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第二十章 小森の場合⑩
第4話 タケノコで決めた
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タケノコ掘りは……楽しかった。
持ち帰れる量に決まりがあるところだったが、たくさん持ち帰っても、裕司と怜が若くても限界がある。それに、灰汁抜きもなかなかに手間がかかると……今回初挑戦した裕司でも思ったくらいだ。
「……やっとか」
朝採れの時間帯に、ふたりで行って帰って来てから……裕司の部屋で、カセットコンロを使って灰汁抜きのためにタケノコを煮込んだ。
その時間……ゆうに、八時間はかかった。怜は手伝えることがほとんどなかったので、今は裕司のベッドでよく寝ている。早朝も早朝だったので、仕方がなかった。
裕司も半分仮眠を取ったりしたが……初挑戦と言うこともあり、気になって眠れず……スマホをいじりながらも灰汁抜きに挑んだのだ。
出来上がったら、竹串が皮もだが中のタケノコにもすんなり通ったので……どんな料理にしようかワクワクしてきた。
やはり、自分は料理をするのが一番楽しい。そう思えるくらい、頭の中に作りたいメニューがどんどん湧いて出てきた。
しかしながら、これだけのタケノコをひとりで楽しむわけではない。一緒に採りに行ってくれた怜を起こそうと、すーすー寝ている彼女の体を揺すった。
「怜やん、怜やんおきてー?」
「にゅー?」
「タケノコ終わったから、食べたいもん聞きたいのだよ」
「!?」
カッ、と言う音が聞こえるくらい、怜の目が開眼して意識も覚醒したようだ。その様子がおかしくて笑ってしまったが、逆に怜らしいので体を起こすのを待ってやった。
「やや! こもやん、出来たのかね!?」
「ん。だもんで、聞きに来たぜよ?」
「あ、方言。……だもんで?」
「三重とか中部圏だとわりかし使うけど……たしか、『だから~』とかって意味かな?」
「ほうほう! んじゃ、メニュー決め?」
「そうそう。なんにしようか」
炊き込みご飯はせっかくだから作ることにしていたので、米の吸水は先に済ませてある。
ほかは……天ぷら、若竹煮、春巻きくらいにして、汁物はかき卵のスープに。
怜にも手伝ってもらうと、少しずつ自炊をするようになったからか以前よりも手際が良かった。裕司ほどではないが、もともとホテルでの宴会を担当するスタッフ業務をバイトにしているので……手先は器用だったから。
裕司でも、バレンタインの時に見た……あの片腕に皿を三つ器用に重ねて持ち歩くのは無理だ。
「ふぉお!? 美味しそう!!」
出来上がったタケノコパーティーメニューを見て、ぐっすり寝ていたせいもあり……怜の胃袋は限界を迎えていた。
さっそく食べようと食前の挨拶を済ませ、我ながら良い出来だと裕司は思ったが。
(卒業試験のテーマ……決まりそうだな?)
まだ一年近く先だが、裕司の卒業のための試験に必要なメニューへのテーマが固まった。
『笑顔になる、家庭料理』と。
テーマは自由なので、そうしようと週明け学校に登校したら提出するのを決めたのだ。
持ち帰れる量に決まりがあるところだったが、たくさん持ち帰っても、裕司と怜が若くても限界がある。それに、灰汁抜きもなかなかに手間がかかると……今回初挑戦した裕司でも思ったくらいだ。
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その時間……ゆうに、八時間はかかった。怜は手伝えることがほとんどなかったので、今は裕司のベッドでよく寝ている。早朝も早朝だったので、仕方がなかった。
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出来上がったら、竹串が皮もだが中のタケノコにもすんなり通ったので……どんな料理にしようかワクワクしてきた。
やはり、自分は料理をするのが一番楽しい。そう思えるくらい、頭の中に作りたいメニューがどんどん湧いて出てきた。
しかしながら、これだけのタケノコをひとりで楽しむわけではない。一緒に採りに行ってくれた怜を起こそうと、すーすー寝ている彼女の体を揺すった。
「怜やん、怜やんおきてー?」
「にゅー?」
「タケノコ終わったから、食べたいもん聞きたいのだよ」
「!?」
カッ、と言う音が聞こえるくらい、怜の目が開眼して意識も覚醒したようだ。その様子がおかしくて笑ってしまったが、逆に怜らしいので体を起こすのを待ってやった。
「やや! こもやん、出来たのかね!?」
「ん。だもんで、聞きに来たぜよ?」
「あ、方言。……だもんで?」
「三重とか中部圏だとわりかし使うけど……たしか、『だから~』とかって意味かな?」
「ほうほう! んじゃ、メニュー決め?」
「そうそう。なんにしようか」
炊き込みご飯はせっかくだから作ることにしていたので、米の吸水は先に済ませてある。
ほかは……天ぷら、若竹煮、春巻きくらいにして、汁物はかき卵のスープに。
怜にも手伝ってもらうと、少しずつ自炊をするようになったからか以前よりも手際が良かった。裕司ほどではないが、もともとホテルでの宴会を担当するスタッフ業務をバイトにしているので……手先は器用だったから。
裕司でも、バレンタインの時に見た……あの片腕に皿を三つ器用に重ねて持ち歩くのは無理だ。
「ふぉお!? 美味しそう!!」
出来上がったタケノコパーティーメニューを見て、ぐっすり寝ていたせいもあり……怜の胃袋は限界を迎えていた。
さっそく食べようと食前の挨拶を済ませ、我ながら良い出来だと裕司は思ったが。
(卒業試験のテーマ……決まりそうだな?)
まだ一年近く先だが、裕司の卒業のための試験に必要なメニューへのテーマが固まった。
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テーマは自由なので、そうしようと週明け学校に登校したら提出するのを決めたのだ。
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