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30-1.決戦①
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何が起こったのか、俺はよくわからないでいた。
だが、ルーイス王子が、魔力を膨らませて自爆でもするのかと身構えていたが。ガイウスがいきなり、俺と王子の手を掴んで強制転移を振るい。
次に見えたところは、荒野とも言っていいくらい、何もない土地に到着したのだった。
「……さて。ここなら存分に力を解放していいよ。……ルーイス」
『……あ……にうえ……ぇ!』
俺が少し呆然としている間に、事態はもう動き出していたのか。
王子の方を振り向くと、少し離れたところで、爆発もせずに魔力を練り上げていた。
だが、様子が少しおかしい。
魔力を練って大技を繰り出すわけでもなく、自身にまとわせているのは。いったい、なんのためか?
錬金術以外、あまり魔術に精通していない俺ではよくわからなかった。
「ガイウス、いったい……」
「あーあ、もう。あいつは、予想以上に禁忌とされている術を学んでしまったようだね?」
「は?」
「あれは……形態変化、だよ」
「!?」
文字通り、体を作り替えて強化させる魔術。
だが、ガイウスの言う通り、それは禁忌とされている秘術だ。もしかしたら、俺がまた不正のエーテル生成液での錬成料理で死に至らなかった場合。そのために習得したのであれば。
「俺は……今まで、何をしてきたのだ」
俺様と虚勢を張り、周囲に迷惑をかけていたままの俺は。
こんなにも、周囲を傷つけていたのか。
だとしたら、俺の研究どころか今までの在り方は。
「いいんだよ、クローム。君は、気づけたんだから」
ガイウスは肉親の変貌していく姿を、目を逸らさずに見つめていた。
「本当に愚かなのは、気付かずに信じ続けてしまうことだよ。あの弟は、自分の自尊心だなんてちっぽけなことで、禁忌に触れてしまった。けど、君は違う。セリカちゃんを創って、セリカちゃんと過ごしてきたお陰で、僕には出来ないことを成し遂げた。だから、後悔はしても……今があるのなら、全然いいんだ」
「……ガイウス」
俺の持つ技能を見出してくれた、俺の恩人とも呼べる朋友の存在。
それが、こんなにも頼もしく思えるだなんて、初めてだ。ただのガイの時、こいつは有能でもちゃらんぽらんでいたから。
目が合うと、ガイウスはこんな状況なのに笑顔を見せてくれた。
「とにかく、あのバカ弟だったものを倒さないと。君とセリカちゃんの婚約宣言出来ないし、僕もマールを迎え入れれないからね!」
『ぐ……ぐぐ、が……ぁあああああああああああ!?』
王子の変貌は、どこも元の人間らしさは欠片もない。
ワイバーンか、ドラゴンのような。爬虫類の進化形のような巨大な魔獣へとなってしまったのだった。
ガイウスはともかく、戦闘経験がほぼない俺に、勝ち目はあるのだろうか?
「クローム、補助魔法程度は出来る?」
「本職ほどではないが、多少は」
「なら、拘束をありったけあいつに放って。倒すのは……僕の役目だ」
「……肉親でもか」
「肉親だからこそだよ。出来の悪い弟でも、堕ちたらもう人間じゃない。あれは……このまま放置しておくと厄災になりかねないよ?」
「……ああ」
人を殺したことはない。
だが、ガイウスはある意味違うかもしれない。
けど、今ここで止めなくては、街も……下手したら王宮にまで進出する可能性がある。
王子にもう理性が欠片も残っていなければ、それがあり得るからだ。
俺の愚かな仕打ちでこの事態になってしまったのだから、躊躇いは捨てる。
全身全霊で、ルーイス王子を止めよう!
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