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第二部拾肆 裕司の場合⑦
第2話 男ら集結
しおりを挟む「……ふーん? よかったじゃん」
クリスマス間近という時期になった頃。
少し相談事があるからと、双子の兄である秀司が自宅にやってきたのだ。身内とは言え、こちらに来るのはまだ片手で数えられる程度だった。
呼び名について、まずは報告すると裕司の表情が緩みきっていたのか……少しじと目で見られた。
「うん。やっと」
「苦節何年……ってやつか?」
「そうだね。そろそろ六年」
「……地味に長いな」
「……まあ」
以前の『こもやん』が決して嫌なわけではなかった。
だが、怜なりに呼び方を考えてくれたのだ。そこに、メアリーや真尋が加わってくれていても、裕司としては心底嬉しい。
「その勢いじゃ、お前らの方が先に結婚しそうだな?」
「……それは」
「……無理か?」
「……貯金額が」
「あー……」
周囲にはいつ結婚してもいいだろうと囃し立てられるが、実際の貯蓄を考えるといくらか難しいのだ。式はともかく、披露宴費用はバカにならない。その表舞台がある場所が勤務先だから、なおのこと現実的な問題がすぐに見えるのだ。
だが、急ぐ必要はない……とも言い切れなくなってきた。
「あんまり遅いと、怜やんに負担かけるだろうし」
「女の体はなあ?」
結婚もだが、妊娠適齢期をいくらか過ぎてしまっているのだ。高齢出産が増えているとは言え、身体への負担は男には考えられないくらい大きいと言われている。
だから、裕司も年々考えてはいるのだ。どのタイミングが怜と結婚するのに一番いいのかを。
そう考えていると、インターフォンが鳴ったので玄関に向かえば。
「……ども」
「はじめまして……」
ふたりの男性が、なぜかフルーツ盛り合わせのバスケットを持っていたのだ。まったく知らないのだが、雰囲気にどこか懐かしさを感じた。
「えっと……君達は?」
「眞島芽依……です」
「凛です」
その名前には聞き覚えがあった。双子ではないが、年の少し離れたお互い顔が少し似ている弟二人がいることを。
「あ、はじめまして。小森裕司です」
「……姉がいつもお世話になっています」
「お見舞い来ました」
「あ。君らの姉さん、出社してるけど」
「「……えぇ?」」
いない事を告げると、すぐに弟二人は落胆したような表情になった。とは言え、帰すわけにもいかないので上がってもらうことにした。
秀司とも当然初対面なので、お互いに挨拶を交わしてからリビングに座ってもらったが。
一気に人数が増えたので、結構スペースがキツくなってしまった。
「……双子? 年子??」
「年子でーす」
「凛の方が一応兄貴」
「落ち着いてんのは、芽依くんの方?」
「ちょっと緊張……してるだけ、です」
「なー?」
そして、だんだんと打ち解けていくにつれ。
秀司の職業について二人が興味を持ち、最終的にはタメ口をきくくらい意気投合してしまっていた。
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