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29-3.捕物合戦②(セリカ視点)

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 ★・☆・★(セリカ視点)








 洗脳されていた、職員や冒険者達の本能などを呼び覚ました事態。

 私は、すぐにやってきてくれたチェストと一緒に、魔法で対処しながらディスケットを探すことにした。

 私とクロームの屋敷よりも少し手狭とは言え、結構広いし今回の計画のために私とクロームが来ると言うのを広めておいたから、洗脳されている人間や亜人の多いこと。

 まだ見たことのない、ディスケットって人間は。自分の技能スキルの使い方を間違っているんじゃ、と思うけど。今回の件でほぼほぼ死罪は確定らしいから、私はただ捕まえるだけでいい。

 そして、クロームとは名実と共に結ばれるんだから!

 頑張らなくちゃ! と、目を真っ赤にさせている多分冒険者達に眠りの魔法で大人しくしてもらう。実はこの魔法、屋敷でクロームが寝れない以外色々重宝していた。

 なんだかんだ、刺客のような使役獣をおとなしくさせるとかにね? 多分、ディスケットあたりが寄越してきたんだろうけど。異世界レシピの、ソーシャルゲームシリーズとかも網羅してる私に、出来ない魔法はない!

 一応、クロームに想いを告げた後に報告はしたんだけど、ちょっと……いや、結構怒られたんだよね?

 私も狙われているのをさっさと知らせろって!

 いくら弱くなくても、怪我以上のことになってからでは遅いって。はあ、また惚れなおしちゃう……。


「うーん? 連中に混じって見当たらないね~?」

「そうですね?」


 とりあえず、今は目の前!

 って、頑張って襲ってくる人達寝かせてても、後から後からやってくるので肝心のディスケットが見つかりもしない。

 ちょっと倉庫とかに向かってはいるんだけど、新たに洗脳された人間や亜人達に邪魔されて進みにくい。

 広範囲に魔法をかけてもいいかもしれないが、そうすると術者以外にかかるので、チェストまでおねんねしちゃうからだ。

 チェストは、見た目のふにゃっとした感じと違い、王女様を暴漢から助けたくらいだから体術とか魔法が結構出来る人だ。冒険者になれるんじゃ? と思うが、やりがいのある仕事をしているから、私は何も言わない。


「おーい! ディスケットのあほんだら~~! 戦うなら自分で戦いなよ~~!」

「チェストさん!?」

「こんくらい言わないと、あの阿保だから来ないって~?」

「……誰が、アホなんですか?」

「!」

「ほら~?」


 変に従順と言うか、プライドが高いのか。

 洗脳されていた人間達を眠らせたその先に、痩せ細って実にみすぼらしい男が出てきた。

 あれが、ディスケット=ライツ。

 私の愛しいクロームを、死に至らせようとした元凶の一人。

 本当は私の手で殺したいところだけど、血に手を染めるのはクロームが嫌がっているから、それはガイウス王子達に任せるしかない。

 だから、ここで眠らせるまでだ!


「……あなたを許さない」

「許さない? ホムンクルス無勢が?」

「!…………あなたこそ、大した力のない使役獣を送っても、皆眠らせたわよ?」

「!…………それで、お前が死んだ情報がなかったのか」

「おあいにく様。私はクロームのものだもの!」


 眠らせるのは簡単だけど、ちょっとくらいお仕置きしたっていいだろう。

 攻撃魔法は、室内だと使いにくいのでシャインでクロームの分も錬成させた剣を持ち、奴に向かって走った。

 すぐに魔法の障壁か何かで防がれてしまったけど!


「ふん。ホムンクルス無勢が、人間と婚姻? 事例はなくもないが、奴の趣味は悪いな? ああ、お前は美しい方だが」

「何も出来ないホムンクルス、じゃ……ないわよ! あなたみたいなひょろっこい人じゃないもの、クロームは!」

「く!?」


 二、三度障壁を叩くように剣を奮い、見事壊すことが出来た。

 クロームの趣味が悪い?

 おあいにく様。私の矯正訓練のお陰で、美的センスは磨かれたのよ? 今日の服装は私のコーディネートだけど?


「もう一人いるって、忘れてな~い?」

「!」


 ディスケットが再び障壁を張ろうとした時に、チェストが横から手刀をお見舞いしようとしてたが。気づいたディスケットが避けて、チェストに手が床に落ちたが……細い見た目の割に力あるのね? 突き抜けてはいないけど、軽く凹んだわ。

 怒らせたら怖いわ、と肝に銘じて。

 次に私、チェスト、と攻撃を繰り返していたが。

 やっぱり、鍛えてる人間よりは劣るのですぐに地面に膝をついてしまった。


「まだだ……まだ、殿下がいらっしゃる」

「そっちの殿下には、ガイウス殿下が対処してくださってるよ~?」

「な……に?」

「この計画にはガイウス殿下も加わってるわけ。君もだけど、ルーイス殿下にも逃げ場はないよ?」


 あるのは、死への道だけ……と、ドスの効いた声を降り注いだ途端。ディスケットは正気を失ったのか、力が抜けてしまったのか。あっさりと、意識を失って床に倒れてしまった。


「あっけなかったですね?」

「クロの方はどうなっているかな~?」


 と、話しながらもチェストは持ってた麻縄でぎっちりしっかりとディスケットを縛り上げてから、ひょいと肩に担いだのだった。

 たしかに、仕事も出来る人材を一気に減らしてしまうと、あのギルマスが困る意味がよくわかった。

 王女様の輿入れ、となって良かったけど。チェストは生産ギルドに必要な人間だ。


「とりあえず、洗脳が解ければいいんですが」

「うーん。術の主導権が今、ルーイス殿下だったらちょっと大変だけどね?」

「出来るんですか?」

「こいつもだけど、小物の方がある意味用意周到なんだよ~?」

「……急いで戻りましょう」

「そだね」


 ガイウス王子がいるので、大丈夫だとは思うが。

 クローム、怪我してないよね?
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