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23-1.潜入調査(???視点)
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ふむ、今色々面倒なことが起きている。
「急げ急げ! ルーイス殿下がお待ちになっているんだぞ!」
「し、しかし、これ以上急ぐと虚偽の構造が」
「だが、急げ!」
「はぃい!」
何が、自分も含めて目の前で行われているかと言うと。
(不正の不完全かつ、毒を仕込んだエーテル生成液の製造……)
まさか、王宮内で実際に行われているとは……と潜伏している自分の目の前で行われているのが、未だに信じられなかった。
国家錬金術師でなくとも、それなりに知名度の高い錬金術師を亡き者にするためとはいえ、随分な仕込みをなさる。
馬鹿ではないが、あの不人気な第二王子の画策とは言え。
(エーテル生成液の製造も佳境に差し掛かってきた……。王太子殿下は、本日クローム=アルケイディスの屋敷に行かれているらしいが、転移魔法でいずれ戻られるだろう)
製造に直接関わらない程度に、雑用をこなして製造の経過を、クリスタルボールに記録させている。
この密偵を言い渡された時には、側近としてお役に立てる喜び! と最初は嬉しく思ったが。
(……果てしなく、暇だ)
エーテル生成液の製造は、熟成期間が長い。魔素をエーテルに変換させて、そこから液状にすべく熟成させる。
錬金術の心得を持つ自分としては、当たり前の知識ゆえに。不正のエーテル生成液の製造も同じだろうと思い、要所要所記録はしているが。
毒はいったい何を盛るのか。
そこが重要だった。
今のところ、メインで取り掛かってる錬金術師達からその情報は得られていない。
「……進んではいるか?」
「「「ルーイス殿下!?」」」
と思ったら、黒幕のルーイス殿下のご登場だった。
ねぎらいの言葉は形式的なつもりでいるのか、表情は険しかった。
(あーあ、あーあ。あれは完全に人を殺したい目だ)
これまでの兄上でいらっしゃるガイウス殿下を亡き者にしようとしてきた、ルーイス殿下派の暗殺者達と似た表情だ。
最も、殿下が企ててきた暗殺計画もあったらしいが、成果がまったく見られないので最近はクローム=アルケイディスを葬る方に力を注いでいるらしい。
たしか、ガイウス殿下からの話によると、市井の錬金術師と手を組んでいるとか。
この不正なエーテル生成液の製造を世間に公表したら、殿下はよくて幽閉。その錬金術師は死刑なのに、何故バレないとでも思っているのか?
ところどころ、爪が甘い箇所があるからだ。
だから、ガイウス殿下と違い、王には相応しくないのだが。
(自分の考えは、ともかく。これも記録して)
一度、ガイウス殿下の執務室に行こうとこっそり退室しようとしたら。
「早く……早く、殺してやる! クローム=アルケイディス! お前の女と共にな!!」
いきなり大声出すからびっくりしたけど、クリスタルボールを起動させたままだったので、これも証拠となり。
急いで出てから、ガイウス殿下の執務室ふで偽装の技能を解き。仕事をしながら殿下のお帰りを待つと、割とすぐに戻られた。
「や。成果は得られたかな?」
「はい。本日はルーイス殿下の本音なども」
「うんうん。よくやったね、イクス」
そうして、殿下の執務机の上にクリスタルボールを置かせていただき、本日の記録の全てを再生して見ていただいた。
「……本気で、私の朋友を殺そうとは。これはお痛だけではすまないことを、兄としてでなく、王太子として裁こうじゃないか?」
「毒の混入は、本日も見受けられませんでした」
「そうか。クローム本人とも、計画に加わることになったから……ディスケットとやらの目の前で、絶望に落としてやろうじゃないか?」
「は」
ああ、まったく。
社交界の華とまで呼ばれている王太子殿下が。
実は結構な腹黒だって知ったら、憧れてるご令嬢方はどう思うだろうか?
だが、ルーイス殿下も相手を間違えた。
兄ではあれど、王の器を持つこの殿下を敵に回したことに、だ。
「ひとまず、イクス。君には引き続き潜伏を頼むよ?」
「は」
それに、腹黒でも信頼した相手にはとことん誠意を尽くすこの殿下は、間違いを許さない。
ルーイス殿下には悪いが、俺はこちらの殿下の配下であってよかったと思っているのだった。
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