上 下
72 / 94

27-2.別で惚れられた(ガイウス視点)

しおりを挟む





 ★・☆・★(ガイウス視点)







 マールドゥとの婚約も無事出来そうだし、父上にも承諾を得た。

 ルーイスは絶対ブチ切れそうだけど、それを機にあいつを幽閉する予定だし痛くも痒くもない。

 だけど、目の前のことについては、僕自身すぐに飲み込めなかった。


「……すまない。もう一度言ってもらっても構わないだろうか?」

「ですから、ガイウスお兄様! わたくしのことをチェスト=ポディロン様に紹介してくださいましな?」

「……何故?」

「わたくしがお慕い申し上げているからですわ!」


 王国の美姫。

 王国の華。

 たおやかな姫君。

 などなどなど。

 今の僕の妹姫は、欲目を差し引いても金髪美少女である立派なお姫様だ。もう一人の妹姫はまだ成人前だがこっちもそれなりに美少女。

 だけど、姉姫であるミリアムが。まさか……まさか僕と同じように庶民を伴侶に選ぶだなんて!

 しかも、クロームじゃなくてチェスト?

 なんでまた!?


「ミリアム、君とそのチェストとはどこで接点があったか聞いても?」

「お忍びでお出かけした時に、暴漢に襲われかけましたの。わたくしはいつも通り対処しようとしましたのに、あの時チェスト様に助けていただきましたの!」

「ミリアム……」


 王国の蝶よ華よとも謳われている我が妹のミリアム……。

 お忍びしたい気持ちがあるのは、兄としてわかる。よーくわかる! 王宮って基本的に暇同然だしね?

 だからって、武道極めちゃうあたりは普通の姫君じゃないけどね!? 素手だと鍛えてても僕負けちゃうし!?

 じゃなくて、


「はあ……勇敢でいらっしゃいましたわ、チェスト様。わたくしが王家の金髪などを隠すのに変装していたから、お気づきではなかったようですが。あのタレ目も素敵でした……」


 ダメだ、こりゃ。相当ベタ惚れ状態だ。

 それで、なんでまた僕に相談を持ちかけたのか聞くと、どこから情報を得たのかチェストとも幼馴染みでマールドゥとも婚約したことを耳にしたらしい。


「はじめ、マールドゥお姉様を恋敵かと思いかけた頃もありましたが。お兄様とご婚約なされたのでしょう? ならば、チェスト様のこともご存知かと」

「い、いやまあ……知ってはいるけど」


 ガイとしてなら、結構な頻度で会話してたしね?

 けど、なんでまた、チェスト?

 僕の本性と微妙に似てるあのマイペースっ子だよ?

 それを、暴漢に襲われかけたのを助けてもらっただけで、惚れちゃうの!? 王家の姫君が降嫁するにしたって!?

 なんでこんな世間は広いようで狭いんだい!?


「ダメですの? お兄様?」

「い、いや……父上には相談したのかい?」

「お父様とは拳で語り合いましたわ!」

「父上!?」


 それって、つまりごり押しで負けたってわけか!?

 だから、マールドゥと婚約したばかりの僕のとこにお鉢が回ってきたわけか……。なるほど、よく理解出来た。


「……ちなみに母上は?」

「お母様は想う相手と一緒になりなさいと仰ってくださいましたわ!!」


 こっちも根負けしたってわけか。王族的には、他国の友好国との繋がりなどで姫を嫁がせたりするのが一般的らしいが、この姫には通用しないだろう。

 だって、武闘派王女だし!


「……けど、ミリアム? 君のその趣味と実益を兼ねた武闘力を、彼にも知ってもらうんだよ? そこはいいの?」

「? チェスト様はもうご存知ですわよ?」

「! 君の正体は?」

「まだですわ!」

「……はあ」


 ああ、もう。

 自分の妹だけど、こんなお転婆じゃじゃ馬姫を嫁に出来るだなんて、あのチェストに出来るか?

 多分、出来ちゃうかもしれないけども!

 とりあえず、すぐには紹介出来ないと無理くり納得させてから、僕は転移でチェストのとこに飛んで行った。


「え、殿下?」

「しー! 大声出さないで!」


 とりあえず、アークさんやマールドゥに見つからない場所に移動して。防音壁諸々の対策をしてから、ずっと抑えていたチェストの口を離した。


「あ、あの?」

「ああ。マールドゥのことじゃないよ? 君自身について伝えなきゃいけないことが出来てね?」

「? 僕に、ですか?」

「……以前、暴漢に襲われかけた女の子助けたでしょ?」

「殿下が何故それを?」

「…………その女の子、僕の妹姫なんだ」

「え……え、え、えぇえ!? ま、ままま、まさか、ミリアム王女殿下!?」

「どーも、僕とマールドゥのこと知っちゃったから。君に自分を紹介してくれ……って」


 あーあ、あーあ。

 王国の美姫に気に入られたとわかった瞬間、沸騰したように顔どころか首まで真っ赤になっちゃって。

 これが、将来の義弟になるかもしれないとなると。ちょっと不安に思うしか出来なかった。

 仕方ないので、アークさんに電報だけ出して、チェストと一緒にクロームの屋敷に飛ぶことにした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

結婚した次の日に同盟国の人質にされました!

だるま 
恋愛
公爵令嬢のジル・フォン・シュタウフェンベルクは自国の大公と結婚式を上げ、正妃として迎えられる。 しかしその結婚は罠で、式の次の日に同盟国に人質として差し出される事になってしまった。 ジルを追い払った後、女遊びを楽しむ大公の様子を伝え聞き、屈辱に耐える彼女の身にさらなる災厄が降りかかる。 同盟国ブラウベルクが、大公との離縁と、サイコパス気味のブラウベルク皇子との再婚を求めてきたのだ。 ジルは拒絶しつつも、彼がただの性格地雷ではないと気づき、交流を深めていく。 小説家になろう実績 2019/3/17 異世界恋愛 日間ランキング6位になりました。 2019/3/17 総合     日間ランキング26位になりました。皆様本当にありがとうございます。 本作の無断転載・加工は固く禁じております。 Reproduction is prohibited. 禁止私自轉載、加工 복제 금지.

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...