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第二部陸 裕司の場合③

第2話『検討、スイートポテトタルト』①

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 同僚や先輩達にも、レシピを見てもらった後。

 裕司ゆうじは中尾に、持ち場へ戻る前にもう一度呼び止められた。


小森こもり、二年くらい前に社食で何度かデザート作っていたよな?」

「? はい。げ……山越やまこしさんからの提案もあって何度か」

「秋メニューの入れ替えに。それを取り入れられたらと思うんだ。ビッフェの方でだが」

「……ネットで調べたレシピですが」

「それでも。再現したのはお前とあの人だ。俺らにもレクチャーしてくれ。考えているのは、沖縄の紫芋タルトに似たスイートポテトタルトだ」

「わかりました」


 お安いご用だと引き受けて、雑務は他の同僚に頼むこととなって……レシピをスマホからコピー機に転送してから作り始めることになった。

 タルト生地の土台を作るのは、さすが本職ということもあって裕司が作るよりも手際良く、ささっと作り上げていく。スイートポテトのフィリングももちろんのこと。

 ただし、そのフィリング……スイートポテトの部分をどうタルト生地に載せていくかは検討することになった。

 中尾が言ったように、沖縄土産の紫芋タルトのように小さなカップにして曲線に絞るか。

 基本のスイートポテトである木の葉型にするか。

 丸にしたり、あとは普通のタルトのように焼いて切り分けるか。

 出来るだけ、廃棄ロスを無くす方向にしたいのはホテル関係なく料理人としてのプライドがある。

 だから、そこは真剣に検討しなくてはいけないのだ。


「見た目、焼き色を考えると……親しみを持たれるとしたら、紫芋タルトのようにか木の葉型だが」

「どっちも作って、皆に聞くのは?」

「それなら……宴会部門にも聞きたいな。総支配人を呼べたら」

「料理長、紫藤しどうキャプテンは?」

「……どっちにしても美味いとしか言わないから参考にならん」

「「「ああ……」」」


 それは容易に想像が出来るので、裕司でも納得することが出来た。さすがは、幼馴染みということもあり、中尾は彼の性格をよく知っていた。

 とは言え、呼ばないわけにはいかないので都築つづきと一緒に内線でこちらに来るように頼み。

 出来上がった頃には、手が空いたふたりが上機嫌で厨房の扉をくぐってきた。


「中尾たん! 美味いデザート出来たんだって!!?」

「……ああ。まあ、一度は食ったことあるやつだ。小森とかが社食で出してたスイートポテトタルトだ」

「あれか! めちゃくちゃ美味くて、苺鈴メイリンちゃんがどハマりしてた」

「そんな美味しいのを、ビュッフェに?」

「はい、総支配人。秋メニューに向けてですが」


 中尾の、紫藤への呆れっぷりと都築への丁寧な対応に……色々苦労しているのだな、と若輩者ながら思うのだった。
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