ六年」

「……地味に長いな」

「……まあ」


 以前の『こもやん』が決して嫌なわけではなかった。

 だが、れいなりに呼び方を考えてくれたのだ。そこに、メアリーや真尋まひろが加わってくれていても、裕司としては心底嬉しい。


「その勢いじゃ、お前らの方が先に結婚しそうだな?」

「……それは」

「……無理か?」

「……貯金額が」

「あー……」


 周囲にはいつ結婚してもいいだろうと囃し立てられるが、実際の貯蓄を考えるといくらか難しいのだ。式はともかく、披露宴費用はバカにならない。その表舞台がある場所が勤務先だから、なおのこと現実的な問題がすぐに見えるのだ。

 だが、急ぐ必要はない……とも言い切れなくなってきた。


「あんまり遅いと、怜やんに負担かけるだろうし」

「女の体はなあ?」


 結婚もだが、妊娠適齢期をいくらか過ぎてしまっているのだ。高齢出産が増えているとは言え、身体への負担は男には考えられないくらい大きいと言われている。

 だから、裕司も年々考えてはいるのだ。どのタイミングが怜と結婚するのに一番いいのかを。

 そう考えていると、インターフォンが鳴ったので玄関に向かえば。


「……ども」

「はじめまして……」


 ふたりの男性が、なぜかフルーツ盛り合わせのバスケットを持っていたのだ。まったく知らないのだが、雰囲気にどこか懐かしさを感じた。


「えっと……君達は?」

眞島まとう芽依めい……です」

りんです」


 その名前には聞き覚えがあった。双子ではないが、年の少し離れたお互い顔が少し似ている弟二人がいることを。


「あ、はじめまして。小森こもり裕司です」

「……姉がいつもお世話になっています」

「お見舞い来ました」

「あ。君らの姉さん、出社してるけど」

「「……えぇ?」」


 いない事を告げると、すぐに弟二人は落胆したような表情になった。とは言え、帰すわけにもいかないので上がってもらうことにした。

 秀司とも当然初対面なので、お互いに挨拶を交わしてからリビングに座ってもらったが。

 一気に人数が増えたので、結構スペースがキツくなってしまった。


「……双子? 年子??」

「年子でーす」

「凛の方が一応兄貴」

「落ち着いてんのは、芽依くんの方?」

「ちょっと緊張……してるだけ、です」

「なー?」


 そして、だんだんと打ち解けていくにつれ。

 秀司の職業について二人が興味を持ち、最終的にはタメ口をきくくらい意気投合してしまっていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~

Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。 おいしいご飯がたくさん出てきます。 いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。 助けられたり、恋をしたり。 愛とやさしさののあふれるお話です。 なろうにも投降中

【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
 魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。 「私ね、皆を守りたいの」  幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/20……完結 2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位 2022/02/14……アルファポリスHOT 62位 2022/02/14……連載開始

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...