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27-2.別で惚れられた(ガイウス視点)
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マールドゥとの婚約も無事出来そうだし、父上にも承諾を得た。
ルーイスは絶対ブチ切れそうだけど、それを機にあいつを幽閉する予定だし痛くも痒くもない。
だけど、目の前のことについては、僕自身すぐに飲み込めなかった。
「……すまない。もう一度言ってもらっても構わないだろうか?」
「ですから、ガイウスお兄様! わたくしのことをチェスト=ポディロン様に紹介してくださいましな?」
「……何故?」
「わたくしがお慕い申し上げているからですわ!」
王国の美姫。
王国の華。
たおやかな姫君。
などなどなど。
今の僕の妹姫は、欲目を差し引いても金髪美少女である立派なお姫様だ。もう一人の妹姫はまだ成人前だがこっちもそれなりに美少女。
だけど、姉姫であるミリアムが。まさか……まさか僕と同じように庶民を伴侶に選ぶだなんて!
しかも、クロームじゃなくてチェスト?
なんでまた!?
「ミリアム、君とそのチェストとはどこで接点があったか聞いても?」
「お忍びでお出かけした時に、暴漢に襲われかけましたの。わたくしはいつも通り対処しようとしましたのに、あの時チェスト様に助けていただきましたの!」
「ミリアム……」
王国の蝶よ華よとも謳われている我が妹のミリアム……。
お忍びしたい気持ちがあるのは、兄としてわかる。よーくわかる! 王宮って基本的に暇同然だしね?
だからって、武道極めちゃうあたりは普通の姫君じゃないけどね!? 素手だと鍛えてても僕負けちゃうし!?
じゃなくて、
「はあ……勇敢でいらっしゃいましたわ、チェスト様。わたくしが王家の金髪などを隠すのに変装していたから、お気づきではなかったようですが。あのタレ目も素敵でした……」
ダメだ、こりゃ。相当ベタ惚れ状態だ。
それで、なんでまた僕に相談を持ちかけたのか聞くと、どこから情報を得たのかチェストとも幼馴染みでマールドゥとも婚約したことを耳にしたらしい。
「はじめ、マールドゥお姉様を恋敵かと思いかけた頃もありましたが。お兄様とご婚約なされたのでしょう? ならば、チェスト様のこともご存知かと」
「い、いやまあ……知ってはいるけど」
ガイとしてなら、結構な頻度で会話してたしね?
けど、なんでまた、チェスト?
僕の本性と微妙に似てるあのマイペースっ子だよ?
それを、暴漢に襲われかけたのを助けてもらっただけで、惚れちゃうの!? 王家の姫君が降嫁するにしたって!?
なんでこんな世間は広いようで狭いんだい!?
「ダメですの? お兄様?」
「い、いや……父上には相談したのかい?」
「お父様とは拳で語り合いましたわ!」
「父上!?」
それって、つまりごり押しで負けたってわけか!?
だから、マールドゥと婚約したばかりの僕のとこにお鉢が回ってきたわけか……。なるほど、よく理解出来た。
「……ちなみに母上は?」
「お母様は想う相手と一緒になりなさいと仰ってくださいましたわ!!」
こっちも根負けしたってわけか。王族的には、他国の友好国との繋がりなどで姫を嫁がせたりするのが一般的らしいが、この姫には通用しないだろう。
だって、武闘派王女だし!
「……けど、ミリアム? 君のその趣味と実益を兼ねた武闘力を、彼にも知ってもらうんだよ? そこはいいの?」
「? チェスト様はもうご存知ですわよ?」
「! 君の正体は?」
「まだですわ!」
「……はあ」
ああ、もう。
自分の妹だけど、こんなお転婆じゃじゃ馬姫を嫁に出来るだなんて、あのチェストに出来るか?
多分、出来ちゃうかもしれないけども!
とりあえず、すぐには紹介出来ないと無理くり納得させてから、僕は転移でチェストのとこに飛んで行った。
「え、殿下?」
「しー! 大声出さないで!」
とりあえず、アークさんやマールドゥに見つからない場所に移動して。防音壁諸々の対策をしてから、ずっと抑えていたチェストの口を離した。
「あ、あの?」
「ああ。マールドゥのことじゃないよ? 君自身について伝えなきゃいけないことが出来てね?」
「? 僕に、ですか?」
「……以前、暴漢に襲われかけた女の子助けたでしょ?」
「殿下が何故それを?」
「…………その女の子、僕の妹姫なんだ」
「え……え、え、えぇえ!? ま、ままま、まさか、ミリアム王女殿下!?」
「どーも、僕とマールドゥのこと知っちゃったから。君に自分を紹介してくれ……って」
あーあ、あーあ。
王国の美姫に気に入られたとわかった瞬間、沸騰したように顔どころか首まで真っ赤になっちゃって。
これが、将来の義弟になるかもしれないとなると。ちょっと不安に思うしか出来なかった。
仕方ないので、アークさんに電報だけ出して、チェストと一緒にクロームの屋敷に飛ぶことにした。
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