【完結】ホテルグルメはまかないさんから

第十八章 小森の場合⑨

第3話『コンビネーション、津餃子』①

「あら？　怜れいどーしたの？？」


　皐月さつきは普通に美味しそうに食べていたので、怜の反応を見て不思議そうにしていた。智也ともやの方も普通に食べているようだった。


「んー？　いや、美味しくないわけじゃないけど……なんか、こもやんの方が美味しいなあって」

「……惚気か」

「どーも」

「小森こもりくんの方が美味い？　なにそれ、気になる」

「いやいやいや？　目指していますけど、パティシエ専攻してる訳じゃないですよ？」


　作れないわけではないが、丁寧な仕上げは自宅で作るのは限度がある。怜のためなら作るが、自分のためにはある意味適当になるけれど。新学期になってからは、そうもいかなくなってくるが。


「けどまあ！　ここはここで楽しむとも！！　こもやんの料理が美味しいのはマジだけど！！」

「「えー……いいなあ？」」

「そこ！？　羨ましがっても、とりあえず今は今を楽しもうよ！？」


　などと、一応払った金額分は楽しんだけれども。

　何故、こうなってしまったのか。


「……ごめん、こもやん」

「……もう、しゃーない」


　皐月と智也が購入してきた材料を手に……裕司ゆうじの部屋で、夕飯を作って欲しいとお願いしてきたのだ。

　裕司としては、怜と部屋でゆっくりしたいと思っていたが……怜が言い出したことで、結果的にその状況になったのはもう仕方がなかった。


「小森さんのご飯で、怜が美味しいと前々から聞いてたのがあるんですよ！！」


　と言うわけで、用意してくれたのは……揚げ餃子の材料だった。津餃子の材料を用意しようにも、皮の仕込みは今からだと大変だから大判の餃子の皮を買ってもらった。


「ただ、伊東いとうさん」

「はい？」

「包むのは手伝ってください」

「…………形崩れますよ？」

「小森くん、やめといた方がいいよ」


　智也がそこまで言うのなら、せめて……と、彼に手伝ってもらうことにした。多少料理は出来るらしいので、包み方を教えたらまあまあの出来栄えになった。その間、彼女達は部屋の掃除をしてくれている。


「勝手に掃除していいのー？」

「だいじょぶ、こもやんとこにいかがわしいのはないから！」

「あ、そーなの？」


　言いたい放題だが、そう言うのは怜と付き合う前後で全部処分したのだ。


「料理は出来るのに、片付け下手なんだ？」

「富樫とがしさんは？」

「智也でいいよ」

「じゃ、俺も裕司で」

「ん。まあ……普通？　皐月には掃除させてはないけど」

「……そう言うのは？」

「…………電子にした」

「ロックは？」

「誕生日以外。あと定期的に変えてる」


　料理中になんて会話を……とも思うが。これは男の事情だから仕方がない。

　とりあえず、他の副菜とかが出来上がってから揚げ餃子の仕上げをすることにした。