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29-4.捕物合戦③(イクス視点)

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 ★・☆・★(イクス視点)







 あーあ、あーあ。

 生産ギルドが、まるで冒険者ギルドの騒動のように様変わりしてしまっている。

 俺は、一応ガイウス殿下の護衛として影からお守りするのが役割……ではない。実際、洗脳にかかった職員や冒険者、商人達の解除組だ。

 他にも数名潜んではいるが、あの美貌に磨きがかかったクローム=アルケイディスが婚約宣言した途端、ディスケットの洗脳が本質的に垣間見えるのは非常にいただけない。

 ただでさえ、ルーイス殿下に不正のエーテル生成液を依頼するあたりで重罪扱いだ。そこに、王族を関わらせたということも。ルーイス殿下がいくらクローム=アルケイディスを憎んでいるからって、ダメなものはダメだ。


(それに、今回の件でルーイス殿下は下手したら死罪だ)


 ガイウス殿下なら、肉親とは言え王太子としてならそれくらいの処罰をなされる方だ。陛下も、おそらく頷くだろう。

 これだけの人間を洗脳し、かつクローム=アルケイディスだけを処分するのに利用とは。王族とは言え、やっていいことと悪いことがある。

 俺は、洗脳されてないので連中に襲い掛かられそうだったが、ただの文官兼宮廷錬金術師ではないので、手刀で可能なやつにはおねんねしてもらうことにした。

 あとは、室内で出来るだけ大きな魔法は使用しにくいので、小手先の技で対応したり、と。

 だいぶ集まったら、俺の錬成で作った秘薬で、あら元どおり?

 というのを繰り返してたら、ガイウス殿下、クローム=アルケイディスに……ルーイス殿下が対峙しているとこを発見!


(うわー、こっわ!)


 こっちからはルーイス殿下のお顔しか見れないけど。あの不正のエーテル生成液の製造最中に聞いた声のまんまの表情だ。


「貴様……よくもおめおめと俺の前に出たな」

「…………いや」

「悪いね、ルーイス? こいつ、お前のことなんも憶えてなかったんだよ?」

「ガイウス!?」

「……んだと、貴様ぁああああ!?」


 ガイウス殿下、腹黒さが全面に出ていますよ!

 今後目にすることはない弟だからって、やっていいことと悪いことがありませんか?

 あと、なんかひょうきんに見えるのは気のせいですか!?


「……その。謝罪ですまないとは思っているが。……殿下のことは存じていなかった」

「…………ふん。知ってたさ」

「は?」

「あの時の、貴様の目は。俺を王子と知らずとも、無知な男を貶す目だった」

「! そこまでは……」

「いいや! 俺はあの時の屈辱を忘れはしない。でなければ、兄上のトレーニングに付き合ったりもしなかった」

「けど、お前は王子としてでなく、ヒトとして間違った方向に向いてしまったが?」

「ふ……後悔はしていない!」

「「!!?」」


 殿下やクローム=アルケイディスが何かを察知した通り。

 ルーイス殿下の魔力が、いきなり視認出来るほど膨らみ始め、破裂かと思いきや、あの方の体を包み込んでいくような……。


「ガイウス殿下!?」

「イクス! 無事な職員を出来るだけ遠ざけて! 私達はこれから強制転移する!」

「殿下!?」


 そして、クローム=アルケイディスの手と無理矢理ルーイス殿下の手を掴んだガイウス殿下は。

 ご自慢の転移魔法で、フロアから消え失せてしまったのだった。


「なに、今の轟音!?」

「クローム!」


 たしか、王女殿下と結ばれる予定のチェスト=ポディロンとクローム=アルケイディスのホムンクルス。

 今の轟音には気付いたが、何が起きたかはわかっていなかったらしい。

 俺が告げようとしたら、カウンターの方で対処していたギルドマスターが彼らの前に立った。


「今、ガイウス殿下がクローム君と一緒にルーイス殿下と強制転移されました」

「く、クロームは無事なんですか!?」

「わかりません。ですが、ルーイス殿下がおそらく暴走しかけたので、ガイウス殿下はクローム君を一緒に連れて行ったのでしょう」

「……クローム」

「ところで、チェスト君。ディスケット君の方は?」

「はいはーい! 引きずってきましたー」


 元凶の一人である、ディスケット=ライツ。

 気を失っているのか、ぐるぐる巻きにされた奴は泡まで噴いて縄一本で引きずられていたのだった。
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