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30-1.決戦①

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 ★・☆・★







 何が起こったのか、俺はよくわからないでいた。

 だが、ルーイス王子が、魔力を膨らませて自爆でもするのかと身構えていたが。ガイウスがいきなり、俺と王子の手を掴んで強制転移を振るい。

 次に見えたところは、荒野とも言っていいくらい、何もない土地に到着したのだった。


「……さて。ここなら存分に力を解放していいよ。……ルーイス」

『……あ……にうえ……ぇ!』


 俺が少し呆然としている間に、事態はもう動き出していたのか。

 王子の方を振り向くと、少し離れたところで、爆発もせずに魔力を練り上げていた。

 だが、様子が少しおかしい。

 魔力を練って大技を繰り出すわけでもなく、自身にまとわせているのは。いったい、なんのためか?

 錬金術以外、あまり魔術に精通していない俺ではよくわからなかった。


「ガイウス、いったい……」

「あーあ、もう。あいつは、予想以上に禁忌とされている術を学んでしまったようだね?」

「は?」

「あれは……形態変化、だよ」

「!?」


 文字通り、体を作り替えて強化させる魔術。

 だが、ガイウスの言う通り、それは禁忌とされている秘術だ。もしかしたら、俺がまた不正のエーテル生成液での錬成料理で死に至らなかった場合。そのために習得したのであれば。


「俺は……今まで、何をしてきたのだ」


 俺様と虚勢を張り、周囲に迷惑をかけていたままの俺は。

 こんなにも、周囲を傷つけていたのか。

 だとしたら、俺の研究どころか今までの在り方は。


「いいんだよ、クローム。君は、気づけたんだから」


 ガイウスは肉親の変貌していく姿を、目を逸らさずに見つめていた。


「本当に愚かなのは、気付かずに信じ続けてしまうことだよ。あの弟は、自分の自尊心だなんてちっぽけなことで、禁忌に触れてしまった。けど、君は違う。セリカちゃんを創って、セリカちゃんと過ごしてきたお陰で、僕には出来ないことを成し遂げた。だから、後悔はしても……今があるのなら、全然いいんだ」

「……ガイウス」


 俺の持つ技能スキルを見出してくれた、俺の恩人とも呼べる朋友ともの存在。

 それが、こんなにも頼もしく思えるだなんて、初めてだ。ただのガイの時、こいつは有能でもちゃらんぽらんでいたから。

 目が合うと、ガイウスはこんな状況なのに笑顔を見せてくれた。


「とにかく、あのバカ弟だったものを倒さないと。君とセリカちゃんの婚約宣言出来ないし、僕もマールを迎え入れれないからね!」

『ぐ……ぐぐ、が……ぁあああああああああああ!?』


 王子の変貌は、どこも元の人間らしさは欠片もない。

 ワイバーンか、ドラゴンのような。爬虫類の進化形のような巨大な魔獣モンスターへとなってしまったのだった。

 ガイウスはともかく、戦闘経験がほぼない俺に、勝ち目はあるのだろうか?


「クローム、補助魔法程度は出来る?」

「本職ほどではないが、多少は」

「なら、拘束ロープをありったけあいつに放って。倒すのは……僕の役目だ」

「……肉親でもか」

「肉親だからこそだよ。出来の悪い弟でも、堕ちたらもう人間じゃない。あれは……このまま放置しておくと厄災になりかねないよ?」

「……ああ」


 人を殺したことはない。

 だが、ガイウスはある意味違うかもしれない。

 けど、今ここで止めなくては、街も……下手したら王宮にまで進出する可能性がある。

 王子にもう理性が欠片も残っていなければ、それがあり得るからだ。

 俺の愚かな仕打ちでこの事態になってしまったのだから、躊躇いは捨てる。

 全身全霊で、ルーイス王子を止めよう!
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