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茶釜⑤

第52話 所有者の食事について

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 エルフのお祭りというのも、ミディアちゃんは片付けとかに参加しなくていいからってことで、散歩が終わったらお家に帰ることになったわ。

 ミディアちゃんは里の男女たちに、たっくさん浴衣や甚兵衛を仕立てたから貢献者ってことで、免除してもらえるんだって。それはそうね、ってあたしも納得出来たわ。


「ポットのレシピ、試してみたいわぁ」

『いいけど。あれだけ食べたのに、まだお腹に入るのん?』

「晩酌は別腹」

『それ、デザートは別腹のときの言葉じゃないの~……?』

「ええのええの~」

『はいはい』


 一個人としては、かなり好意を抱いている相手の意見を無視出来ないもの? それに、ミディアちゃんは大変でもきちんと納品を守った。お祭りを楽しんでたって、罰は当たらない。それくらい全然いいもの。あたしだって。ゲイホストだった時は癒しのオタ活に向けて、稼ぎに稼いでたんだからね? リフレッシュするために、気分転換するのはよーくわかる。

 ただ、ミディアちゃんはかなりの食いしん坊さんなんだけど!?

 ナイスバディなのに、全然太らないのよね!? けど、カロリー消費がはんぱないくらいに労働するから、納得は納得だーけーどー。

 お家にさっさと帰ってから、あたしはミディアちゃんの魔法でもとの(?)の茶釜サイズに戻されて。調理台の上に置いてもらい、ミディアちゃんには必要な材料の用意をしてもらったの。


「こんなけでいいん?」

『素材の味を活かすものでいいのよん』


 材料はすっごくシンプル。

 家にストックしてある藻塩以外は、じゃがいものように使う芋に胡椒と油。

 油はごま油ぽいのがあるらしいから、それだけで結構贅沢なのよねぇ?


「エルフ芋の土洗うだけでええん?」

『皮付きで食べられるんでしょー? 土汚れと芽を取れば、揚げたときの香ばしさが堪らないの!』


 今からミディアちゃに作ってもらうのは。簡単に言えば、『揚げ焼きフライドポテト』。

 前世でも、フライドポテトの進化はえげつなかったわぁ。専門店もだけど、脱サラしてまで仕入れから調理法にこだわるメンズが多かったの。夜の相手にしてもらってた、お得意さんから仕入れた情報だけど。

 自分でも何となく試したら、まあ美味しかった。品種改良と試行錯誤を馬鹿にしちゃいけないと思うくらい。

 異世界だけど、素材はピカイチでしょうから、それくらい伝授はおてのものよん?

 ミディアちゃんはあたしの口伝えのレシピで、芋の汚れと灰汁抜き。水気を魔法で切ってから、少し少なめのごま油で揚げ焼きをしてくれたの。

 ごま油の質がいいから、強烈なまでにいい匂いが届くわぁ!!


「火が通ったら、塩と胡椒振ればいいん?」

『そうね? 胡椒は少なめ、藻塩はきつめがいいわ。甘めの芋なら、むしろその方がいいらしいの』

「うちの好みでええん?」

『もち』


 んで、出来上がった藻塩フライドポテトだけど。

 釜調理でないとはいえ、めちゃくちゃ美味しそうであたしだけ晩酌出来ないのが悔しかったわ!!

 色艶、ごま油と藻塩の香り。絶妙な調和で、絶対美味しいとわかる飯テロよ!!


「これには、なんの酒がええんやろ?」

『……芋同士だけど。焼酎にしたら?』

「ポットがそう言うんなら、間違いないなあ?」


 その知識も、前世のお相手さんや店の客たちだったけど……思い出せる限りの、飯テロ知識はミディアちゃんにも知ってほしいのよね? 食いしん坊だけど、この子の自炊レベル……ランダムで、失敗するから。試行錯誤が、ときどきおかしいのよね。わからなくもないけど。


(とにかく。好意対象には、健康でいて欲しいのよん!)


 女への関心を、この子が変えてくれたんだから。美容意識も、徐々に改革していくわ!!
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