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第二十四章 小森の場合⑫
第1話 偶然での頼み事①
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まだ悩むには早いと言われるだろうが。
小森裕司は、その日も悩んでいた。
「う~~ん……」
花見も終わり、初夏を迎え……暑さも少しずつ増してきた今日この頃。
専門学校も、バイトもない休みの日。
恋人である眞島怜は大学もバイトもあるので、今日は来ても夜遅くだ。その時間を利用して……ある程度は惰眠を貪ったが、適当に腹が減ったので。
本当に適当に腹に入れてから……半年ちょっと先に控えている、卒業試験兼内定試験に向けての料理を考えてみた。
考えたは考えたが……『笑顔になる、家庭料理』と大胆に決めたはいいものの、テーマだけを決めて二ヶ月近く。肝心の料理もだが……使う食材すら何も決まっていない。
「怜やんのお陰で決まったようなものなのに……」
その怜に作るための料理にすればいいのか。安直過ぎやしないかと思うが、それが逆にいいかもしれない。
この先、家族になる予定でもある彼女への料理。
そう思うと、これまでのネットサーフィンなどで検索、かつお気に入りに入れておいたレシピをざっと見直すことにした。
「……ジャンキーなものも多いけど。煮物……??」
裕司も当然嫌いではないが、半数以上も煮物で占められていた。同じような煮物でも、味付けや調理法が違っていたり……と。今ある材料で作れるかと、とりあえず材料を冷蔵庫などで探したが……いくつか足りなかった。
仕方がないので、スーパーに買い出しに行くことにしたら。
「お、裕司君」
「智也さん?」
お互いの恋人が友人同士と言うことがきっかけで、友人とは言いにくいが知人以上の間柄になった男性。怜の二年先輩で、今は社会人一年目だ。普段着とは違い、スーツだがジャケットは着ていない。
暑いので脱いでいたのか、腕に引っ掛けていた。
「今日は休み?」
「……です。あと、試験の練習に必要な材料買いに」
「ほーう? 急ぎ?」
「いえ。自分で食べるだけなので、特には」
「じゃあ、ちょっと良い? 奢るから」
と言って、智也に連れて行かれたのはファミレスだった。ドリンクバーもだったが、お互い昼がまだだったと言うのもあって、智也が適当に注文していく。
「俺に話……ですか?」
「俺とか君の共通の話題となっちゃ……決まってくるけど」
「まあ……」
お互いの恋人についてだろうか。惚気も悪くないが、裕司はともかく……一応智也は社会人。真っ昼間にこんな誰がどこにいるかわからない場所でいいのかとも思うが。
別段、悪いことではないので聞くことにした。
「皐月がさ……」
「はい……?」
「……最近、前よりダークマターを製造してる」
「え」
料理がうまくいかないとは、怜経由で聞いていたりはしていたが。まさか、余計に悪化しているとは思わなかった。
「たまに……見た目良くても、味が……とか。マジで頼む! 今日明日かに、一度家に来てあいつに指導して欲しいんだ!!」
「……なるほど」
それで、ささやかでも奢ることをしてくれたと言うわけか。
裕司が練習用に作ろうとしていたのも家庭料理だから、ちょうどいいかもしれない。
怜には、LIMEで智也達の家にお邪魔することは伝えておいた。
小森裕司は、その日も悩んでいた。
「う~~ん……」
花見も終わり、初夏を迎え……暑さも少しずつ増してきた今日この頃。
専門学校も、バイトもない休みの日。
恋人である眞島怜は大学もバイトもあるので、今日は来ても夜遅くだ。その時間を利用して……ある程度は惰眠を貪ったが、適当に腹が減ったので。
本当に適当に腹に入れてから……半年ちょっと先に控えている、卒業試験兼内定試験に向けての料理を考えてみた。
考えたは考えたが……『笑顔になる、家庭料理』と大胆に決めたはいいものの、テーマだけを決めて二ヶ月近く。肝心の料理もだが……使う食材すら何も決まっていない。
「怜やんのお陰で決まったようなものなのに……」
その怜に作るための料理にすればいいのか。安直過ぎやしないかと思うが、それが逆にいいかもしれない。
この先、家族になる予定でもある彼女への料理。
そう思うと、これまでのネットサーフィンなどで検索、かつお気に入りに入れておいたレシピをざっと見直すことにした。
「……ジャンキーなものも多いけど。煮物……??」
裕司も当然嫌いではないが、半数以上も煮物で占められていた。同じような煮物でも、味付けや調理法が違っていたり……と。今ある材料で作れるかと、とりあえず材料を冷蔵庫などで探したが……いくつか足りなかった。
仕方がないので、スーパーに買い出しに行くことにしたら。
「お、裕司君」
「智也さん?」
お互いの恋人が友人同士と言うことがきっかけで、友人とは言いにくいが知人以上の間柄になった男性。怜の二年先輩で、今は社会人一年目だ。普段着とは違い、スーツだがジャケットは着ていない。
暑いので脱いでいたのか、腕に引っ掛けていた。
「今日は休み?」
「……です。あと、試験の練習に必要な材料買いに」
「ほーう? 急ぎ?」
「いえ。自分で食べるだけなので、特には」
「じゃあ、ちょっと良い? 奢るから」
と言って、智也に連れて行かれたのはファミレスだった。ドリンクバーもだったが、お互い昼がまだだったと言うのもあって、智也が適当に注文していく。
「俺に話……ですか?」
「俺とか君の共通の話題となっちゃ……決まってくるけど」
「まあ……」
お互いの恋人についてだろうか。惚気も悪くないが、裕司はともかく……一応智也は社会人。真っ昼間にこんな誰がどこにいるかわからない場所でいいのかとも思うが。
別段、悪いことではないので聞くことにした。
「皐月がさ……」
「はい……?」
「……最近、前よりダークマターを製造してる」
「え」
料理がうまくいかないとは、怜経由で聞いていたりはしていたが。まさか、余計に悪化しているとは思わなかった。
「たまに……見た目良くても、味が……とか。マジで頼む! 今日明日かに、一度家に来てあいつに指導して欲しいんだ!!」
「……なるほど」
それで、ささやかでも奢ることをしてくれたと言うわけか。
裕司が練習用に作ろうとしていたのも家庭料理だから、ちょうどいいかもしれない。
怜には、LIMEで智也達の家にお邪魔することは伝えておいた。
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